大腸がんって、どんな病気

いわき市医療センター

消化器内科

福島県いわき市内郷御厩町久世原

大腸の役割

大腸は、小腸に続いて右下腹部のバウヒン弁から始まり、お腹(なか)の中を時計回りに回って、肛門につながっていきます。長さは1.4~2mの臓器で、大きく結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)、直腸(直腸S状部、上部直腸、下部直腸)に分けられます。

大腸は主に水分を吸収しますが、各種栄養素の消化吸収作用はほとんどありません。大腸を通過する食物残渣(しょくもつざんさ)は、水分を吸い取られ、肛門に至る際にだんだんと固形の便になっていきます。大腸での水分吸収不良があると、軟便になったり、下痢を起こしたりさまざまな症状をきたします。

増加傾向の大腸がん

2017年度の統計によると、大腸がんの関連死は男性では肺がん、胃がんに次いで第3位、女性では乳がんを抜いて第1位となり、近年増加傾向にあります。大腸がんと新たに診断される人は、1年間に約10万人当たり100人で、40歳代から増加し始め、50歳代で加速され、高齢になるほど高くなります。罹患率(りかんりつ)の男女比は、男性では1年間に10万人当たり121人、女性では86.4人とやや男性に多い傾向があります。大腸がんの発生は、生活習慣とかかわりがあるとされており、高脂肪食、低繊維など、いわゆる食の欧米化が国内の罹患率の増加に関与していると考えられています。また飲酒や喫煙、運動不足、メタボリックシンドロームなどが大腸がんを発生する危険性を高めると考えられています。

症状と検査

排便時出血、下血、便秘、下痢などの排便障害、腹痛など、大腸がんに特異的ではありませんが、発見の契機となります。また、近年免疫学的便潜血検査、人間ドックなどの検診により無症状のうちに発見されることが多くなっています。

以前は注腸造影検査を主に行っていましたが、現在では内視鏡機器の進歩により、スクリーニング、精密検査は大腸内視鏡検査が選択されています。それにより微小な早期がんの発見も可能となっています。

病態

大腸がん発生経路は主に、腺腫(せんしゅ)などの腫瘍性(しゅようせい)ポリープから発生する経路と、粘膜から直接発生する経路とおおまかに2通り考えられています。いずれの大腸がんも一般的には粘膜か粘膜下層、筋層、漿膜(しょうまく)へと浸潤(しんじゅん)し、血管やリンパ管を介してリンパ節、肝臓、肺に転移する場合があります。粘膜内、粘膜下層にとどまるものを早期大腸がんとし、それより深く浸潤したものは進行大腸がんと考えられています。

消化器内科的治療――内視鏡的切除術とは

とりわけ粘膜内および粘膜下層に一部浸潤したがん(1㎜未満)は、内視鏡的切除術の治療の適応となります(図1)。それより深く浸潤したものは、リンパ節郭清(かくせい)を伴う外科的治療の適応となり、遠隔転移を呈するものは外科的治療+がん化学療法、ないしはがん化学療法の対象となっています。

イラスト
図1 内視鏡治療の対象

前述のように腫瘍性ポリープはがん発生の母地(ぼち)となりうるため、ある程度の大きさになると内視鏡的切除が必要となってきます。切除法としては内視鏡的ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術が一般的です(図2)。内視鏡的切除はとても大きな粘膜内がんや平坦な腫瘍では切除不能で、外科的切除が余儀なくされてきました。しかし最近では粘膜下層剥離術(ねんまくかそうはくりじゅつ)(ESD)により、さらに大きな平坦腫瘍や巨大な粘膜内がんも内視鏡的に切除が可能となりました(図3)。

フローチャート
図2 内視鏡的治療の実際
フローチャート
図3 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の手順

いずれの方法においても切除された病変は、病理組織学的検査により精密検査を行い、内視鏡切除で根治(こんち)しているかどうかを判断します。治療前にリンパ節転移や血管への浸潤、粘膜内がんの可能性は低いと考えられていた病変であっても、実際の顕微鏡検査では病変が粘膜下層の深くまで浸潤していたり、顕微鏡でしか判断できないリンパ管や血管にがんが入り込んでいることがあります。その場合は、外科と連携し外科的切除が必要となってきます。

更新:2024.01.25