関節リウマチの診断、治療法を教えてください

愛知医科大学病院

腎臓・リウマチ膠原病内科

愛知県長久手市岩作雁又

関節リウマチは、どのような症状が起こるの?

主な症状は、朝の手のこわばり感です。また、手指・足趾(そくし)(足の指)の小関節および足・膝(ひざ)・肘(ひじ)・肩の関節に左右対称に起こります。最初は「写真1」のように足趾の付け根、特に小趾(小指)が腫(は)れて痛くなり、気づかないうちに変形していくことがあります。手指の第1関節(指先に一番近い関節)のみが硬く腫れるのは変形性指関節症が多いのですが、第2関節、手足指の付け根の関節が腫れて痛いのは関節リウマチが考えられます。複数の手指が曲げにくい感じがあれば、リウマチによる腱鞘炎(けんしょうえん)が関節炎とともに発症していることが考えられます。

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写真1 手指・足趾の関節腫脹(しゅちょう)・疼痛(とうつう)(腫れて痛い)足趾の付け根が腫れて痛くなります

関節リウマチは、どのように診断されるの?

関節リウマチをはじめとした膠原病(こうげんびょう)疾患は、特徴的な症状、検査などを組み合わせて、ほかの疾患と分類することにより診断されます。悪性腫瘍(あくせいしゅよう)、細菌感染症のように細胞・組織・細菌培養の結果で診断されるものではなく、時間経過とともに診断が変わることもあります。関節炎はリウマチ以外の膠原病、例えばシェーグレン症候群(口腔(こうくう)、眼の乾燥症状)、全身性エリテマトーデス(全身にさまざまな症状が現れる病気)でも起こり、また、パルボウイルスB19感染(リンゴ病)などのウイルス感染でも起こります。実際に関節リウマチによる関節炎があるかどうかは、手、足などの関節エコー(写真2)で滑膜炎(かつまくえん)の有無を確認することで診断ができ、この検査は診察室で行えます。

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写真2 関節エコー診察室で手、手指、足趾などにゼリーを塗り関節部位を観察します

画像診断では、単純X線検査で明らかな骨びらん(骨・関節病変)がない場合でも、関節エコー(写真3)、さらに関節MRI検査(写真4)での確認が有用です。

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写真3 関節エコー撮影画像(「写真1」と同じ足の小趾)パワードプラで関節内に血流シグナルが赤く見えます
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写真4 単純X線・MRI検査(「写真1、3」と同じ足の小趾)骨びらんが見えます

血液検査では、リウマトイド因子は関節リウマチ以外でも陽性になりますし、CCP抗体が陽性であれば、関節リウマチの可能性が高いです。また、関節リウマチは関節以外に肺病変、血管炎など全身多臓器に病変をきたします。

関節リウマチの治療法は、どのようなものがあるの?

メトトレキサート(MTX)という葉酸代謝を抑える薬剤が基本となる第一選択薬です。しかし、MTX投与の可否により、治療が変わりますので、投与前に間質性肺炎、結核既往(けっかくきおう)の有無、腎機能異常、B型肝炎リスクの確認が必要であり、治療中も常に投与の可否判断を行います。MTX投与に関しては、①妊娠を希望される場合はMTXを投与できません、②MTXをできるだけ増量しますが、肝機能異常、気持ち悪さがあり、増量しにくいことがあります、③リンパ増殖性疾患(リンパ腫)を併発することがあります、などの注意点があります。

副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン)は活動性が高い場合(関節の痛みや腫れ)に少量を投与しますが、半年以内の中止を目指します。この薬の副作用としては、骨粗(こつそ)しょう症(しょう)、感染症を併発しやすくなります。そのほかに、生物学的製剤といって炎症を起こす物質をターゲットとした薬剤、さらに細胞内のシグナル伝達を抑えて免疫を抑制するJAK阻害薬という薬剤もあります。生物学的製剤は点滴、皮下注射(自己注射)があります。

投与する薬の選択は、個人の利便性、合併症リスクを考慮し、患者さん一人ひとりに都合がよいものを考えて提示します。しかし、これらのリウマチ炎症に直接に有効な薬剤は高価であり、感染症など有害事象の併発リスクが高く注意を必要とします。当科では約50%の方に生物学的製剤を投与しています。

ともに最善の治療を考える

関節リウマチ診療は最善のケアを目指すものであり、患者さんと医師の協同的意思決定に基づき行われます。関節炎は速やかに活動性を低く抑えて、長期に寛解を目指します。早期にリウマチ治療を行うことが重要ですが、すでに一部の関節で骨破壊が進行して変形をきたしていても、ほかの部分の関節炎が進行していかないように、利益、不利益を考えて治療します。関節リウマチ治療は副作用が多くあり、合併症リスク評価が重要です。妊娠を希望される方も治療法をともに考えます。あきらめずに治療を継続することが重要です。

更新:2022.03.14