膵胆道系の疾患における内視鏡治療 胆道閉塞(胆管結石や膵胆道悪性腫瘍)

大垣市民病院

消化器内科

岐阜県大垣市南頬町

閉塞性黄疸とは

膵臓と胆管は胃よりもさらに奥の十二指腸にある乳頭部という場所で、それぞれ消化管と交通のある臓器です。膵臓は胃の背中側に存在し、胆管も太さが数mmと細く、検査でも大変分かりにくい場所に存在しています。胆管は肝臓から始まり、細かな枝が一つになり胆嚢(たんのう)と合流し膵臓の中を通り、最後に乳頭部に開口します(図1)。この間のどこかで病気があると詰まってしまうことも多くその結果、黄疸(おうだん)を呈します(閉塞性(へいそくせい)黄疸)。

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図1 膵胆道の解剖

黄疸が出現する疾患として肝疾患もありますが、膵胆道系疾患の場合は腹痛や発熱を伴うことも少なくなく、疾患によっては緊急で対応する必要があります。後述しますが、胆道に閉塞をきたす疾患として代表的なものが結石と腫瘍(しゅよう)です。いずれも黄疸が現れることが多く、尿の濃染(のうせん)(紅茶のような色になり、時に血尿と間違えられます)、眼球や皮膚の黄染(おうせん)をきたすため、ご自身や時に他人に指摘されて受診されることがあります。当科では、採血検査をすることにより、黄疸の有無を調べることができます。さらに必要な場合は、エコー検査やCT、MRIといった検査を行い早急に対応して、適切な治療を実施しています。

良性疾患(特に胆管結石)の診断と治療

良性疾患の代表は結石です。胆管結石は胆管に原発して発生したものと、胆嚢結石が落下して生じたものがあります。厳密には分けて考えることはありませんが、いずれも胆管で閉塞すると心窩部(しんかぶ)(みぞおち)の痛みや吐き気を感じます。また発熱することもあり、多くが高熱です。

来院後、胆管結石と診断されれば治療となり、内視鏡を用いて行います。内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(ERCP)といわれる検査で静脈麻酔を行い、十二指腸に挿入したのちに乳頭部を切開し結石を採り出します(図2-1)。緊急検査になる場合も多く、当院では救急外来からそのまま検査室に移動し、治療を行うことも可能です。

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図2-1 胆管結石の治療、採石具で結石を把持して除去する

内視鏡で治療を行うことにより、以前は外科手術で1か月程度の長期の入院が必要であった時代から、1週間程度の短期の入院で治療ができるようになりました。内視鏡図1 膵胆道の解剖治療は、体の表面に傷を残すことなく治療が可能で、治療に要する時間も1時間程度です。ERCP検査は年間500件程度を行っていますが、そのうち胆管結石の治療で約150件の内視鏡治療を行っており、結石の治療の件数の割合が多いのも当院の特徴の一つです。

悪性疾患(膵胆道がん)の治療法

悪性疾患は主に膵臓がん、胆嚢がん、胆管がんがありますが、この領域のがんは予後が悪く、治療法も進行具合に応じてさまざまです。いずれのがんも腫瘍により閉塞をきたすことがあり、内視鏡ではプラスチックもしくは金属のステントという管を挿入することにより、黄疸を改善(減黄)することが可能です(図2-2)。またその際に組織を採取することが可能で、確定診断を得ることができます。ステントを留置して減黄したあとは進行具合により治療を選択します。

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図2-2 胆管へ金属ステントを留置する 左:留置前 右:留置後

内視鏡を行う利点は、短時間の処置で黄疸の改善が期待できることや、同時に診断が可能なことです。当院では悪性疾患においても、抗がん剤および内視鏡的治療を積極的に取り組んでいます。

内視鏡治療の利点

内視鏡治療の利点はさまざまありますが、診断と治療を同時に行えることが大きな利点といえます。比較的短時間に処置が可能なことから、再度のステント留置などの処置も可能で、治療を何度かに分けて体の状態に合わせて治療計画を立てていきます。

良性疾患では、状態に応じてステントを用いた胆管炎の改善、結石の採石を行い、診断が困難な症例では、生検を施行した上で病理検査診断を用い、より正確な診断を行います。悪性疾患においては手術や化学療法といった治療前の状態を改善するばかりでなく、胆管の閉塞が進んできた場合の追加のステント留置や、ステントの閉塞が起きた場合のステントの交換を行うことも可能です。胆膵疾患は良性、悪性に関わらず高齢の方に多くみられます。

内視鏡治療は入院に要する期間が比較的短く、今後は適応となる疾患や、できる治療も益々増えていくと考えられています。当院では、安全で苦痛の少ない治療ができるように取り組んでおり、日々、より良い診断と治療を心がけています。

更新:2024.10.10