がんを取り除ければよい、それだけではありません。”やすらぎの手術”で患者さんに寄り添う

済生会吹田病院

呼吸器外科

大阪府吹田市川園町

手術に不安はつきものだけど……

患者さんの不安は、病気を疑われたときからはじまります。がんだったらどうしよう?家族は?お金はどのくらいかかるのだろう?どこの病院に行けばよいのだろう?やっとのことで病院を決めても、今度はどんな先生だろう?手術しないといけないのかな?がんは治るのだろうか?―など悩みはつきません。それは家族にとっても同じことだと思います。

呼吸器外科を受診される方は、すでに診断がついている場合が多く、このような悩みもある程度解決していることが多いのですが、やはり手術に対する不安は多かれ少なかれ皆さん持っています。診断がついている方やそうでない方、手術が望ましい方やそうでない方に対しても、本人や家族の話を聴きながら、少しでも不安を和らげることができるように心掛けています。もちろん患者さんのための治療ですので、手術を押しつけるのではなく、抗がん剤治療や放射線治療、緩和ケアなどの選択肢についても十分に説明した上で、治療を受けるかどうか、手術を受けるかどうかを含めて患者さんに決めてもらっています。

図
図1 十分に説明します

”つらいこと”がないようにする

患者さんにとっては”不安”はつらさの一つです。その不安が治療の妨げになることもあります。手術の前だけでなく手術の後も、毎日ベッドサイドで「気になることはないですか?」「昨夜は眠れましたか?眠り薬もありますよ」のように声をかけ、体だけでなく心のケアにも気を配っています。また痛みに関しては、胸腔鏡(きょうくうきょう)を用いて傷を小さくするだけでなく、痛み止めを十分に使ってなるべく痛みが軽くなるように工夫しています。「痛くないですか?痛み止めを追加できますよ」と声をかけ、患者さんの希望で追加できるようにもしています。この痛みも治療の妨げや合併症につながることがありますので、我慢しないようにお話をしています。

図
図2 胸腔鏡補助下手術の傷あと

合併症を減らす努力

術中術後には、起こってほしくないこと(合併症)が起こってしまうことがあります。もし起これば、やはりつらいものです(私たち主治医も同様です)。出血・肺炎・不整脈・肺瘻(はいろう)・気管支瘻(きかんしろう)(肺からの空気漏(も)れ)・皮下気腫(ひかきしゅ)・嗄声(させい)(声のかすれ)・膿胸(のうきょう)・創感染(きずかんせん)(傷が膿(う)む)・呼吸苦・脳梗塞(のうこうそく)などです。当科では、そのような合併症をなるべく起こさないように鋭意努力しています。

肺炎

手術後に肺炎になる方もいますが、当科では100人に1~2人と少なくなっています。たばこを止めてもらうのは当然のことですが、痰(たん)の多い患者さんには手術前から痰を減らす薬を出したり、肺活量の悪い患者さん(閉塞性肺疾患(へいそくせいはいしっかん))には吸入薬を処方したり、手術前からリハビリを始めるなどしています。手術までそんなに時間はないのですが、それでも十分な効果が出ています。2017年に当院に口腔(こうくう)外科が新設され、手術前から口の中の状態(歯周病や虫歯)をケアすることで、さらに良くなると期待できます。手術後は早期からのリハビリが効果的ですので、手術翌日から毎日、医師や看護師、理学療法士らと一緒に行います。病棟を一周してもらうことが多いですが、それができない人はベッドサイドでリハビリを行っています。

不整脈

肺の手術は心臓の近くを操作しますので、不整脈はある程度の確率で起こります。予防に有効な方法はないのが現状ですが、術前に心臓の簡単な検査をして隠れた異常や症状を察知しておくことで、術中や術後の対策に役立てています。手術後の不整脈はたいてい一時的で、しばらくすれば治まることが多いのですが、循環器内科の医師と相談して早めに対処しています。

チームで守る!

そのほかにも、それぞれの病棟には専属の栄養士や薬剤師がおり、リハビリスタッフ、看護師を含めて医師を中心とした1つのチームで、一人ひとりの患者さんに対して話し合い、相談し合い、安全・安心・満足をモットーに、抜け目のないよう気をつけています。このように手術前の準備から手術後のケアまで、しっかりした対策が施されているのが当院の強みだと考えています。術後の入院期間は数日から10日くらいです(患者さんの意向も聞くようにしているため幅があります)。

図
図3 チーム医療でサポートします!

更新:2024.10.17