前立腺肥大症:中高年男性に多い前立腺肥大症とは?

釧路孝仁会記念病院

泌尿器科

北海道釧路市愛国

前立腺肥大症とは

男性は50歳を過ぎる頃から、徐々にトイレの回数が増え、尿の勢いが弱くなったり、排尿後もすっきりしないなどの症状を感じることが多くなります。このような男性のおしっこに関する不具合に一番関係するのが前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)です。

症状と原因

加齢とともに、おしっこに関して気になる症状がいろいろ現れる

前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱(ぼうこう)の真下にあります。その大きさは栗の実大程度であり、形も似ています。前立腺の中央を尿道が通っており、前立腺は精液の一部となる分泌液をつくる役割をしています(図1)。

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図1 体の中での前立腺の位置

前立腺は50歳を過ぎる頃から加齢とともに大きくなります。大きくなった前立腺が膀胱や尿道を圧迫することで、排尿に関するさまざまなトラブルを起こします。このような状態を前立腺肥大症といいます。

前立腺肥大症の症状には、前立腺が尿道を圧迫することで起きる症状(排尿症状)、前立腺肥大が膀胱を刺激して起きる症状(畜尿症状)、排尿直後の症状(排尿後症状)などがあります(表)。どのような症状をどの程度感じるかは、年齢や生活環境によってもかなり違いがありますが、患者さんの症状が強くなるにしたがい、QOL(生活の質)を障害することとなります。

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表 前立腺肥大症でみられるさまざまな症状

前立腺が肥大する原因については、男性ホルモンとの関連が考えられていますが、患者さんの体質や生活習慣など、さまざまな要因もあるといわれており、正確なことはまだ明らかになっていません。

検査・診断

前立腺肥大症は体に負担をかけない検査で診断できる

前立腺肥大症の診断には、患者さんの尿の出方を調べる検査と前立腺の形や大きさを調べるための画像検査が必要です。患者さんの尿の出方をみる検査として、尿流測定と残尿測定があります。

尿流測定は、検査用トイレで尿をするだけの検査で、排尿量や尿の勢いが記録できます(図2)。画像検査としては、超音波(エコー)検査やCT撮影を行います(図3)。これらの検査結果と患者さんの自覚症状の程度を総合的に評価して、前立腺肥大症の進行状態を診断します。

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図2 尿流測定と残尿測定
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図3 CT撮影(骨盤前面像)。
前立腺肥大のある人とない人の画像上の違い

また、前立腺肥大症とは直接は関係しませんが、中高年男性で増加している前立腺がんをスクリーニング(ふるい分け)するため、血液検査(PSA(ピーエスエー)測定)も行います。

予防と治療

大部分の前立腺肥大症は薬で治療できる

治療は前立腺肥大の大きさだけでなく、患者さんがその症状によって、どれだけ困っているかで変わります。前立腺肥大があっても自覚症状があまりない方は、治療を要しないこともあります。前立腺肥大症の多くは薬で症状の改善が可能です。

薬としては、①前立腺肥大による尿道の圧迫を緩和する薬(交感神経アルファ1遮断薬)、②肥大した前立腺を縮小させる薬(5アルファ還元酵素阻害薬)が一般的です。

薬で効果がなく症状が強い場合は、手術療法が選択されます。尿道から内視鏡を入れて電気メスで前立腺を切除するTURP(ティーユーアールピー)が一般的ですが、最近ではレーザーで前立腺を切除するHOLEP(ホーレップ)という方法もあります。

前立腺肥大症の発症自体を予防することは難しいですが、症状を悪化させないために、日常生活での注意が必要です。①便秘、②下半身の冷え、③長時間の坐位(ざい)、④排尿の過度のがまん、⑤アルコールのとり過ぎなどに気をつけることが大切です。

また、ほかの病気で服用した薬の影響で症状が悪化することがあります。前立腺肥大症の人が一般的な風邪薬やかゆみ止め薬などを服用すると、急に尿の出が悪くなることがあり、服用には注意が必要です。日常生活を工夫し、日頃から症状を悪化させないような生活習慣を心がけることが大切です。

更新:2024.05.28