放射線治療 急速に進歩している放射線治療

四国がんセンター

放射線治療科

愛媛県松山市南梅本町甲

放射線治療の原理と目的

放射線治療は、がんの増殖に必要ながん細胞内のDNA(がんの遺伝情報を持っている)に作用して、増殖をストップさせることでがん治療を行います。がん治療の3本柱の1つとして認識され、多くのがんでその威力を発揮しています。放射線の当たる範囲に対してのみ効果のある治療で、限局した病巣に対して効果を発揮します。体に対する負担は小さく、高齢者にも可能な治療であり、また臓器の機能、形態を温存できるという特徴があります。

放射線治療はその目的から、次の3つに分類されます。

①補助療法
主として手術の補助(術後照射、術前照射)として行われます。最も多い例として、乳房温存療法術後に再発予防のために照射を実施します。
②緩和的照射
骨転移などに対する症状の緩和のために行います。
③根治的照射
治すことを目的として行います。

近年、とりわけ根治的(こんちてき)照射の分野での発展は目覚ましく、高い精度で病巣に放射線を集中した治療(高精度放射線治療と呼んでいます)は、体にやさしく、腫瘍(しゅよう)制御を高めることができます。このような精度の高い治療には、強度変調放射線治療、定位放射線治療を含みます。

強度変調放射線治療

強度変調放射線治療はコンピューター技術を駆使し、正常組織の線量をできるだけ少なくし、腫瘍に対して、より多くの治療線量を投与すること(線量分布の改善)を可能にした技術です。当院では、2017年度に最新の直線加速器(リニアック)の更新を行い、強度変調回転放射線治療(VMATという)を採用し、従来のものに比べて、より放射線を集中させ、また大幅な治療時間の短縮を可能にしています。現在、主として前立腺がん、頭頸部(とうけいぶ)がんに行っていますが、婦人科がんなどの他の固形がんに対しても、適応の拡大が行われています(図1)。

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図1 強度変調放射線治療を用いた治療の線量分布
左/前立腺がん、右/頭頸部がん

定位放射線治療(ピンポイント治療)

定位放射線治療はもともと、脳腫瘍に対して用いられていた治療法です。比較的小さな腫瘍に対して、多方向から照射して、病気の部分を集中的に治療する方法で、別名ピンポイント治療ともいわれています。この15年、脳腫瘍以外の病変に対して、特に末梢部早期肺がんに対して行われ、局所に対する効果は手術に近いものが得られており、切除不能末梢早期肺がんに対する標準治療となっています(図2)。

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図2 I期末梢肺がんに対する定位放射線治療
上/治療前後CT像、下/治療計画と治療前PET像

また、2017年度の機器更新に伴い、幅2・5㎜リーフ(照射野を作る鉛の板)を内蔵したものとなり、より小さい腫瘍に対しても威力を発揮しています。またソフトの進歩により、多発病巣に対しても短時間での治療を可能にしています(図3)。これ以外にも、肝腫瘍、骨腫瘍などに対しても適応拡大されています。

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図3 多発脳転移に対する定位放射線治療 ➡は腫瘍

放射線治療の種類と画像誘導小線源治療

放射線治療は、その治療法から、リニアックなどの放射線の出る機械を用いて体の外から体の中の病巣(がん)に対して、主としてX線などを用いて治療する「外照射」と、放射性同位元素(放射線の出る粒)を用いて、体の中にこれを挿入、ないしは刺入することによって、病巣を直接治療する「小線源治療」に分類できます。小線源治療は、腫瘍内部あるいは病巣のごく近くから治療できることから、究極の高精度治療とも呼ばれます。主に子宮がん、前立腺がんに対して用いられています。近年、CT画像を用いて、正常組織と腫瘍を考慮に入れた治療計画(3次元的治療計画)を行うことが可能となり、正常組織と腫瘍に対して理想とする線源配置ができ、副作用の軽減と治療成績の向上が期待できます(図4)。

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図4 子宮がんに対する画像誘導小線源治療
上/治療計画、下/治療前後のMRI像 ➡は腫瘍

更新:2024.10.04