ピロリ菌除菌で胃がん予防!

済生会吹田病院

消化器内科

大阪府吹田市川園町

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)とは

ヘリコバクター・ピロリは1983年に発見された細菌で、乳幼児期に家族内で口から口へ感染することが多いとされています。ピロリ菌は胃粘膜に感染し胃炎を起こします。慢性的な胃の炎症が続くと、胃がんを発症する危険が高くなり、1994年に世界保健機構(WHO)から、ピロリ菌は胃がんにおける第一級の発がん因子と認定されました。ピロリ菌を除菌すると胃炎が改善し、胃・十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)や胃がんなど、ピロリ菌に関連する病気の予防につながることから、原則感染者全員が治療対象になります。

ピロリ菌の診断と治療

ピロリ菌の診断と治療を保険診療で行えるのは、2000年から①内視鏡または造影検査において胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者さん、2010年から②胃MALTリンパ腫(しゅ)の患者さん、③特発性血小板減少性紫斑病の患者さん、④早期胃がんに対する内視鏡治療後の患者さん、2013年からは⑤内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者さんで、ヘリコバクター・ピロリ感染が疑われる場合が承認されました。それを機に当院でもピロリ菌の除菌治療を受ける患者さんが増加し、1000人を超えています。

ピロリ菌の除菌治療では、胃薬と抗生剤2種類を1日2回(朝夕)1週間服用します。副作用は下痢、軟便、味覚異常、皮疹(ひしん)、全身倦怠感(けんたいかん)などありますが、服薬が終了すれば改善することが多いです。

除菌判定と当院の治療成績

除菌の成否は、除菌薬服用終了後8週間以上経過してから尿素呼気試験や便中ピロリ抗原検査で判定します。当院の1次除菌成功率は約84%です。1次除菌失敗の主な原因は、クラリスロマイシン(以下CAM)耐性(CAMが効きにくい)ピロリ菌の増加です。日本ヘリコバクター学会の2000年全国集計ではCAM耐性率7%でしたが、その後約10年で約30%に急上昇しており、当院でも最近では35%を超えています。CAM耐性の場合、従来の胃薬では1次除菌成功率は約50%ですが、新しい胃薬のボノプラザンでは80%を超える除菌成功率で、抗生剤と組み合わせることが重要です。

当院では、まず上部消化管内視鏡検査で胃に潰瘍やがんなどがないか確認し、できるだけピロリ菌培養検査で薬剤感受性を確認してから除菌治療を行うことで、除菌成功率を上げるようにしています。1次除菌不成功の場合でも2次除菌まで保険適用になり、当院の2次除菌成功率は約88%です(表)。ペニシリンアレルギーや2次除菌失敗、どうしても上部消化管内視鏡検査を受けたくない方は、自費診療になりますがピロリ専門外来で対応しています。

  総数 1次除菌 2 次除菌 3 次除菌 ペニシリンアレルギー
除菌処方を受けた人数 1315 986 282 36 11
除菌判定を受けた人数 1216 918 258 31 9
除菌成功した人数 1032 772 227 27 6
除菌成功率(%) 84.9 84.1 88.0 87.1 66.7
表 当院でのピロリ菌の除菌成功率(2015年3月~2017年9月)

ピロリ菌の除菌に成功しても胃がんの予防効果は100%ではないので、定期的な上部消化管内視鏡検査をお勧めします。

更新:2024.10.08