肺がん治療は進歩しています

平塚市民病院

呼吸器内科

神奈川県平塚市南原

肺がんとは?

日本人の死因の第1位は「がん」です。その中で最大の原因となっているのが肺がんです。肺がんで年間約7万人の方々が亡くなっています。肺がんはリンパ液や血液に乗って、ほかの臓器(特に脳と骨)に転移しやすいため、ほかの臓器のがんに比べ予後が悪いです。

肺がんには2種類ある

肺がんはその組織のタイプにより、小細胞肺がんと非小細胞肺がんの2種類に分類されます。小細胞肺がんは、肺がん全体の10 ~15%であり、タバコと関連があり男性に多いです。がんの進行増殖速度が非常に速く、進展型小細胞肺がんの生存期間中央値は9~10数か月程度です(9~10数か月後に2人に1人は亡くなっている)。

それに対して、非小細胞肺がんは肺がん全体の80%以上を占めており、そのうち腺がんが50%を占めています。腺がんには、数多くのがん細胞の特異的な遺伝子変異が発見されています。

昨今、この遺伝子変異をターゲットにした分子標的治療薬(がん細胞の増殖や転移に必要な分子を特異的に抑える薬)の開発には目覚ましいものがあり、同薬使用の適応がある病態であれば、生存期間中央値は27~35か月と、大きな延命効果が認められています。

肺がんの治療って何ですか?

現在、肺がんの治療は5本の柱で支えられています。手術治療、放射線治療、全身化学療法(抗がん剤)、分子標的治療(図1、写真)、免疫療法(図2)です。

イラスト
図1 分子標的治療(がん細胞に対してピンポイントに作用する)
写真
写真 分子標的治療による治療前後
イラスト
図2 免疫療法

手術治療は、体の中の悪いがん組織を外科的に取り除きます。放射線治療は、臓器の形態や機能を温存しつつ、がん細胞の増殖を抑制してがん細胞を殺します。全身化学療法は、全身のがん細胞の増殖を障害すると同時に、正常細胞も少なからず傷つけます。分子標的治療は、正常細胞を傷つけることなく、がん細胞の増殖や転移に必要な分子を特異的に抑えます。免疫療法は、がん細胞により抑制された免疫T細胞の抑制を解除し、免疫T細胞の働きを取り戻します。

肺がんはその進行具合により、病期分類をステージ1~4期に分けています。おおまかにいうと、1、2期は早期肺がん、3、4期は進行肺がんです。1、2期は手術治療、3、4期は非手術治療を行います。現在、小細胞肺がんの治療に分子標的治療や免疫療法の効果は確認されていません。しかし、非小細胞肺がんの治療はこの15年間進歩し続けており、手術・放射線・全身化学療法に加えて分子標的治療薬や免疫療法を駆使することにより、生存期間の延長がみられています。

まとめ

“肺がん――あきらめないで!”

①国内におけるがん死因の第1位は肺がんです。
②肺がんの中で最も多いのは腺がん(非小細胞肺がん)です。
③非小細胞肺がんの治療は年々進歩し生存期間の延長が得られています。

更新:2024.01.25