新しい持続血糖モニタリング( CGM: Continuous Glucose Monitoring)を用いた糖尿病治療

平塚市民病院

腎臓内分泌代謝内科

神奈川県平塚市南原

糖尿病患者さんの血糖値管理

糖尿病の治療で一番大事なのが血糖管理であり、特に最近では「血糖値スパイク」が注目されています。血糖値は1日の中で変動し、食後に急激に血糖値が上がり、時間と共に正常値に戻るため、一般的な健康診断では発見が難しく、自覚症状もありません。気づかずに放置すると、糖尿病が発症するだけではなく、恐ろしい心筋梗塞や脳梗塞が起こるリスクも高くなるといわれます。自分の血糖変動を確認し、食事運動療法などで修正を行うことで、より良い血糖コントロールの実現に近づけることができます。

糖尿病診療を変える、持続血糖モニタリング(CGM)とは

自己血糖測定では24時間の連続した血糖変動を確認することは不可能でしたが、CGMによりこれが可能となりました。

写真
写真 当院で新たに導入したCGM(FreeStyleリブレPro)

CGMとは、体に小型のセンサーを装着し、質液(しつえき)と呼ばれる血管と細胞の間の液に含まれるブドウ糖濃度を1分ごとに測定し、15分おきに自動的に記録し、24時間連続的に測定できる新しい血糖測定方法です。以前のCGMでは、センサー装着中にも指に細い針を刺して自己血糖測定を数回行い、正確性維持のため較正(こうせい)する必要がありましたが、当院で新たに導入した新時代CGMでは、自己血糖測定による較正は必要なく、装着期間中は患者さん自身の操作は不要で、お風呂を含む日常生活を送ることができます。

イラスト
図 新しいCGMの仕様手順

CGMに何が期待できるのか

CGMでは、これまでの血糖測定では分からなかった1日の血糖値の動きを把握することができます。血糖自己測定やHbA1cでは異常がなくても、食後に著しく血糖値が上昇していないか(血糖値スパイク)、いつどんなときに高血糖になっているのか、また、知らない間に低血糖を起こしていないか、糖尿病予備軍では隠れていた高血糖を確認できます。

血糖の変動を確認することによって、低血糖を防ぐ目的で食事を摂ったり、血糖値の上昇を抑えるために運動したりといった対処が判断できます。また、針の痛みで血糖自己測定がおろそかになりやすい患者さんにとっては、使用時の血糖自己測定が不要なところも良い点です。さらに、治療中の患者さんには、血糖変動を確認することで最適な処方を検討することができます。

CGM使用時の注意点

妊婦さん、ペースメーカーなどの埋め込み式医療機器装着中、透析中、6歳未満の方は使用できません。また、X線検査、CT、MRIを受ける際には取り外す必要があります。センサーは耐水性のため、装着したまま短期間の入浴、シャワーは可能ですが、激しい運動により汗やセンサーが動くことでセンサーが緩むことがあります。測定結果に基づく臨床診断は、臨床症状や他の検査結果と合わせて医師が総合的に判断しますので、自己判断で経口薬又はインスリンの投与量を変更しないでください。

最後に

良質の血糖管理のためには、目標HbA1c値を達成することのみならず、低血糖や体重増加を防ぎ、膵臓(すいぞう)の働きを守りながら、血糖値を安定させることも大切です。当院では最新型CGMなどの新しい機器を積極的に取り入れることで、患者さん一人ひとりに適したオーダーメイドの治療を行っています。1型糖尿病、妊婦さん、術前で厳格な血糖管理が必要な場合、糖尿病治療(食事運動療法、薬物療法)を十分に行っても血糖管理が困難な場合には、ご相談いただけたらと思います。

更新:2022.08.08