認知症性疾患:軽度認知障害からアルツハイマー型認知症

札幌孝仁会記念病院

脳神経内科

北海道札幌市西区宮の沢

症状の特徴

軽度認知障害(MCI)は、①記憶障害の訴え、②年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する、③日常生活動作は自立、④全般的認知機能は正常、⑤認知症ではないという定義があり、記憶の障害はあるものの、日常生活に大きな支障のない状態です。

MCIは認知症の前段階と考えられており、年間10〜15%の方が認知症に移行するといわれています。

認知症の代表的な疾患はアルツハイマー型認知症で、記憶の障害のほか、日付や時間、場所がわからなくなる見当識障害、言葉がうまく話せないあるいは理解できない失語症や、リモコン操作、ATMの操作、家事、物の片づけができなくなる実行機能障害などが出現します。そのほか幻覚や妄想、暴言・暴力などの問題行動を起こすことがあります。

診断・検査・治療

MCIや認知症の診断には、患者さん本人および本人をよく知る方からの話が重要になります。さらに血液・尿検査を行い、内科的な疾患による認知症状態がないかを調べます。

また腫瘍(しゅよう)、脳梗塞(のうこうそく)、脳出血や正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)を疑う所見がないかを頭部MRI(図1)などで検査します。さらに脳血流SPECT(図2)を行います。

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図1 頭部MRI
側頭葉を中心とした海馬の萎縮がみられます
図
図2 脳血流SPECT
脳の血流状態や働きをみる検査。
頭頂側頭連合野および後部帯状回の血流低下がみられます

現在、MCIについては適切な薬物治療はありません。バランスのよい食事や散歩・ジョギング、歌を歌う、日記をつける、会話するなどが推奨されます。

アルツハイマー型認知症では、非薬物療法に加えて、コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬が治療として使用されます。

最近、新たな抗アミロイドβ抗体薬が開発されています。MCI段階で認知症発症を遅らせる、あるいは予防が可能になることが期待されるため、その動向が注目されます。

更新:2024.07.29