看護部の活動や取り組み
済生会吹田病院
看護部
大阪府吹田市川園町
看護部の概要
病院理念の「やすらぎの医療」とともに、看護部の掲げるビジョンは、「看護の質の向上」「チーム医療推進」「地域との連携」です。看護師は療養上のお世話や診療の補助だけでなく、質の高い生活を送るための支援を行い、チーム医療の要となって活動しています。
当院の病棟は12部署あり、外来、救急センター、入退院・在宅支援調整室なども含めて、それぞれの部署を管理・統括する師長は22人です。副看護部長やリスクマネージャーなどを含めると看護管理者は29人です(図1)。また、外来、病棟、手術室、透析センターなどで活躍する看護師たちは現在600人ほど在籍しており、病院では一番の大所帯です。
当院看護部の特徴
この大所帯を統括して管理するのが、副院長でもある看護部長です。いつも看護師に向かって「親切・思いやり・笑顔を大切にして、患者・家族・地域の人々に質の高い看護ケアを提供しよう」と発信しています。私は組織横断的に動いてケアの提供をする看護師の1人ですが、どこの病棟に行っても、やさしく笑顔の素敵な看護師が多く、熱意ある看護部長のスローガンが隅々に届いていることが分かります。そして、師長たちの前向きな姿勢と明るさが、はつらつと働く看護師たちのお手本になっています。
看護キャリアの教育体制(表1)
こうした看護師を支えている1つに院内研修を中心とした教育体制があります。確かな知識、豊かな感性、高い倫理観をもって、専門職として看護に取り組めるようさまざまなプログラムを展開しています。また、新人はもちろん経験者にいたるまで、幅広く学ぶ機会があり、それぞれが成長できるような体制を整えています。
必須研修 | ・看護技術 ・感染管理 ・医療安全 ・災害・救急看護 ・倫理 ・リーダーシップ ・臨床指導 |
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選択研修 | ・褥瘡 ・がん ・認知症 |
役割研修 | ・管理者向け ・教育担当向け ・看護助手向け |
多職種で構成されたチームによる医療
「病院」は病に苦しむ人々に最も適した治療を提供し、社会復帰への手助けをしています。超高齢社会の中で、患者さんや家族が抱える問題や不安を乗り越えるための支援をするのも病院の役割です。
これらの支援をより強固にするために、多職種で構成された「チーム医療」があります。当院もあらゆる職種でチームを組み、その専門分野の知識、技術を結集してお互いが連携することで、質の高い医療サービスを提供しています。
チーム医療における看護師の役割
看護師は患者さんに24時間接している専門職であることから、患者さんや家族にとって、悩みなどを打ち明けやすい最も身近な存在だといえます。また、病状の変化だけでなく、その社会的背景や苦痛、あらゆる問題点を察知して、必要な専門職へ「つなぎ」、専門職同士の「かけはし」となり、迅速で適切な対応ができるような調整役も担っています。すなわち、患者さん自身が「その人らしく」生活できるための環境を整えること、これは看護師が最も力を発揮するべき役割であるといえます。
スペシャリストナースの活動
当院では、専門分野に特化した研修を修了した「認定看護師」「専門看護師」が16人在籍しており(図2)、熟練した技術や知識を用い、役割意識をもって仕事をしています。例えば、感染管理認定看護師は、院内での感染リスクを最小限にするための環境整備だけでなく、患者さんや家族が安心して治療に専念できる療養環境を提供するなどの活動をしています。がん化学療法看護認定看護師は、副作用のマネジメントを行い、患者さんが安全・安楽に治療を受けられるように援助する活動をしています。救急看護認定看護師は、質の高い救急処置の参加だけでなく、自然・人的災害の対応など、活動は多岐にわたります。「表2」のように、12の領域でそれぞれが専門性を発揮しながら、組織の中で活動しています。
認定看護師 合計15 人在籍 |
皮膚・排泄ケア 2 人 救急看護 2 人 感染管理 2 人 新生児集中ケア 1 人 乳がん看護 1 人 緩和ケア 1 人 がん化学療法看護 2 人 認知症看護 1 人 慢性呼吸器疾患看護 1 人 糖尿病看護 1 人 手術看護 1人 |
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専門看護師 合計1 人在籍 |
急性・重症患者看護 1 人 |
このスペシャリストナースたちは専門領域が違っても、効果的な情報共有や意見交換を行い、協力し合える体制を整えています。看護師同士でお互いの活動報告や各領域のトピックスを話し合う時間を定期的に設け、常に良好な関係性をつくることで、当院の「チーム医療」推進に大きく貢献しています。
チーム医療の実際
たくさんあるチーム医療の現場では、患者さんにとって最も良い治療やケアについて多職種で意見を出し合っています。どのチームにおいても看護師が欠けては、チーム医療は成り立ちません。こうしたチームの活躍をほんの一部ですが紹介します。
褥瘡対策チーム
褥瘡(じょくそう)(床ずれ)の発生・重症化を予防することを目的として、皮膚科医、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、看護師などの多職種で活動しています。褥瘡の早期発見や予防対策などについて、院内をラウンド(回診)して対応したり、創傷や皮膚のトラブルについての院内研修なども実施します。皮膚・排泄ケア認定看護師は、褥瘡や失禁などに関する専門的ケアを提供する役割があり、このチームで大いに力を発揮しています(図3)。
緩和ケアチーム
がんに関する身体や精神症状から療養場所を含めた過ごし方まで、幅広くチームメンバーで対応します。また、院内のリンクナース(病棟の担当看護師)が患者さんの身体的・精神的苦痛を理解し、緩和ケアチームにつないだりもしています。リンクナースと、このチームの要である緩和ケア認定看護師との連携や協働が、患者さんやその家族の安心につながっています。
認知症サポートチーム
認知機能障害による症状によって生活上で支障をきたしている部分に気づき、個々の症状に応じた対応方法の検討を多職種チームで行っています。このチームの要である認知症看護認定看護師は、円滑に治療が受けられるよう調整を行い、個々の相談にも対応します。看護師、介護福祉士やソーシャルワーカーなどとともに、高齢者の心身機能の維持向上のための院内デイケアも開催しています(図4)。
糖尿病スタッフミーティング
糖尿病に関連する多職種でチームを編成しています。糖尿病は特に日常生活での療養が欠かせません。患者さんや家族に向けて糖尿病教室を開催したり、暮らしの中で習慣として療養が続けられるように「教育入院」していただくことで重症化を予防します。その中でも糖尿病看護認定看護師は、糖尿病が引き起こすさまざまな合併症について情報を提供し、早期発見に努めています。特に「足」に関しては、小さな傷でも化膿しやすく、深刻な病状につながることもあるため、スキンケアや爪などのフットケアについて、実践しながらアドバイスしています。
技術を提供する看護サービス・看護外来
多職種でのチーム医療に加えて、看護師主体で行っている患者さん向けの技術提供サービスもたくさんあります。
例えば、「パパ・ママクラス」は、妊婦さんとその家族が出産や育児に参加していただけるように、助産師が育児に関して指導する教室です(図5)。リンパセラピストが行っている「リンパ浮腫(ふしゅ)外来」は、リンパ浮腫に悩む患者さんの苦痛が少しでも軽減できるように、その対策の説明やリンパマッサージなどを施術しています。「ストーマ外来」は、人工肛門や人工膀胱をもった方が不安なく生活を送るために、皮膚・排泄ケア認定看護師を中心とした看護師たちがスキンケアなどの生活指導をしている外来です。
また、弾性ストッキングコンダクターの資格をもつ看護師は、静脈が滞(とどこお)りむくみが出現する静脈機能不全症の患者さんたちに治療用ストッキングの装着について指導しています。乳がん看護認定看護師は、不安や悩みを抱えている患者さんへ専門的な立場から適切なサポートを行っています。最近では「訪問フットケア」も行っています。これは、フットケアチームに所属する看護師が高齢者施設などに出向いて足や爪のケアなどを行う看護サービスです(図6)。
病院から地域に向けて
超高齢社会への突入によって医療ニーズが膨らみ、病院を中心とした医療提供体制では患者さんを十分に受け止めきれないと予測されています。そこで国が出した答えは「在宅」への医療・介護の推進です。「病院から在宅へのシフト」はすでに始まっていますが、短い入院期間で不安を抱えたまま自宅や高齢者施設などの地域に戻る患者さんが、今後ますます増える可能性がでてきました。
当院では、24時間を通して患者さんの最も身近にいる病棟看護師が、退院後も安心して生活が送れるよう、患者さんの自宅に出向いて療養上の指導をする「退院後訪問」も始めています。これは国が推進する、住み慣れた場所でその人らしく人生を全うできることを目的に掲げられた「地域包括ケアシステム」に貢献することにもなります。
また、病態の判断や創傷管理における知識と技術を習得した「特定行為研修修了者」という看護師がいます。その役割は、地域に出向いて、褥瘡などをタイムリーに対処し、重症化を予防することであり、「医療」と「生活」の両方の視点で全体を見通し、地域と病院を「つなぐ」ことです(図7)。
常に予防的な視点に立ち、必要なときに必要なサービスが提供できるよう、医療・看護・介護などと連携をとり、地域においてもチーム医療を展開しなければなりません。「どのような環境であっても、チーム医療の要となって患者さんの暮らしを支援していきたい」。済生会吹田病院の看護師たちはいつもそう考えています。
更新:2024.10.21