転移性脳腫瘍:切らずに治す転移性脳腫瘍

札幌孝仁会記念病院

脳神経外科

北海道札幌市西区宮の沢

増加傾向にある転移性脳腫瘍

転移性脳腫瘍(てんいせいのうしゅよう)とは、脳以外の臓器にできたがんが脳に転移して起こる病態です。がんの治療中に転移性脳腫瘍が判明することもありますが、脳転移による症状で発症して初めて体のがんが発見されるケースもあります。原因となっている体のがんは、頻度(ひんど)としては肺がん、乳がん、大腸がんが多いといわれていますが、それ以外のがんでも脳転移を起こすことはあります。

がんが高い頻度で発生する高齢者人口の増加や、がん治療自体の進歩の結果、がんにかかっている患者さんが長生きするようになり、それに伴ってこの転移性脳腫瘍も増加傾向にあります。最近は、がん自体の治療のみならず転移性脳腫瘍の治療も進歩してきているため、転移性脳腫瘍が見つかっても長期に生存される例は珍しくありません。

脳転移の状態に応じた治療

診断は通常、造影剤を使ったMRI検査を行います。脳の転移病変が1つだけのこともありますが、一度に数十個の脳転移が発見されることもあります。

治療は、患者さんの年齢、病変の大きさや部位、脳転移病変の数、全身の状態、原因となっているがんの治療の状態など、さまざまな要因を加味して適切な治療法を提案しています。一般的には放射線治療が中心となりますが、病変によっては手術、化学療法を組み合わせることもあります。

図
図 放射線治療を行った転移性脳腫瘍の一例
左:治療前(○部分はがん)、右:治療後

放射線治療には、脳全体に照射する全脳照射のほかに、当院では病態に応じて、サイバーナイフ(写真)を用いて脳転移病変だけにピンポイントに放射線を照射する定位放射線治療や、認知機能に配慮して海馬照射を回避するトモセラピーを使った強度変調放射線治療(IMRT)も行っています。

写真
写真 当院のサイバーナイフ

更新:2024.07.29