ハイブリッド手術による血行再建について教えてください

愛知医科大学病院

血管外科

愛知県長久手市岩作雁又

どんな病気に行う手術なの?

動脈硬化などが原因となって、主に足(下肢(かし))の動脈が狭くなったり(狭窄(きょうさく))、詰まったり(閉塞(へいそく))する病気(末梢動脈疾患(まっしょうどうみゃくしっかん))に行う、血流を増やす手術(血行再建術)です。

一口に末梢動脈疾患といっても、症状が出ない(無症状)ものから、歩くとふくらはぎが痛くなり休むと痛みが和らぐ(跛行(はこう)症状)もの、動かなくても痛む(安静時痛)もの、足先に傷ができる(潰瘍(かいよう)・壊死(えし))ものまでさまざまな段階があり、それぞれの病態をしっかり把握して治療法を選択することが重要になります。

すべての患者さんに手術を行うの?

下肢の動脈に狭窄や閉塞があるからといって、そのすべてで血行再建術が必要になるわけではありません。保存的な治療でわき道(側副血行路(そくふくけっこうろ))が発達し、症状が改善することも十分考えられます。一方で、手術を行わないと症状が改善しないどころか悪化する場合があるのも事実で、手術が必要な下肢を見極める必要があります。

当科では、跛行症状のある患者さんには、歩いたときの下肢の血圧測定(歩行負荷試験)を行うことで保存的治療でも症状が改善する可能性を、傷のある患者さんには痛くない血流評価検査(無侵襲診断法(むしんしゅうしんだんほう))を行って傷が治る可能性を、客観的に評価して手術の適応を判断しています。

ハイブリッドって、どんな治療なの?

末梢動脈疾患に対する治療法は、薬物療法や運動のような保存的治療が基本となりますが、跛行症状が改善しない場合や、傷がある場合には手術の適応となります。手術には、皮膚を切開して動脈の狭い部分の迂回路(うかいろ)を作成する「バイパス手術」と、カテーテルという細い管(くだ)を用いて病変部を風船で膨らませたり、ステントという網状の金属筒を留置して再び狭くなるのを防いだりする「血管内治療」があります。バイパス手術は安定した効果が得られますが、侵襲性(体に負担がかかる)という欠点があり、血管内治療は低侵襲(体に負担が少ない)ですが、効果が長持ちしないという欠点があります。それらの欠点を補い、利点を組み合わせたものがハイブリッド手術(写真1)です。

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写真1 3D画像、術前(左)と術後(右):66歳、男性。ハイブリッド手術で下肢切断を回避できました

当院には、血管内治療を行う血管撮影装置と外科手術を行う手術設備の両方を持ち合わせたハイブリッド手術室(写真2)があり、どのような病態に対しても対応できるようにしています。

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写真2 ハイブリッド手術室

最新の大腿動脈ステントグラフト治療

これまでのバルーンやステントを用いた血管内治療では、一定の確率で病変が再発することが問題でした。しかし、新たにステントと人工血管を組み合わせたステントグラフトという技術が大腿部(だいたいぶ)(太もも)の病変に使用可能となり、適応基準を守れば、これまでの治療よりも再発する可能性が大幅に少なくなり、バイパス手術にも匹敵することが期待されています。当科でもいち早くこの技術を取り入れて、体にかかる負担が少なく安定した治療を提供できるようにしています。

更新:2024.10.08