乳房再建手術について教えてください
愛知医科大学病院
乳腺・内分泌外科 形成外科
愛知県長久手市岩作雁又
乳房再建手術は誰が、いつ、どのように行いますか?
乳がんの手術は乳腺外科医が行い、再建手術は形成外科医が行います。手術の時期や手術の回数は患者さんの状況によって異なります。
1.手術の時期
乳房再建手術を行う時期には、①乳がんの手術と同時に行う「一次再建」と、②乳がんの手術を終えてから一定期間をおいて改めて再建を行う「二次再建」の2種類があります。
2.手術の回数
手術の回数では、①1回の手術で再建を完了する「一期手術」と、②ティッシュ・エキスパンダー(組織拡張器)を使って2回の手術で再建を完了する「二期手術」の2種類があります。
それぞれの長所、短所を「表」に示します。
一次乳房再建 | 二次乳房再建 | |
---|---|---|
長所 | 二次再建よりも手術の回数が少なく、身体的・経済的負担が少ない。 乳房の喪失感がない。 一次二期再建では、ティッシュ・エキスパンダー留置中に再建方法を熟考できる |
乳がんの治療に専念できる。 乳がんの手術とは別の施設で再建を行うこともできる。 |
短所 | 乳腺外科医と形成外科医の連携が不可欠(学会が認定した医療機関に限られる※)。 | 一次再建よりも手術回数が多くなる。 乳房を失ったあとの喪失感が大きい。入院手術費用が増える。 |
2013年に保険制度が変更になりティッシュ・エキスパンダーとインプラント(写真)が保険適用となりました。一次二期再建手術が増えてきましたが、乳がんの進行の程度によっては二次再建が望ましい場合があります。患者さん、乳腺外科医、形成外科医の3者で手術前によく話し合い、それぞれの患者さんに適した手術時期、手術回数を選択することが重要です。
乳房再建手術にはどのような種類がありますか?留意点も教えてください
乳房再建手術には大きく分けて、患者さん自身の体の一部である自家組織を移植する方法とインプラント(人工乳房)を移植する方法があります。
1.自家組織による再建手術
体のほかの部位から皮膚や脂肪を移植して乳房を作る方法です。主に、下腹部(穿通枝皮弁法、図1)や背部(広背筋皮弁法)から移植します。自分の組織を使うため、自然な柔らかさや温もりがあります。
一方、お腹や背中の組織を取った後に傷が残り、手術時間や入院期間も長くなります。移植した組織にうまく血液が巡らないときは、再手術が必要になることがあります。
2.インプラントによる再建手術
まずティッシュ・エキスパンダーを大胸筋の下に挿入する手術を行います。6か月~1年かけて注入口から生理食塩水を徐々に入れて、十分胸の筋肉および皮膚を伸ばした後に、改めてインプラントに入れ替える手術を行います(図2)。自家組織による再建手術に比べ1回の手術時間も短く、身体的負担も少なくてすみます。一方、2回の手術が必要となり、ティッシュ・エキスパンダー留置中は痛みを伴うことがあります。この期間中はMRI検査が受けられません。またティッシュ・エキスパンダー留置中の放射線療法は有害事象が増えるとの報告があります。
人工物が体内に入りますので、感染を起こした場合は、一度人工物を取り出して、再建術をやり直すことがあります。また、インプラントは恒久的なものではないため、MRIなどによる定期的な検査を行いますが、10~20年後に入れ替えが必要になることがあります。
乳頭・乳輪は再建できますか?
乳頭・乳輪の再建方法にはいくつか種類があり、主に患者さんの考えで選択していただいています。
1.シリコンエピテーゼ
シリコンを素材として非常に精巧に作成された、人工の乳頭・乳輪です。専用の接着剤で再建乳房の皮膚に貼り付けて使います。
2.健側(反対側)からの移植
健側の乳頭の半分を採取して再建乳房に移植します。乳輪部分は太ももの付け根の皮膚を移植するか、タトゥーで着色します。
3.局所皮弁
再建乳房の皮膚の一部を切開して折りたたみ、乳頭の形を作る方法です。乳輪部分は2と同様です。
3D マンモグラフィ(トモシンセシス)
マンモグラフィ検診の普及に伴い、乳がんと紛らわしい病変に対する追加検査の増加や高濃度乳房における乳がん検出感度の低下が新たな問題となっています。近年、乳房の断面を観察できる3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)が注目されています。従来法と比べ要精査率を15%低下させ、がん発見率を41%増加させたと報告され、欧米ではマンモグラフィ検診に3Dマンモグラフィの導入が進んでいます。当院でも2012年に導入し、実地診療を行っています。
更新:2024.10.04