乳房MRIで初めて見つかった病変を超音波で発見できる新検査法ーリアルタイムバーチャルソノグラフィ

愛知医科大学病院

乳腺・内分泌外科

愛知県長久手市岩作雁又

乳腺画像検査法

乳がんは視触診のみでは発見が難しく、さまざまな画像検査が行われます。

1.マンモグラフィ、超音波

マンモグラフィはX線を使って乳腺の様子を調べる検査です。しこりや石灰化(カルシウムの沈着)を発見することができ、検診などで広く使われています。一方、乳腺が厚く密集している場合はしこりの発見が困難なことがあります。

超音波は乳房に振動数の高い音波を当て、反射した音波を画像化する検査法です。仰向けで行います。人体に害がない検査で、しこりの検出に優れていますが、微小な石灰化は発見できません。マンモグラフィと超音波のどちらかでしか発見できない乳がんもあるため、精密検査は両方の検査を行います。

2.MRI

電磁波を照射して乳房の断面を画像で示す検査法です。うつ伏せで行います。がんがどの程度乳房内に広がっているかを調べることができます。造影剤を使うことで、乳がんの発見率がマンモグラフィや超音波より高くなることが知られています。

MRI偶発造影病変に対するセカンドルック超音波

MRIは手術術式の決定や抗がん剤の効果判定に有用な検査です。一方、マンモグラフィや超音波では分からなかったもののMRIによって初めて検出できる病変(MRI偶発造影病変)が発見されることがあります。

MRI偶発造影病変の約3割が悪性であることが知られているため、見直し超音波検査(セカンドルック超音波)を行って病変を見つけ出す必要があります。しかし超音波とMRIは検査体位が異なるため、発見が困難なことも多く、セカンドルック超音波での発見率は約6割にとどまります。

リアルタイムバーチャルソノグラフィによるMRI偶発造影病変の検出

近年、ごくわずかな磁石の力を使って超音波とMRIを同期することができる、リアルタイムバーチャルソノグラフィ(Real-time Virtual Sonography:RVS)が開発されました(図1、写真)。術者の熟練度にかかわらず、超音波像に一致するMRI像を瞬時に表示することができる画期的な装置です。国内で発明された新技術で、被曝(ひばく)もなく外来で検査が可能です。現在、肝臓や前立腺の組織採取時の補助装置として世界中に普及しています。

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図1 リアルタイムバーチャルソノグラフィ(RVS)の構成
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写真 外来におけるRVSの実際

当科は2005年からRVSを乳腺画像検査に導入し、セカンドルック超音波に応用しています。MRIと超音波は通常検査体位が異なります。そこで、セカンドルック超音波で病変が検出できない場合、仰向けでもう一度MRIを撮像し、RVSを使ったセカンドルック超音波によってMRI偶発造影病変を検出する方法を世界で初めて発案しました(図2、3)。これにより、通常のセカンドルック超音波では検出できなかった病変の約9割を見つけることができました。現在、当大学主導で全国規模の臨床試験を行っています。

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図2 RVSによるMRI偶発造影病変の局在診断:超音波とMRIの位置合わせは乳頭で行う
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図3 RVSモニター画面:黄色矢印/MRI偶発造影病変、赤矢印/超音波

国境を越え、乳がん診療に応用

奇しくも「愛・地球博」が開催されていた2005年に長久手の地で生まれた新検査法ですが、私たちの研究成果は2007年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(米国)で、その年のTOP40のトピックスに選ばれました。その後、イタリア、スペイン、イギリス、トルコ、韓国で臨床応用されています。

遺伝要因を有する高リスク患者さんに対し、国内でもMRIスクリーニングが導入されると思われますが、その際発見されるMRI偶発造影病変の検出にもRVSは応用可能です。

更新:2024.10.29