口腔がん早期発見のための口腔がん検診の必要性と重要性

済生会吹田病院

歯科口腔外科

大阪府吹田市川園町

口腔がんは増加傾向で、しかも予後不良

国内における口腔(こうくう)がんの患者数は、1975年には約2100人でしたが2005年には約6900人に増加し、2015年には約8000人が口腔がんになっています。高齢化に伴い増加傾向にあり、また若年層の患者数も増加しているといわれています。自分の目で見える部位にできることが多いがんにもかかわらず、口腔がんの3人に1人は、かなりがんが大きくなってから医療機関を受診する事実も存在します。

がんが大きくなってからの場合、首のリンパ節に転移していることが多く、さらにはほかの臓器に遠隔転移しているケースもあります。がんが進行すると、手術療法のみでなく放射線療法や化学療法を取り入れた集学的治療が必要となり、治療自体も複雑になります。

一般的にがんのステージが進むにつれて予後が不良になるのは明らかで、治癒率および死亡率に大きく影響します。前述したように、口腔がんは見つけやすいがんですが、いまだ進行がんが多く、その生存率は全がんの平均より低いといわれています。

口の中を意識することで早期発見が可能な口腔がん

口の中の異変は、口を開けて見て触るだけで、ある程度見つけることができます。そのため普段から自分自身の口の中の違和感に気づき、近隣の歯科医院を受診することが大切です。また身体が不自由だったり、介護施設に入所していたりするため歯科医院を受診できない方は、施設の介護士や看護師が口の中の異変に気づくことで、近隣の専門的な医療機関への紹介が可能になります。

このように日常からご自身で口の中を意識する、またご自身で意識できなくても介護士や看護師による日常の口腔ケアで口の中を観察することにより、早期に口の中の異変を察知することができます。そうすることで白板症(はくばんしょう)、紅板症(こうばんしょう)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)のような前がん病変や口腔がんであった場合でも早期に見つけることが可能で、早期治療につながります。口の中のできもの、前がん病変および口腔がんは、肉眼で直視できる数少ない病変です。特に口腔がんの場合には、早期に見つけることができればできるほど治癒率は高く死亡率は低くなります。

口腔がん検診の役割と重要性

前述したように口腔がんの死亡率を改善するには、治癒を期待できる病変をできる限り早期に発見し、できる限り早期に治療することが重要となります。早期発見することで死亡率を改善するだけでなく、低侵襲(ていしんしゅう)治療(体への負担が少ない)ができます。治療後のQOL(生活の質)を向上するだけでなく、治療費による経済的負担も軽減することになります。

では口腔がんを早期に発見し、早期に治療するにはどうすればいいでしょうか?そこで口腔がん検診が大きな役割を担うことになります。

フローチャート
図 口腔がん検診の意義

口腔がん検診の利点は、口腔がんが肉眼で直視できるがんであり、特別な機器を必要とせず、低侵襲で見つけることができる点です。また検診自体の時間も短く、場所もとらず、繰り返して実施することも可能です。

口腔がん検診を行うことで、口腔がんを早期に発見・治療し、その結果、国民の健康増進および医療費負担軽減に貢献できると考えています。

最後になりましたが、口腔がんを早期発見し早期治療するには、まず定期的に最寄りの歯科医院を受診することをお勧めします。その上で口の中にあやしい病変がある場合は、より専門的な医療機関を紹介してもらいましょう。

更新:2024.10.29