児童精神科で扱うこころの問題――不登校から精神疾患まで

浜松医科大学医学部附属病院

精神科神経科

静岡県浜松市東区半田山

こころの疾患とは?

児童精神科の領域では、気分が落ち込む、眠れない、昼夜逆転、食欲が不安定、やる気が出ない、イライラする、集団行動が苦手、登校をしぶる、じっとしていられない、カッとなりやすい、といった症状から受診される方が多いです。

こうした症状の背景には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、知的障害、学習障害、摂食障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、反応性アタッチメント障害、統合失調症、うつ病、不安症、強迫症、ゲーム障害などの疾患が存在している場合があります(図1)。

表
図1 症状と疾患の関係

児童精神科領域での診察の進め方

特に初回の診察の場合には、できるだけお子さんと保護者の方と別々に面接しています(写真)。

写真
写真 精神科外来での診察の様子
お子さんの緊張をほぐし、なごやかな雰囲気で話ができるように工夫をしています

保護者の方からは、お子さんが成長してきた過程について詳しく話してもらっています。学校でのお子さんの様子について、保護者の方、あるいは学校の先生からの情報はとても重要です。また、心理検査を受けてもらうこともあります。

診断は、これらの聞き取りから得られた情報と診察の際のお子さんの様子、そして心理検査の結果を標準的な診断基準に照らし合わせて行っています。何度か面接を重ねたうえで診断する場合もあります。

また、体の不調が原因で、こころの症状が出ている可能性があるときには、血液検査、脳画像検査、脳波検査などの身体医学的な検査を行うこともあります(図2)。

フローチャート
図2 診察の進め方

児童精神科領域での治療の進め方

治療の中心は、お子さんの生活上の困りごとを話してもらうこと、そして困っていることを減らす方法を、お子さんと保護者と医師で一緒に考えることになります。

家庭や学校での行動に問題が目立つことから、それに困った周囲の大人に連れて来られるお子さんもいます。しかし、こうしたお子さんの治療を進めていくとき、お子さんは「困った子」ではなく「困っている子」であるはず、という視点を忘れないことが大切です。

また、お子さんがそれぞれの状況に適した支援を受けられるように、外部の機関と連携した支援を提供することもあります。

例えば診察の結果、発達についての支援を行うことが望ましいと考えられるお子さんについては、院外の療育機関を紹介します。

登校が苦しくなっているお子さんについては、保護者の方や学校の先生とも相談しながら、お子さんが安心できる環境を整えられるように働きかけています。

さらに、治療上のメリットがある場合には、医師による診察に加えて、臨床心理士によるカウンセリングを行うことがあります。カウンセリングでは、十分な時間をかけてお子さんが自分のこころの問題を言葉で話せるようにし、対処法を担当心理士とお子さんとで一緒に考えていくようなものから、強迫症や心的外傷後ストレス障害などの症状をコントロールできるようにしていく専門的な治療方法まであります。当院では、多くの心理士がこうしたカウンセリングを担当しています。

薬物療法によって症状の改善が期待できる場合には、お子さんと保護者の方に十分な説明をし、期待される効果や可能性のある副作用などについて理解してもらったうえで、薬物療法を行います。注意欠如多動症、心的外傷後ストレス障害、統合失調症、うつ病、強迫症、あるいは自閉スペクトラム症における周囲からの刺激に対するいら立ちやすさに対しては、保険診療での処方が認められている薬剤があります。

児童精神科での対象年齢

原則として、初回の診察の時点で15歳以下のお子さんを対象としています。

当院は特定機能病院(*)という指定を受けているため、まずは地域の医療機関にかかってもらい、その医療機関で診察をした医師の判断によって、当科に紹介してもらう流れになります。

そして、当科の初診医が望ましいと判断した場合に、2回目以降の診察から、児童精神科外来にかかってもらうようになります。初診時から児童精神科外来にかかることはできないシステムをとっています。

* 特定機能病院/一般の病院では対処できない病気やけがに対応することができる、高度な医療を提供しているとして承認を受けた病院のこと

更新:2023.10.26