質の高い腹腔鏡手術

平塚市民病院

外科 消化器外科

神奈川県平塚市南原

腹腔鏡手術とは

腹腔鏡(ふくくうきょう)という高性能カメラをお腹(なか)の中に入れて、テレビモニターに映し出された映像をリアルタイムに見ながら行う手術のことです(写真1)。近年、腹腔鏡手術はめざましい進歩を遂げ、急速に普及してきています。

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写真1 腹腔鏡手術

どうして小さな傷だけで手術できるのか?

腹腔鏡手術では小さな傷からポート(写真2)を4~5か所ほど留置し、そこから専用のカメラ(写真3)を入れ腹腔内を観察します。また、別のポートから鉗子(かんし)(写真4)を入れ組織を把持しながら、電気メスや凝固切開装置(写真5)を使って手術を進めていきます。
(写真2~5/提供:オリンパス株式会社)

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写真2 カメラや器具を出し入れするポート(径12mm/5mm)
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写真3 腹腔鏡手術で用いる細径カメラ(径5mm)
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写真4 腹腔鏡手術で用いる鉗子
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写真5 組織を切離するのに役立つ超音波擬固切開装置

腹腔鏡手術のメリット・デメリット

腹腔鏡手術の特徴は、従来の開腹手術と比べて傷が小さくすむことで、体への負担が少なく、痛みも軽くなります。手術後も早期から運動が可能となり、仕事への社会復帰も早いというメリットがあります。その一方で、技術の習得に修練を要すること、特殊な装置や器具が必要なこと、開腹手術と比較して手術時間がのびることなどの側面があります(表1)。

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表1 腹腔鏡手術のメリット、デメリット

腹腔鏡手術のエキスパートが勢ぞろい

当院の外科では、各領域(大腸や胃、胆嚢(たんのう)や肝臓・膵臓(すいぞう)、鼠径(そけい)ヘルニアなど)の腹腔鏡手術のエキスパートが手術を担当しています。特筆すべきなのは、日本内視鏡外科学会の厳正な審査に合格した「内視鏡外科技術認定医」が多数在籍していることです。これらの指導医を中心として、安全で質の高いチーム医療を心がけています(写真6)。

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写真6 平塚市民病院外科のチーム

3D(立体画像)システムでお腹の中を立体視

腹腔鏡手術の最大の弱点は、2D(平面画像)のため「奥行きがつかみにくいこと」でした。この問題を克服する優れた機器システムがオリンパス社により開発されました。それが3Dシステムです。2014年10月から当院でも導入を開始しました。これにより、お腹の中を立体視しながら手術が可能となり手術の質が大きく進歩しました(写真7)。

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写真7 3D(立体画像)システムで行う腹腔鏡手術

最新の止血装置を駆使

手術する際には、出血に対する確実な止血が不可欠となります。当院の手術室には計7台の特殊機能を搭載した最新式の止血装置(バイオ300D〈エルベ社〉2台、Force Triad™エネルギープラットフォーム〈コヴィディエン社〉3台、サンダービート〈オリンパス社〉2台)が装備されています(写真8)。これらの最先端機器の導入により手術の安全性がさらに向上しました。

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写真8 特殊機能を搭載した止血装置

腹腔鏡手術の手術実績

2016年に当科で行われた手術の一部を以下に示しました(表2)。多種多様な手術において、腹腔鏡手術が実施されています。特筆すべきなのは、虫垂炎や胆石症だけでなく、腸閉塞や大腸がん(結腸がん、直腸がん)の多くが腹腔鏡手術で行われていることです。また、近年、胃がん、肝臓がん、膵臓がんなどにも応用の幅が広がっています。

  開腹手術 腹腔鏡手術 合計
食道がん切除 3 0 3
胃がん切除 35 16 51
虫垂炎手術 0 78 78
大腸がん切除 13 119 132
肝臓がん切除 10 10 20
胆道がん切除 8 0 8
胆嚢摘出 5 92 97
膵臓がん切除 7 0 7
鼠径ヘルニア 100 45 145
その他の手術 164 48 212
表2 2016年度の消化器外科での手術件数

更新:2024.10.29