消化器内科 胃がん・大腸がんの早期発見に貢献!-進歩する消化管内視鏡

中部ろうさい病院

消化器内科

愛知県名古屋市港区港明

最新システムの導入

厚生労働省によると、2018年の日本人の死因で最も多かったのは「がん」で亡くなった人は、約37万人(男性22万人、女性15万人)でした。その中で、胃がんが第3位、大腸がんは第2位と上位を占めており、早期発見・早期診断はがんの予後(*1)を左右する重要な要素です。

当院では、消化器がん(胃や大腸など)の検査用機器として用いる消化管内視鏡については、医療機器メーカーより2020年7月に発売された最新システムを2021年12月に導入予定です。胃がんや大腸がんについて、より確実な診断や治療に貢献できるものと考えています。

*1 予後:今後の病状についての医学的な見通し

消化器内視鏡の主な特徴

1.画像強調観察機能(図1)

特定の光を照射することにより、粘膜表面の毛細血管を強調して表示できる機能です。拡大観察を併用することで、がんの悪性度やがんの範囲を把握する機能が格段に優れたものとなりました。

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図1 画像強調観察で病変部が明瞭に分かります(画像提供:佐野病院)

2.広範囲に焦点のあった画像を構成できる機能(図2)

近距離と遠距離のそれぞれに焦点のあった2つの画像を同時に取り出して合成することで、広範囲に焦点のあった内視鏡画像をリアルタイムに得ることが可能となりました。これにより、検査時間の短縮や病変の診断精度の向上などが期待できます。

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図2 リアルタイムに得られる焦点範囲の広い内視鏡画像(画像提供:オリンパス株式会社)

3.出血部位の視認性を向上させる機能(図3)

3つの異なる波長の光を照射することにより、深部血管や出血部位を目で見たときに、どのような状態なのか把握しやすくなりました。内視鏡治療中に出血をきたした場合など、出血している場所を特定して止血処置を確実に行うことができ、より安全で効率的な治療に役立ちます。

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図3 内視鏡治療・処置に新時代をもたらす新狭帯域光(画像提供:オリンパス株式会社)

4.画像の3要素「構造」「色調」「明るさ」を最適化する機能(図4)

通常観察では発見しづらい、早期のがんや前がん病変(今後がんに変わる可能性があるポリープなど)に対して、この機能を活用することにより、粘膜表面の微小構造変化(*2)や色調変化を把握することが可能となりました。病変の発見率向上に寄与するものと期待しています。

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図4 「構造」「色調」「明るさ」の3要素を最適化する新画像処理機能(画像提供:オリンパス株式会社)

*2 微小構造変化:光学顕微鏡では判別できないくらい細かな構造

早期発見・早期診断が発生リスクを減らす

大腸内視鏡でポリープの大部分を占める腺腫(せんしゅ)を見つける割合を、「大腸腺腫発見率」といいます。

この発見率が高い医師は、大腸がんの危険をより確実に減らし、大腸がんによる死亡も減少していることが報告されました。具体的には、大腸腺腫発見率が1%上がるごとに、大腸がんの発生リスクは3%下がる可能性があるといわれています。

新しい内視鏡システムを利用することにより、がん患者さんの予後を左右する重要な要素である早期発見・早期診断が可能となります。ぜひ、専門機関で消化管内視鏡検査を受けてください。

ピロリ感染を内視鏡検査で確認

胃がんの原因として、明らかなものに「ヘリコバクター・ピロリ感染」があります。国立がん研究センターの報告によると、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している人は、感染していない人に比べ、胃がんを発症する危険性が5倍ほど高くなると報告されています。

ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃酸による過酷な環境下で胃内に生息できる細菌で、感染経路ははっきり解明されていませんが、口から体内に入り込み胃の中にすみつくことが分かっています。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると胃炎が起こり、内視鏡で観察すると「萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)」という特徴的な胃炎がみられます。

萎縮性胃炎は、胃全体が赤くなったり、胃のヒダが太くなったり、胃粘液が増えてネバついていたりといった所見を認めます。内視鏡検査でこれらの所見があった場合は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染を考え、感染があるのかないのかを調べていきます。

感染していることが分かれば、3種類の薬を1週間内服してもらう除菌療法で治療が行えます。ただし、除菌治療の対象は「内視鏡検査によって胃炎の確定診断がなされた患者」となっているので、ヘリコバクター・ピロリ感染に対し、保険診療で治療を受けるには内視鏡検査を受けてもらい胃炎があることを確認する必要があります。胃もたれや胸やけといった胃炎が疑われる症状があれば、専門機関で内視鏡検査を受けてください。

【参考文献】*New England Journal of Medicine.2014;370:1298-1306

消化器内科の特徴

当科では、食道・胃・大腸などの消化管や、肝臓・胆嚢(たんのう)・膵臓(すいぞう)などの消化・吸収にかかわる臓器の疾患を対象に、診断から治療まで幅広い診療を行っています。

可能な限り高度で、体に負担の少ない検査・治療が行えるよう、最新鋭の光学・電子機器を取り揃え、腹痛・下痢といった「よく起こる症状」と関連した疾患を診療しながら、患者さんの「生活の質」を考慮した高度な医療を提供できるよう努力をしています。

更新:2024.01.25