変形性ひざ関節症:加齢などによる軟骨の摩耗とは?
釧路孝仁会記念病院
整形外科
北海道釧路市愛国
変形性ひざ関節症とは
加齢やけがなどにより、ひざの軟骨が弾力性を失い、使いすぎによる軟骨の摩耗、関節の変形などが生じる病気です。
男女比は1対4で女性に多く、高齢化が進行中の日本では、症状のある患者さんは約1,800万人いるといわれています。進行すると生活の質が低下し、要介護状態になるリスクが約6倍になるとの報告もあります。
症状と原因・検査
進行すると歩行にかかわる病気
症状
ひざの痛み(歩き始め、立ち上がり動作、階段を降りる際など)、関節が炎症を起こして水が溜(た)まる、ひざの曲げ伸ばしできる範囲が狭くなります。進行するとO脚変形になることが多く、痛みが強くなり歩行が困難になってしまいます。

原因
年齢に伴う変化やけが・感染などの後に、使いすぎが加わることにより、軟骨の摩耗が進行することで痛みや炎症が生じます。
検査
診察で変形・水の貯留の有無、X線で進行の程度などを調べます。

予防と治療
太ももを鍛えましょう
予防のポイント
- 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋(だいたいしとうきん))を鍛える
- 肥満の方は体重を減らす
- 適量のタンパク質・野菜を摂る
- 正座やしゃがみ込んでの作業を避ける
- 地べたの生活でなくベッド・食卓テーブル・洋式トイレを使用する
- 高齢者では急に動いたり止まったりのスポーツ(サッカー、テニス、スキーなど)は控える
治療のポイント
保存治療(手術以外の治療法)
運動療法
大腿四頭筋を鍛える運動を行います。最も基本的で重要な治療になります。

ウォーキングは靴底の柔らかい靴をはいて20~30分、週3~5回行いましょう。痛くて歩くのも大変な方はつかまり足踏みを100回、朝と晩2セットすると良いです。
物理(温熱)療法
お風呂やホットパックでひざを温めることで疼痛(とうつう)の緩和を図り、組織の緊張をほぐします。温めた後、太ももの裏側やふくらはぎを伸ばすストレッチも有効です。

薬物療法
軟骨を保護するなどの効果があるとされるヒアルロン酸をひざ関節内へ注射します。外来で簡単に実施でき、注射の痛みはそれほどありません。関節に水が溜まっている方は水を抜いてから薬液を注入します。1週間以上間隔をあけて5回注射を行います。
鎮痛効果のある内服薬や湿布・塗り薬が処方されることもあります。胃腸障害、腎機能低下(じんきのうていか)、心筋梗塞(しんきんこうそく)などの副作用には注意が必要です。
装具療法
足底板(そくていばん)(体重のかかり方を変えて疼痛緩和を図る)や、ひざ装具が処方されることもあります。
手術治療
保存治療を行っても、ひざ関節の痛みが改善しない場合に行います。
関節鏡クリーニング手術
ひざ関節の内視鏡で傷んだ軟骨や半月板(はんげつばん)(軟骨を保護するクッションのような組織)を一部きれいに取って疼痛緩和を図ります。創(きず)が小さく、次の日から歩行可能で1週間ほどで退院できます。
高位脛骨骨切(こういけいこつこつき)り術(じゅつ)
骨を切って変形を矯正しプレートで固定し、体重のかかり方を変えて疼痛を改善する手術です。術後2週目から歩行可能で、4~6週間ほどで退院できます。骨切り部の骨が早期に癒合するように超音波治療(機器はレンタルできます)も行います。

人工(じんこう)ひざ関節置換術(かんせつちかんじゅつ)
グレード4などのかなり進行した段階では最もよく行われている手術です。
人工の関節に置き換える手術を行います。疼痛を改善する効果が極めて高く、変形も矯正することができます。翌日から歩行可能で、2~3週間ほどで退院できます。

ひざ関節の最新治療(軟骨再生医療)
釧路孝仁会記念病院では厚生労働省の認可を受け、患者さん自身のお腹(なか)の皮下脂肪から抽出した万能細胞(脂肪由来間葉系幹細胞)を関節内に移植することで、軟骨の再生を期待する新しい治療にも取り組んでいます(P82参照)。
自身の細胞を利用するため、拒絶反応の副作用がないのが特徴です。健康保険は対象外になります。

少しでもひざに痛みがある方は、気軽に相談してください。
更新:2024.05.28