キャンサーボード がん専門家が結集してー患者さんの治療を検討しています

四国がんセンター

放射線診断科

愛媛県松山市南梅本町甲

キャンサーボードとは

「キャンサー(Cancer)」は「がん」、「ボード(Board)」は「会議」を意味する言葉で、キャンサーボードとは、個々の「がん」患者さんの診断や治療方針などについて、いろいろな分野の専門家が一同に集い、話し合う会議のことです。一口に「がん」といってもその性質はさまざまで、診断がやさしいものから難しいもの、治療も手術、化学療法、放射線治療、これらの組み合わせ、さらに最近では免疫療法と多岐にわたります。個々の患者さんの症状や病態に応じた最適ながん診療を提供するために、各々の分野の専門家が結集して、意見交換、知識の共有、検討を行う場がキャンサーボードです(図1)。

図
図1 キャンサーボードのシステム

なぜ、キャンサーボードが必要なのでしょうか

がん患者さんの多くは、ある部位のがん(胃がん、大腸がん、乳がんなど)と診断されて、治療のためにがん専門病院に紹介されてきます。診断が確定している場合には、がんができた臓器に関連する診療科で治療法について検討されます。しかし、「どこのがんか不明(いわゆる原発不明がん)」「一度にいくつかのがんが見つかった」といった患者さんも紹介されてきます。

例えば、「首や脇のリンパが腫(は)れて、取って調べたらがんの転移だったが、どこの臓器に発生したがんの転移か分からない」「肺がんと診断されたが、術前の検査で大腸にもがんが見つかった」などです。このような場合には、どのような性質のがんなのか、どこのがんなのか、どこまでがんが広がっているのかをきちんと診断することが大切です。診断ができたら、その上で、その後の治療の優先順位をどうするかなど、治療方針を考えていく必要があります。肺がんと診断されて手術目的で紹介されてきたが、患者さんの状態や病気の広がり方によっては、抗がん剤や放射線治療を優先する方がいい場合もあります。また、他の臓器のがんが見つかり、そちらの治療を優先する方がいい場合もあります。個々の臓器や分野の専門家だけでは、このようなケースに対応していくのは大変困難で、診療科や職種を越えて、広く治療方針を検討する場としてのキャンサーボードが必要になってきます。

当院でのキャンサーボード

以前から、がんの種類ごとに関連する診療科の医師が集まり、術前や術後の症例検討会や化学療法、放射線治療についての検討会(カンファレンス)を各々毎週行っています。

このような検討会に加えて、診断や治療方針の決定が難しいがん患者さんの検討を行うキャンサーボードを開催しています。

具体的には、次の12のグループが毎月交替で症例提示や司会を担当しています。①呼吸器外科、②消化器外科(消化管)、③消化器外科(肝胆膵)、④乳腺科、⑤婦人科、⑥泌尿器科、⑦頭頸科、⑧血液腫瘍(しゅよう)内科、⑨整形外科・形成外科、⑩呼吸器内科、⑪消化器内科(消化管)、⑫消化器内科(肝胆膵)。

さらに、原発不明がん(例えば、全身のリンパ節が腫れて、がんの転移と診断されたが、どこのがんか分からない症例)の相談、治療がいろいろな科で必要ながんの相談を行っています。検討の場では、内科、外科の専門医に加えて、画像診断を専門とする医師や病理診断医も加わって討論します。

「図2」は肝臓やリンパ節に転移があり、内科に紹介受診した患者さんの画像です。当初、どこの臓器が原発か不明だったのですが、キャンサーボードでの検討を経て、咽頭のがんが原発と診断され、その後、抗がん剤を使った治療が開始されました。また、治療が終了した患者さんについても、診断や治療にかかわったスタッフから経過の報告や課題が示され、最善の診療ができたかどうかなどについて、専門外のスタッフも交えて意見交換がなされます。医師だけでなく、看護師や薬剤師、検査技師や放射線技師、臨床心理士など多職種のスタッフも参加しています。このように、病院全体の検討会として、個々の患者さんに最善のがん医療が提供できるように取り組んでいます(写真)。

PET画像
図2 原発不明がんの症例(PET画像):検討の結果、咽頭のがんの全身転移
写真
写真 キャンサーボードの様子:いろいろな領域のがん専門スタッフが集まり討論します

更新:2022.03.10