最先端の治療とチーム医療で重症症例に対応 進化し続ける集中治療室

大垣市民病院

麻酔科

岐阜県大垣市南頬町

集中治療室の役割

集中治療室は、負担の大きな手術後や全身状態の悪い患者さんの全身管理を行う場所です。また、体外循環装置、人工呼吸器、人工透析などを要する重症症例の患者さんが入室されます。救急搬送や手術件数に比例して多くなり、年間1,000人以上の患者さん(2018年度/年間1,591例)の治療に当たっています。

当院の集中治療室は1965年に新設、1988年の増改築工事を経て、役割を果たしてきました。新設当時より最先端の治療が行われ、特に、先天性心疾患や体外循環による治療は、大垣市民病院の強みでもあります。

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写真1 補助循環装置とモニター

体外循環とは、心臓や肺の代わりをしてくれる装置(膜型人工肺)を使って、体の循環を保つ方法です。心臓手術以外で膜型人工肺が実用化されたのは1970年代で、当時は呼吸補助の装置として試行錯誤が行われていました。そして、徐々に心臓の補助装置としても使用されるようになりました。また、導入には外科的手技を必要としていましたが、針を刺して血管に太い管を入れることで、体外循環を導入することができるようになりました。心臓や肺が機能しなくなったときに、緊急対応で使用することができるようになったわけです。

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写真2 人工心肺を使用した救急搬送(小児)

当院では1989年5月に、初めて急性心筋炎の治療に体外循環が使用され、その治療に成功したときから歴史が始まっています。1992年には1歳の子供の蘇生にも成功しています。早期に最先端の医療を取り入れ、研究し、チームの力によってその治療を完遂する文化は、この集中治療室で培われてきました。

2016年の改修工事を経て、質の高い集中治療ができる特定集中治療室の施設基準をクリアしました。高度急性期医療を提供する病院の中枢機能として、集中治療室は進化し続けています。

集中治療室の発展

歴史ある集中治療室の在り方も、少しずつ変化しています。従来の医療がそうであったように、集中治療室でも主治医主体で治療を行い、必要に応じて他分野の専門医やコメディカル(薬剤師や技師などの医療関係者)に相談しながら、治療を進めていくという形をとっていました。しかし、集中治療室で行われる急性期治療は幅が広く奥も深く、とても医師だけで網羅できるものではありません。さらに、近年の医療機器や技術の発展が目覚ましく、さまざまな専門家の知識が必要となっています。

2018年11月より麻酔科医が中心となって、医師、薬剤師、看護師、臨床工学技士、理学療法士、言語聴覚士らが集まり、毎朝多職種カンファレンスを行うようになりました。多職種で情報共有することで、より高度な治療戦略を立てることが可能となったのです。まさに、「チーム医療」で患者さんの治療にあたっています。

医療機器は日進月歩で進化しており、さまざまな機器が開発されています。酸素の値を見るだけでも画期的な発明であった時代から、まるで宇宙船のように複数のモニターが並ぶ時代に変わりました。それらを見る目を養うとともに、患者さんに触れて診(み)るという原点を忘れずに、進化し続けたいと思います。

集中治療室の展望

集中治療では、「チーム医療」を実現することが最も重要です。当院には、優秀なコメディカルスタッフが多数在籍しています。大垣市民病院の集中治療室は、それら多くのコメディカルスタッフによる「裏方仕事」で成り立ってきました。最先端医療の実現も、その盤石な裏方仕事がなければ成立しないのです。そして、それは今後も変わらず、むしろその役割は大きくなっていくと考えています。

これからは、そういったコメディカルに最前線で活躍してもらい、能力を存分に発揮できるような環境整備を進めたいと思います。また同時に、後進の教育にも力を入れていきます。現在、看護師のカンファレンスで医師がミニレクチャーを行い、知識の向上を図っています。また、研修医がローテーションすることで、若い医師が集中治療を学ぶ下地もでき始めています。そういった取り組みを増やし、コメディカルと医師との間で相互に勉強会を開催してレベルアップを図り、集中治療の質をさらに高めていく予定です。

医師も麻酔科に限らず、さまざまな診療科から集中治療医を目指せる環境をつくりたいです。麻酔科医、内科医、外科医、小児科医が集中治療医となり、チームの一員になるような大垣市民病院独自の「集中治療チーム」をつくることを理想としています。そんなチームに魅了される医療関係者が全国から大垣市民病院に集結するような未来予想図を描き、「最高のチームをつくる」という壮大な夢と希望を持って、今後も発展していきます。

更新:2022.03.08