四国がんセンターのがん検診 広範囲かつ詳細なチェックができるPETがん検診について

四国がんセンター

放射線診断科

愛媛県松山市南梅本町甲

当院のがんドックについて

当院では2006年の新病院開院時より、PET‐CT検査(後述)を軸としたがんドックを行っており、年間500人前後が受診されています。2011〜2017年の集計では58件のがんが確認されています(発見率1・58%)。最多は肺がん(14件)、次いで前立腺がん(12件)、以下乳がん(7件)、大腸がん(6件)、悪性リンパ腫、甲状腺がん、膵(すい)がん、腎(じん)がん、胃がん、膀胱がん、胆管がん、尿管がんが発見されています(図1)。このうち約2割はPET‐CT以外の検査で発見されたものです(前立腺がん、早期胃がんなど)。また、受診回数でみると初回の発見率が1・88%と高いです。

写真
図1 当院のがんドックで発見された大腸がん

2018年にはPET‐CT撮影装置を更新しました。画質向上、被曝低減のための最新の技術が搭載され、また装置内が広くなり検査の快適性も向上しました。

当院のがんドックは、がん専門病院であることにより、がんについての知識や経験が豊富で、PET‐CT検査の件数も多いことが特徴です。PET検査の専門の資格を持った医師が画像診断を行い、必ず2人の医師が読影することで誤診がないようにしています。病変が見つかった場合も引き続き当院にて、各疾患の専門医による診断・治療を受けることが可能です。

がんドックのコース、価格など、詳しい情報は当院ホームページや院内で配布しているパンフレットをご参照ください。

次に、当院のがんドックで採用しているPETがん検診について説明します。

PET‐CT(ペットシーティー)検査とは

PET‐CT検査はPET検査とCT検査を同時に行う検査です。

PET検査には、さまざまな種類がありますが、がんの検査に広く用いられているのは、FDGという薬を使用した検査です。FDGは放射線を出すブドウ糖のようなもので、静脈に注射します。1時間ほど安静にした後に撮影(20〜30分)を行います(図2)。

イラスト
図2 PET-CT検査の方法

がんは一般的に増殖が速く、エネルギー源としてブドウ糖を多く消費しますのでFDGがたくさん集まります。FDGから出る放射線を検出することで、がんを発見することができます。

CT検査はX線で体の断層像を撮影する検査で、臓器の形態を詳しく調べることができます。PET検査のみではFDGがどこに集まっているのか、分かりにくいことがありますが、CTの画像と重ね合わせることで明瞭になります。また、FDGが集まりにくい病変の発見にも役立ちます。

PET‐CT検査はがんの転移・再発など、どこに起こるか分からない病変を効率よく発見することができます。治療前の病期診断(がんの進行の程度を診断すること)、治療後の再発の診断などに有効で、がんの診療において重要な検査となっています。

早期胃がんを除くすべてのがんで保険適用が可能で、多くのがんでPET‐CT検査が行われています。一方で、胃がんや肝がん、腎がん、前立腺がん、膀胱がんなど一部のがんではあまり行われていません。これはFDGを取り込みにくいがんがあること、正常臓器への集積のために診断が難しい部位があることなどによるものです。

PET‐CTをがん検診に用いる試み

前述のようにPET‐CT検査はがんの診療に有用であり、これをがん検診に応用した任意型検診がPETがん検診です。1994年より、わが国で始まった世界的にもユニークな試みで、21世紀の最初の10年間に全国に普及しました。

PETがん検診の利点としては、広い範囲(通常、頭から大腿(だいたい)の付け根まで)を比較的楽に検査でき、対象となるがんの種類が多いこと、このためがん発見率が比較的高いこと、などがあります。全国アンケート調査(2006〜2009年)では、受診者の約1・23%にがんが発見されています(併用された検査で発見されたがんも含む)。また、発見されたがんの種類も32種類と多く、対策型検診でカバーされていないがんも多数発見されています(表)。

表
表 PETがん検診で発見されたがん(全国)

問題点としては価格が高いこと、他の検診に比べて放射線被曝が多めであること、検診としての科学的根拠(死亡率の減少)はまだ確認されていないことなどがあります。

PETがん検診をお勧めするのは、基本的にはがんのリスクが高い方です。中・高年の方、がんの家族歴がある方、喫煙など発がんリスクを有する方などです。また一般の検診よりも詳細なチェックを行いたい方にお勧めです。逆にお勧めしにくいのは、若い方(がんが少ない)や糖尿病の方(FDGは血糖の影響を受ける)などです。

PET‐CT検査は苦手とするがんもあり、ほかの検査の併用も望まれます。例えば、食道、胃、大腸の早期がんについては内視鏡検査、肝臓や膵臓、腎臓についてはMRIや超音波検査、前立腺については腫瘍(しゅよう)マーカーPSA検査、乳腺についてはマンモグラフィや超音波検査、子宮については細胞診などです。

更新:2024.01.25