認知症について
済生会吹田病院
精神科
大阪府吹田市川園町
増加する認知症患者
国内では現在65歳以上の高齢化率は25%を超えています。高齢者人口の約15%が認知症といわれており、約540万人にのぼります。
認知症とは「一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態」を指します。基本的には慢性的な経過をたどり、記憶障害や認知障害が生じ、さまざまな症状となって現れます。認知症にはいくつかの種類がありますが、主なものとして、アルツハイマー型認知症(50~60%)やレビー小体型認知症(15~20%)、血管性認知症(約15%)などがあります。それぞれ症状や経過に特徴があり、治療法も異なってきます。
認知症の症状と治療
認知症の症状として記憶障害があります。記銘(きめい)(憶える)、保持(忘れないように記録)、再生(必要時に取り出す)、再認(間違いがないか確認)、これらのすべてがスムーズに流れることを記憶といいます。認知症の記憶障害は記銘障害から認められることが多く、次第に全記憶障害となっていきます。
認知症はさまざまな症状が生じ、中核症状とBPSD(行動・心理症状)の2つに分けられます。中核症状には、記憶障害、見当識障害(時間や季節感、場所の感覚が分からなくなる)、理解・判断力の障害(同時に複数のことが処理・理解できなくなる、些細な変化に混乱しやすくなる)、実行機能障害(計画を立てたり、段取りをすることができなくなる)があります。BPSDとは認知症をもつ人々に起こる心理的な反応、精神症状や行動などを指すものであり、うつ、アパシー(無関心)、興奮、不穏、暴言、妄想、幻覚、徘徊、脱抑制、不潔行動、異食行動など人によってさまざまです。
ほとんどの認知症の治療は、進行をどのように食い止めていくか、どのように生活に支障が出ないようにするか、進行の仕方を予測して介護プランをどのように立てていくか、といったことがメインになってきます。
まず、進行を食い止める手段として抗認知症薬があります。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症は、進行を抑制するような薬物療法が可能です。
ほかの手段としては機能維持のためのリハビリテーションがあります。つまり、「頭と体をよく使って、刺激・メリハリのある生活を送る」ということです。出歩いたりすることが難しい人でも、介護保険でデイサービスを利用するといった方法もあります。
認知症の治療は、早期介入・早期治療開始が望ましいことに加え、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)、脳腫瘍(のうしゅよう)、甲状腺機能低下症といった原因を取り除くことで改善することもあるため、認知症かな?と自分で感じる、または家族に指摘されたといった場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
更新:2022.03.08