内視鏡治療を中心とした救急医療ー消化管出血、異物除去、腸閉塞(イレウス)、急性胆道感染症など

済生会吹田病院

消化器内科

大阪府吹田市川園町

内視鏡治療を必要とする救急疾患は多岐にわたります。吐下血(とげけつ)、血便などの原因となる消化管出血や高齢者に多い異物誤飲、嘔吐(おうと)を繰り返す腸閉塞(ちょうへいそく)(イレウス)、発熱・腹痛・黄疸(おうだん)などを伴うことが多い急性胆管炎(きゅうせいたんかんえん)などがあります。

救急医療において主に内視鏡を用いる治療について紹介します。

消化管出血、異物除去

最も多いのが消化管出血です。消化管出血には、吐血や下血(黒色便)が症状の中心となる上部消化管出血と、血便を中心とする下部消化管出血があります。原因は「表」のように多数あります。

上部消化管出血 下部消化管出血
胃潰瘍・十二指腸潰瘍・急性胃粘膜病変
胃食道静脈瘤
Mallory-Weiss 症候群
胃がん・食道がん
Dieulafoy’s 潰瘍
その他(毛細血管拡張症・逆流性食道炎など)
憩室出血
虚血性腸炎
痔出血・直腸潰瘍
大腸ポリープ・大腸がん
血管異形成
炎症性腸疾患
その他(放射線性腸炎、感染性腸炎など)
表 消化管出血の原因

吐下血、血便などを主訴に受診された患者さんには、まずは血圧、脈拍などのバイタルサインや問診、診察などで全身状態を確認の上、血液検査・画像検査を行い、貧血の有無や出血源検索などを実施します。バイタルサインが落ち着いており、内視鏡治療が必要と考えられた際には、緊急内視鏡検査・治療を行います。特に上部消化管出血は症例も多く、またショックなどの状態に陥る頻度(ひんど)も比較的高いため、積極的に緊急内視鏡検査による止血術を行っています。

例えば、胃潰瘍(いかいよう)や十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)による出血であれば、焼灼術(しょうしゃくじゅつ)やクリッピングによる止血術(図1)、肝硬変(かんこうへん)の患者さんなどに多い食道・胃静脈瘤(いじょうみゃくりゅう)からの出血の際は、結紮術(けっさつじゅつ)などによる止血術を緊急で行います(図2)。

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図1 胃潰瘍や十二指腸潰瘍による出血に対する止血術
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図2 食道・胃静脈瘤からの出血に対する止血術

また、近年高齢者の増加により異物誤飲(いぶつごいん)が増加しています。異物誤飲の原因で最も多いのがPTP(錠剤など薬剤を包装した状態)です。ほかには義歯や電池などもあります。異物誤飲の場合、画像検査でも食道・胃内などに異物残存が疑われ、鋭利なものや毒性の強いものであれば、内視鏡的に異物除去を行っています(図3)。

図
図3 異物誤飲(PTP)に対する内視鏡を用いた異物除去

腸閉塞(イレウス)

腸閉塞(以後イレウスと表記)も救急外来で来院されることが多い疾患です。イレウスは主に嘔吐、排便・排ガスの停止、腹痛、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)などを主訴に受診されます。

イレウスには閉塞が主体の機械的イレウスと腸管蠕動(ちょうかんぜんどう)の麻痺(まひ)が原因の麻痺性イレウスがあり、機械的イレウスを単純性イレウスと血流障害をきたす絞扼性(こうやくせい)イレウスに分類することが一般的です。血流障害をきたす絞扼性イレウスは、外科的に緊急手術が必要となることが多く、消化器内科で緊急治療を行う症例は、主に単純性イレウスです。単純性イレウスの中で最も多いのが術後の癒着性(ゆちゃくせい)イレウスで、CTなどの画像検査にて、腸管の拡張や内容物の貯留が目立つ際には経鼻(けいび)内視鏡を用い、腸管の減圧目的にイレウス管の留置を行います。

また、大腸がんなどの患者さんで大腸の閉塞によるイレウスの場合には下部消化管内視鏡を用い、金属ステント留置や経肛門イレウス管挿入も行っています。

急性胆管炎

最後に急性胆道感染症についてですが、急性胆道感染症には急性胆管炎と急性胆嚢炎(きゅうせいたんのうえん)があります。内視鏡による緊急治療を行うのは主に急性胆管炎です。

急性胆管炎は総胆管結石や腫瘍性(しゅようせい)病変などによる胆管閉塞、胆汁うっ滞が背景にあり、主に腸管内の菌の逆行性感染によって生じます。

発熱、腹痛などの訴えで来院されることが多く、血液検査・画像検査などにて診断、重症度判定などを行った上で、胆汁のドレナージが必要と考えられた際には、緊急で内視鏡的胆道ドレナージ術を行っています。

当科では休日、夜間を問わず消化器内科医2人のオンコール体制で、消化器疾患における救急医療に対応しています。

更新:2024.10.17