糖尿病と言われたとき、治療効果の判定にどんな検査値を参考にすればいいの?
愛知医科大学病院
糖尿病内科
愛知県長久手市岩作雁又
内科の先生は、どうしてHbA1c(ヘモグロビン エーワンシー)を気にするの?
糖尿病とは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が増えてしまうことで、さまざまな合併症を引き起こす病気です。糖尿病の治療により、きちんと血糖値をコントロールすることができ、糖尿病の合併症を予防することにつながります。そのため、内科の医師は日々の血糖値の推移を確認し、コントロールするための指導や薬の処方をします。HbA1c検査とは、赤血球内のHb(ヘモグロビン)にくっついたブドウ糖の割合を調べる検査です。正常血糖であれば、HbA1c4.6~5.6%の値を示し、血糖値が高くなるにしたがってHbにつくブドウ糖が多くなり、その期間が長くなれば、HbA1c値が上昇します。過去1~2か月間の血糖値の平均を反映するHbA1cが、院内ですばやく測定できるようになったため、医師はこの検査結果やそのほかの情報を参考にして、血糖値の変化の度合いを予測し治療効果の判定をしています。
自分でも血糖測定をしたいのですが、どんな機械を使ったらいいの?
個人で測定できる簡易血糖測定器は、薬局などで市販されています。測定器にセンサーをセットして、あらかじめ指先などから極細の針を刺して少量の血液を出し、吸引することで測定できます。インスリン注射やGLP1受容体作動薬(ジーエルピーワンじゅようたいさどうやく)注射を行う患者さんでは、医療機関が血糖測定器を貸し出しており、保険診療でセンサーを処方することができ、血糖自己測定を行うことができます。現在、国内では20種類以上の血糖自己測定器・センサーが市販されています。測定器・センサーは、①測定原理(測定のしかた、比色法と電極法の2種)や使用している酵素、②測定値の換算方法、測定にかかる時間、③測定器の形状やセンサーの形、④特殊機能(音声対応など)の有無などにより分けられます。いずれも、一定範囲の誤差はあるものの精度よく血糖値を測定できるようになっており、各々で使いやすいものを選ぶのが一番です。当院ではグルテストNeoアルファ®(写真1)、フリースタイルプレシジョンネオ®を使用しています。自宅で血糖測定を行い、食前の空腹時や食後の血糖値を知っておくことは、良好な血糖コントロールに役立ちます。また、低血糖や高血糖になっていることも自覚症状が出る前に気付くことができます。さらに詳しい血糖値の動きを知るための持続血糖測定(CGM(シージーエム)、FGM(エフジーエム)など)を行える新しい機器も登場しました。
最新の持続血糖モニター機器について教えてほしい
2週間連続して15分ごとに血糖値を測定できる最新の血糖測定器(FGM:Flash glucose monitoring)が、2017年9月から保険診療で使用できるようになりました。当院では、この持続血糖モニタリングシステムに早くから着目し、必要とする患者さんにお届けできるよう取り組んでいます。この血糖測定器は、従来の少量の自己採血をして血糖自己測定するものとは違い、指の穿せん刺し・採血を必要とせず、中心部に極めて細く短い針のついたセンサー(500円玉サイズ)を腕などに貼り付けておくことで自動的に血糖を測定します(写真2)。センサー内には8時間の血糖値が記憶されているため、携帯できる小型のリーダーに近づけることで、直近の血糖値とこれまでの推移を見ることができます。現在、当院に入院している糖尿病患さんや、外来でインスリン使用中の患者さんへの導入を増やしており、その結果、低血糖や食後高血糖への素早い対処がいっそうしやすくなりました。
当院糖尿病センター/糖尿病内科について
当科は、中村二郎教授が2011年5月に愛知医科大学病院糖尿病センターに着任し、同年10月に内科学講座の糖尿病内科として発足しました。
現時点で約24人の医師(専門医6名)と豊富な糖尿病知識を持ち指導を行うことのできる糖尿病療養指導士をはじめとして、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、臨床心理士、理学療法士、歯科衛生士など、多くのスタッフとともに、より最先端の診断、治療、教育、研究を行うことのできる診療科となっています。
更新:2024.10.29