次世代へ向けての放射線治療

いわき市医療センター

放射線治療科

福島県いわき市内郷御厩町久世原

リニアック装置について

はじめに、簡単に当院における放射線治療の歴史について紹介します。1963年にコバルト照射装置で放射線治療を開始しています。1980年に常勤放射線専門医によって放射線病棟を完成させ、33床の専用ベッドとリニアック装置、ベータートロンを導入し放射線治療を行っていました。その後、リニアックを2度ほど更新し、2005年に常勤放射線専門医が退職となり、東北大学病院放射線治療科より非常勤医師を派遣してもらい放射線治療を行っていました。2018年12月25日、「いわき市医療センター」と名称が変わり、2019年1月から常勤放射線専門医が勤務する運びとなりました。

放射線治療とは、細胞にエネルギーの高い放射線を照射することで機能停止や破壊する効果を利用した、がん治療法の1つです。放射線治療専門医が治療計画を立て、がんの部位、大きさ、照射方向、治療回数を決定したのち、エネルギーや当て方を工夫して必要な部位に照射を制限して治療を行います。

今回導入したリニアック装置は、発展し続けている次世代の放射線治療に対応するために開発されたものです。定位放射線治療や強度変調放射線治療(IMRT)などの高精度治療を、安全かつ高精度で短時間に行うことが可能となりました。

イラスト

IGRT(画像誘導放射線治療)について

高精度放射線治療などのときに補助技術として行うのがIGRTです。高精度放射線治療では、小さながん腫瘍(しゅよう)に放射線を当てる場合や正常組織にがん腫瘍が隣接している場合があるため、放射線を当てる位置決めが非常に大切です。IGRTを行うために、リニアック装置に位置合わせ専用装置OBI(On Board Imager)を搭載しています。OBIは、寝台の患者さんの正面と側面のkV-X線画像(レントゲン)を撮影することで、患者さんの位置を理想の場所へと移動させます(遠隔操作により、寝台を動かして位置の微調整を行います)。

また、OBI装置はCT(Cone beam CT/CBCT)を撮影することも可能であり、kV-X線画像では見えにくい軟組織による位置合わせも可能にします(3Ⅾ照合)。つまり、IGRTはIMRTやSBRT(体幹部定位放射線治療)などの高精度放射線治療をより高い位置精度で行うための技術であり、がん腫瘍以外の正常組織に放射線が当たることを最小限にし、治療を行うことができます。

治療開始直前に治療装置に搭載されているOBIでkV-X線画像を撮影します。撮影画像と治療計画用CT画像から再構成した画像と位置合わせを行います。この技術により、治療直前に撮影した画像から現在の治療部位の正確な位置を確認し、微調整が可能です(2Ⅾ/2Ⅾマッチング)。つまり、スピーディーに、そして高い精度で位置を合わせて治療を行うことができます。

動体追跡について

動体追跡システムとは、呼吸などによって体内で静止しない肺や肝臓などの部位に放射線治療をする際に、正常組織への放射線照射を避け、がん組織のみにピンポイントで照射できるようリアルタイムで患部の位置を捉えるシステムです。リニアック装置と組み合わせて使用します。

リニアック装置と連動し、最適なタイミングで放射線を照射させるようにコントロールすることで、がん組織のみに効率良く放射線を照射でき、正常組織への線量を大幅に低減できます。

更新:2024.01.25