パーキンソン病

福井大学医学部附属病院

脳神経内科

福井県吉田郡永平寺町

パーキンソン病とは

1817年にイギリス・ロンドンの医師、ジェームズ・パーキンソンにより初めて報告(An Essay on the Shaking Palsy)されました。彼は「振戦麻痺」と記載していましたが、のちにフランスのジャン-マルタン・シャルコーが再発見し、「パーキンソン病」と名付けました。

多くは50~65歳で発症し、65歳以上では約100人に1人が発症すると言われています。高齢になるほど増加するため、患者さんは世界的に増加しており、『パーキンソン病パンデミック』と表現されることもあります。

大多数の患者さんは「孤発性(こはつせい)」といって血縁者に同じ病気の人はいませんが、5~10%の患者さんは血縁者内で発症者がいる「遺伝性」といわれています。

本邦では難病に指定され、医療費助成制度の対象となっています。(注:認定基準があります)

原因

身体をスムーズに動かすために、脳内ホルモンの1つである「ドパミン」という神経伝達物質があります。このドパミンを産生する神経細胞が減少してくることで発症することがわかっています。しかしながら、なぜこの神経細胞が減ってしまうのか、根本的な原因はいまだに解明されていません。

イラスト
神経伝達物質ドパミンの働き

症状

「運動症状」と「非運動症状」に分けられます。個人差があり、病気の進行とともに様々な症状が生じます。

主な運動症状は4つです。

1.「無動(むどう)・寡動(かどう)」は、身体の動きが遅く、鈍くなることです。歩幅が狭くなってすり足になる、1歩目がスムーズに出てくれない(すくみ足と言います)、顔の表情が乏しくなる(仮面様と表現します)、指のこまかい動作がしにくい、声が小さくなってきたといった症状がみられます。

2.「静止時振戦(せいしじしんせん)」は、特に安静にしているときの手や足のふるえです。何かを丸めるよう指先が動いているようなふるえが、パーキンソン病に特徴的なふるえです。

3.「筋強剛(きんきょうごう)」は、関節がこわばった感じでスムーズに動かないことです。自分ではわかりにくいですが、他の人が関節を曲げたり伸ばしたりすると、カクカクと歯車のような感触があるのが特徴的です。

4.「姿勢保持障害(しせいほじしょうがい)」は、体幹のバランスをうまく保てなくなって転びやすくなる障害です。発症してから何年も経ってから出現します。

イラスト
パーキンソン病の4大症状

治療

薬物療法、運動療法、外科的治療(デバイス治療)があります。これらの治療は完全に治す治療ではなく(まだ根治療法はありません)、症状をコントロール・緩和して、できるだけ日常生活への支障を減らすことが目的です。

まず薬物による内科的治療および身体機能の維持・向上のための運動療法で治療を開始します。

1.薬物療法

飲み薬、貼り薬、注射薬など様々な薬剤が開発されています。メインは脳内で減っているドパミンを補充する薬です。そして、ドパミンを長持ちさせるための薬などを病状に応じて組み合わせて使用します。

なお、発症から年数が経ってくると、薬剤の効き目が不安定になってきて、効き目が弱まる時間帯が生じたり(ウェアリング・オフといいます)、体が意図せずにクネクネと動いてしまう(ジスキネジアといいます)といった運動合併症が出現することがあります。この場合、薬剤の使用方法に工夫が必要となってきます。患者さん自身も薬の特徴を学び、医師と一緒に治療を考えていただきたいと思います。

2.運動療法・リハビリテーション

運動(ヨガ、太極拳、タンゴなどのダンス、ほか)が運動症状の改善や進行を遅らせる効果が報告されています。からだの動きが小さくなってくるため、体を大きく動かすことを心がけてください。転倒予防のためにバランス能力を鍛える体幹トレーニングもおすすめです。

3.外科的治療(デバイス治療)

機械を使用する治療です。現在は主に3つの方法があります。

脳深部刺激療法(DBS)は、パーキンソン病の原因と考えられている脳の奥に細い電極を通して、電気で脳を刺激して運動症状を改善する治療です。両側に行い、胸部の皮下に刺激装置を植え込みます。

L-ドパ持続経腸療法(LCIG;エルシグ)は、みぞおちから胃に穴を開け、細いチューブを十二指腸まで通して、ゲル状のドパミン薬をゆっくりと注入する治療です。1日のうち16時間、持続的に薬を注入します。機械本体は体外にあり、ウエストポーチなどに入れて持ち歩くことができます。

L-ドパ持続皮下注療法は、腹部に細い針を留置して皮下にドパミンの注射薬を24時間持続的に注入します。

まとめ

パーキンソン病は、脳内のドパミン(神経)が減ってしまい、体の動きに支障が出てくる病気です。最初の報告から200年が経つも、いまだに根本的に治すことはできませんが、多くの薬剤が開発されています。薬物治療や運動療法、外科的治療を組み合わせることで症状をコントロールし、生活を保つことができる病気です。そのためにはやはり早期発見が大事です。安静時のふるえ、動きがゆっくりになってきた、表情が乏しくなってきたなど、気になる症状がありましたら、早めに受診してください。

更新:2025.11.13

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