がん診療を支える臨床腫瘍センター

愛知医科大学病院

臨床腫瘍センター(腫瘍外科部門)

愛知県長久手市岩作雁又

治療方針を決めるキャンサーボード

医学が進歩し、分子標的薬や免疫療法など、効果のある新しい薬が次々と開発されています。臨床腫瘍(りんしょうしゅよう)センターの腫瘍外科部門は、食道がん・胃がん・大腸がん・胆膵(たんすい)がんの薬物療法(抗がん剤治療)を専門に、外来で1年間に延べ約500人の治療を行っています。

がんの治療方針の多くは、それぞれの専門家がいる診療科で決まります。しかし、転移はあるがどこのがんから転移したのか分からない、いわゆる原発不明がんや、2つ以上のがんがある場合にどちらを先に治療するか、高齢や合併症のため一番に勧める治療ができない場合などは、各診療科の医師だけでなく、病理診断科や放射線科、薬剤師、看護師などが集まって、それぞれの立場から意見を出し合って、医師1人や診療科だけで考えるより患者さんにとって最適な治療方針を決めやすくなります。この会がキャンサーボード(写真)で、当センターが担当しています。

写真
写真 キャンサーボード

キャンサーボードは医師たちの「がん何でも相談」

キャンサーボードの日程は決まっていません。担当医が相談したいと思えば、簡単なことでも内容にかかわらずいつでも相談できる「がん何でも相談」体制をとっています。月に5回開催するときもあれば、1か月間開かれないこともあり、相談件数は1年間で15~20件程度です。診療科別では消化管内科および肝胆膵内科、消化器外科、耳鼻咽喉科の順に多く(図1)、検討内容は、手術方針、化学療法、原発不明がんの順(図2)です。がん以外の病気を持っている高齢のがん患者さんが増えたので、相談内容はさまざまです。当院のキャンサーボードは、手術に関する相談が多いのが特徴です。

グラフ
図1 診療科別キャンサーボード実績
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図2 検討内容別キャンサーボード実績

患者さんが別の医師に相談する体制がセカンドオピニオンで、医師がほかの医師に相談する体制がキャンサーボードです。進行したがんで臓器を切除する拡大手術になる場合や、大出血の危険を伴う手術の場合、手術していいかどうかを話し合います。患者さんに安心してがんの治療を受けていただくことができるように、1人の医師をほかのスタッフ全員でサポートしています。

がんを担当する診療科会議を毎月開催

当センターは、がん治療を行う各診療科の横断的なつながりを担当します。がん患者さんを診るすべての診療科と部署が、当センターの運営委員会で月に1回集まり、薬の有害事象や事故につながりかねない事例など、いろいろなことを話し合い、改善に努めています。

そのほかに薬物療法委員会も開催しており、未承認薬を含め、各診療科が使用する抗がん剤を審査し、認定します。

セカンドオピニオンで「がん何でも診療相談」

がんに対してはテレビ・新聞・雑誌・インターネットなどで多くの情報が溢れています。根拠のない甘い言葉であっても、がん患者さんや家族は不安が強く、つい信じてしまいがちです。

セカンドオピニオンというと一般的に堅苦しくて、相談するためには主治医の紹介状と画像などのデータが必要とされています。当センターのセカンドオピニオンは、敷居が低い有料の「がん何でも診療相談」であり、詳しい紹介状や資料がなくても、キャンサーボードと同じように、内容にかかわらず相談できる体制をとっています。ぜひ、気軽にご相談ください。

更新:2022.03.14