早期がんは内視鏡で治せます!

平塚市民病院

消化器内科

神奈川県平塚市南原

男性は2人に1人、女性は3人に1人が、がんにかかるといわれています

2015年の厚生労働省の統計では、日本人の死因の第1位はがん(29.5%)、第2位が心筋梗塞(しんきんこうそく)などの心疾患(15.2%)、第3位が肺炎(9.4%)となっています。すなわち3人に1人が、がんで亡くなっています。がんになっても、運良く治った人まで含めると、男性は2人に1人、女性は3人に1人が一生涯でがんにかかるといわれています。

がんになったら、どんな治療を行うのでしょう

それでは、がんになってしまった場合、どのような治療を行うのでしょうか?がんの種類によって治療法は異なります。しかし、どのがんにおいても一番大事なことは、「転移」があるかないかです。「転移」とは、がん細胞が、血液やリンパの流れに乗って、違った場所に飛んでいき、がんの巣を作ることをいいます。どのがんも、転移があるかないかによって治療法が大きく変わります。

転移がなければ、がんを残らず切除することが、最も良い治療法です。すなわち、食道がんなら食道、胃がんなら胃、大腸がんなら大腸、と発生場所にまだがんが留まっている状態であれば、がんを切除して治癒を目指す、というのが大まかな治療方針となります。

一方、がんが進行して転移してしまうと、ほとんどのがんでは切除して治すことができなくなってしまいます。がん細胞が体中に飛び散ってしまった後に、それを全部切除することはできないからです。

転移がある状態で病院に来られた場合には、抗がん剤でがんの大きくなる速度を遅くすることにより、元気な時間を少しでも延ばす治療を行います。また、痛みなどの症状が出たら、症状を和らげるための薬剤投与を行う緩和医療が中心となります。

がんの治療をもう少し細かく言うと

がんは時間が経つほど大きくなっていきます。例えば胃がんだと、①胃の内側の表面の粘膜にがんができる→②少しずつ大きくなり、深さが深くなっていく→③とうとう胃の壁を突き破って周囲の臓器に噛みつく→④肝臓など、ほかの臓器に転移していく――というイメージです(図1)。

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図1 がんの進行と治療

④の段階で来院されても、多くの場合は手遅れです。前述の通り、できることは抗がん剤による延命治療か、緩和医療のみです。③や②の段階での来院の場合は、外科手術で胃を取ることでがんを治せるかもしれません。しかしお腹(なか)に大きな傷がつき、術後の体力低下も著しいものとなります。一方、①の段階で来院されると、内視鏡でがんを剥(は)がし取るだけで、完全にがんが治る可能性があります。内視鏡での手術なら、手術後もそれまでと全く変わらない暮らしができます。

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写真1 当院の内視鏡室

繰り返しになりますが、がんもごく早期に発見できた場合には、内視鏡のみで治すことができる可能性があり、しかも体へのダメージも少なくてすみます。

当院では、最新の内視鏡機器を使って早期のがんを見つけます

年々、内視鏡機器は進歩し、画像も良くなっています。なるべく早い段階でがんを発見するために、当院では最新の機器を導入し、専門の医師が検査を行っています。最近では、5mm以下の小さながんも多く発見されるようになりました。

内視鏡手術(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)

内視鏡でがんを剥がす手術を「内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)(略してESD)」といいます(図2)。この15~20年で急速に発達してきた治療です。

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図2 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

以前は、早期のがんもお腹を開いて、外科手術で切除するしかありませんでした。私たち内科医は、がんを見つけ、手術のための検査を実施し、準備万端整えて、外科の先生に手術をお願いしてきました。しかし、現在では、早期がんを診断した内科医自身が、ESDという低侵襲(ていしんしゅう)な(体に負担の少ない)内視鏡技術を用いて、がんの切除ができるようになりました。

ESDのイメージ

食道、胃、大腸などの食事の通り道を「消化管」といいます。現在、消化管の早期がんはESDで治せる可能性があります。口あるいは肛門から内視鏡を入れ、消化管のがんの所まで内視鏡を進め、ESDを行います。具体的なESDのイメージは次の通りです。ここでは早期大腸がんを例に挙げます。

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写真2 ESDのイメージ

「写真2a」は大腸の早期がんの画像です。矢印で囲まれた部分が、がんです。早期がんは、このように平たく薄い形をしていることが多いです。がんのすぐ下に液体を注射し、がんを浮き上がらせてから、がんの周囲に切れ込みを入れていきます(写真2b)。そして、内視鏡先端から電気メスを出して、少しずつがんの裏を剥がしていきます(写真2c)。薄く円盤状に剥がした後の傷あとが「写真2d」です。「写真2e」は剥がして取り出した早期大腸がんです。このようにして内視鏡でがんを剥がすことで、お腹を開くことなく、切除することができます。

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写真3 ESDの様子

当院は豊富なESDの経験を持っています

当院ではESDの経験が豊富な医師が複数常勤しており、非常に高い治療技術、治療症例数を誇っています。ぜひ当院にて、がんを早期のうちに剥がして治してください(図3)。

グラフ
図3 当院におけるESDの治療件数

更新:2024.01.25