心房細動に対する最新のカテーテル治療について教えてください

心臓の中の異常な電気の発生とその伝導が心房細動の原因です。アブレーション（心筋焼灼術）とは、それらを防ぐために、心臓の筋肉をカテーテルの先端から放出される電流の熱で焼灼する不整脈の治療法の１つです。太ももの付け根から血管にカテーテルを挿入して行います。術前に撮影した心臓CTの3D画像を用いて、カテーテルの位置を確認しながら正確なアブレーション（心筋焼灼）を施行できるのが特徴です。イリゲーションカテーテルという、先端が還流水で冷却される特殊なカテーテルが使用できるようになり、術中の脳梗塞のリスクが低下するとともに、術後の心房細動の再発率も低下しました。また、コンタクトフォースセンサーという技術を用いて、カテーテルの先端にどれだけの力が加わっているのかが分かるようになったため、安全性が飛躍的に向上しました（写真１、２）。

当院では不整脈の１つである心房細動に対しても、これらの最新技術を用いたアブレーションを施行しています。

心房細動を放置することには、大きなリスク（脳梗塞、抗凝固薬内服に伴う出血、心拡大、心不全など）が伴います。脳梗塞をきたした人の多くは、心房細動を患っていたことが知られています。また、著しい徐脈や頻脈（ひんみゃく）から意識消失の原因ともなり、ペースメーカーの移植が必要となることもあります。心房細動に対するアブレーション治療の合併症のリスク（脳梗塞、心血管損傷、神経障害など）は、不整脈に対するほかの治療法に比べると高いのですが、最新の治療機器を使用することで、現在では、かなり安全に治療を行うことが可能となっています。

当院のアブレーション治療では、患者さんの安全を第一に考えた治療方法を選択していますので、ご安心ください。

心房細動に対する新しい治療法として、風船状のカテーテル（クライオバルーン・ホットバルーン）を使用したアブレーションが広まりつつあります。従来のカテーテルを使用したアブレーションと比べ、それぞれメリット、デメリットがあるため、どちらが良いとは一概には言えません。バルーンアブレーションのメリットは、術者の技量にかかわらず一定の手術成績が得られることです。しかし、バルーンが接している部位しか焼灼されないデメリットがあり、患者さんの心臓の形態や不整脈の原因部位によって十分な焼灼が得られないことがあります。熟練した術者が施行する従来のカテーテルアブレーションには、患者さんに応じたオーダーメイドの治療方法が選べるメリットがあり、バルーンアブレーションを施行している施設においても再発例では従来のカテーテルアブレーションが施行されているのが現状です。