頭頸部がんにおける集学的外科治療 形成外科、消化器外科、血管外科、呼吸器外科、脳神経外科とのチーム医療

愛知医科大学病院

耳鼻咽喉科

愛知県長久手市岩作雁又

頭頸部がんとは

頭頸部(とうけいぶ)がんとは、頭頸部領域に発生するがんを総称しています。鼻・副鼻腔(ふくびくう)がん、口腔(こうくう)がん、咽頭(いんとう)がん、喉頭(こうとう)がんなどが含まれます(図1)。喫煙や飲酒などが原因の1つといわれています。

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図1 頭頸部がんの発生部位

頭頸部領域には、呼吸、嚥下(えんげ)、発声、構音などの重要な機能が集中しています。それゆえ頭頸部がん治療では、がんの根治のみを追い求めるだけではなく、これらの機能温存とのバランスを考慮する必要があります。

頭頸部がんの治療法とその選択

頭頸部がん治療には、手術、放射線、抗がん剤があります。手術はがんを確実に取り除くことができますが、機能低下などが問題となります。放射線、抗がん剤も有用ですが、すべてのがんを根治できるわけではありません。このようにそれぞれ一長一短があり、それぞれの患者さんにとって、どの治療法が適切で選択すべきなのかを判断することは難しいです(図2)。

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図2 頭頸部がん治療の種類

そのため当院では、それぞれの患者さんに最適な方法を見出すために、まず抗がん剤治療を行い、その効き具合をしっかりみることにしています。その結果、効きが良いなら抗がん剤や放射線主体の治療、あまり良くないなら手術を選択する方針を取っています。米国のガイドラインにも準拠している方法です。

頭頸部がん外科治療が難しい理由

頭頸部領域は、解剖学的に大変複雑です。そこには重要な血管や神経、組織などが多数存在しているからです。それゆえ、がんの切除により、これらに影響が出てしまうことがあります。

例えば下咽頭がんの手術では、咽頭と頸部食道、喉頭が摘出されます。しかし、この部分は食物の通り道であり、そのままでは手術を終わらせることができません。何かを用いて作り直さないと元の生活に戻ることができないからです。これを解決するために再建手術を行います(図3)。この手術は形成外科で行われます。そのほかにも頭頸部がん手術では、消化器外科、血管外科、呼吸器外科、脳神経外科などとの連携が必要となることがあります。

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図3 頭頸部がんにおける再建手術

頭頸部がん外科治療におけるチーム医療

当院は、高度ながん外科治療を提供することが期待される施設です。どのようながんの患者さんに対しても、病気を精査の上、手術が必要と判断したら、全力で適切かつ確実な手術を提供する責務があります。そのために私たちは、頭頸部がん外科治療に深く関係する形成外科、消化器外科、血管外科、呼吸器外科、脳神経外科とチーム連携を構築し、幅広い視点から手術を行うことを実践しています。診療科を越えた多くの医師とともに病院横断的に相談する場を設けて、頭頸部がん外科治療を行っています(写真)。

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写真 頭頸部がん外科治療

それぞれの分野のエキスパートである外科医は、頭頸部がんにおける集学的外科治療をよく理解しています。また、ほかの医師、医療従事者も診療、技術レベルを少しでも高めるべく、日々気持ちを新たに努力しています。このように、私たちは頭頸部がんにおける集学的外科治療に関して、病院一体のチーム医療を推し進めることで、その向上に努めています。

更新:2024.10.08