肝胆膵 高難度手術の豊富な経験 

愛知医科大学病院

消火器外科

愛知県長久手市岩作雁又

当科の特徴――迅速な術前検査と入念な手術計画

当科では、主に肝臓・胆道・膵臓(すいぞう)疾患の患者さんを手術の対象としています。術式は多岐にわたり、難易度の高い手術が必要です。一般病院では困難な高難度手術から腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)まで、幅広く取り組んでいます(写真1)。科内や肝胆膵内科とのカンファレンスを定期的に行っており、それぞれの患者さんに応じた適切な術式を提案します。判断に困る場合には、キャンサーボード(検討会)を開催し、幅広く他科の意見を取り入れています。

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写真1 開腹手術:高難度の開腹手術から腹腔鏡手術まで、幅広く取り組んでいるのが当科の特徴です

また、可能な限り迅速に術前検査を進め、早期に手術を行います。外来初診日から手術日までの平均日数は13日(2015年)と短いのが特徴です。

肝臓がんの外科治療

肝臓がんは、肝臓から発生する「原発性肝がん」と、大腸がんなど他臓器がんを由来とする「転移性肝がん」とに区別されます。進行したがん(巨大な腫瘍(しゅよう)や血管浸潤(しんじゅん)例)に対しても、できるだけ積極的に外科切除を行い、根治を目指しています。肝機能が悪い場合には、術後肝不全のリスクが高くなるため、肝切除以外の治療法(血管内治療や放射線治療など)が選択されることがあります。

また、患者さんによっては、腹腔鏡下肝切除術(ふくくうきょうかかんせつじょじゅつ)を提案しています。腹腔鏡下肝切除術は5~15mmの創(きず)を4~5か所使用して手術を行います(写真2)。利点として、術後疼痛(とうつう)の軽減・入院期間の短縮などがあり、術後成績においても開腹手術と同等の良い結果を得ています。現在までに100例以上の経験があり、これまで大きな合併症は認められていません。ただし、がんの状態や開腹手術歴などにより、開腹手術の方が適当と判断することもあります。

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写真2 肝切除後の手術創の比較:開腹手術では逆L(J)字切開を行います。腹腔鏡下肝切除術では、5~15mmの切開創を4~5か所使用します

胆道がんの外科治療

胆道とは、肝細胞から分泌された胆汁が十二指腸に流出するまでの、全排泄(はいせつ)経路の総称です。胆道がんはこの経路に生じたがんの総称であり、「図」のように分類されます。

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図 胆道がんは、胆汁が肝臓から十二指腸に流出するまでの経路に生じたがんの総称です

術式は、肝切除術や膵頭(すいとう)十二指腸切除術が行われることが多いですが、肝外胆管を切除すべきか、門脈や肝動脈の合併切除・再建は必要か、肝臓と膵臓(すいぞう)の同時切除術を行うべきかどうかなど、個々の患者さんごとにオーダーメイドの術式を提案する必要があります。肝門部領域胆管がんの手術時間は10時間以上に及ぶこともあります。

胆道がんの患者さんは閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)や胆管炎などを併発しやすく、手術前後の管理が極めて重要です。当院のスタッフは経験豊富であり、合併症が極力少なくなるように日々奮闘しています。

膵臓がんの外科治療

膵臓は、胃の後ろに存在する長さ20cmほどの細長い臓器で、部位によって頭部・体部・尾部で構成されています(写真3)。頭部は十二指腸と、尾部は脾臓(ひぞう)と接しています。

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写真3 膵全摘後の標本写真:膵臓は、頭部・体部・尾部で構成されています

膵臓がんは、比較的小さくても、容易に周囲の血管・神経・隣接臓器に影響を及ぼします。早期の段階でがんが発見されることは比較的稀(まれ)で、手術治療を受けられるのは、膵臓がん患者さんの2~3割程度といわれています。膵臓がんは年々増加傾向にあり、2014年の死亡数は全がんの中で4位でした。

病変が頭部に存在する場合は、胆管が近くを走行しているため、黄疸や発熱などの症状が出やすいのが特徴です。手術は膵頭十二指腸切除術という高難度手術になります。一方で、体部や尾部に病変が存在する場合は症状が出にくいことが多いです。術式は、膵体尾部と脾臓の合併切除術が必要です。術後、補助化学療法を行う必要がある患者さんに対しては、肝胆膵内科や臨床腫瘍(しゅよう)センターと密に連携を取り合って、できるだけ早期に導入できるように努めています。

更新:2024.01.25