脳梗塞:脳梗塞急性期の治療

札幌孝仁会記念病院

脳神経外科

北海道札幌市西区宮の沢

脳梗塞とは?

脳梗塞(のうこうそく)とは、脳の血管に血栓(けっせん)(血の塊(かたまり))が詰まり、その先にある脳組織が壊死(えし)する病気です。低酸素状態に陥った神経細胞は、その程度と時間に比例してどんどん死滅するため、早期発見・早期治療が重要になります。

脳梗塞の発症から数時間以内で血流を再開させれば、症状が回復する可能性があります。血流を再開させる方法として、t-PA療法と血栓回収療法があり、患者さんごとに方法を選択して治療を行います。

薬物療法と手術療法

脳梗塞急性期(※)において、血流を再開させる方法としてt-PA療法(薬物療法)と血栓回収療法(手術療法)があります。

t-PA療法とは、脳の血管に詰まった血栓を溶かす薬で血流を再開させる治療法です。発症4.5時間以内まで使用可能であり、既往歴や血液検査など条件を満たす場合に受けることができます。従来の治療法に比べて後遺症が軽くすんだり、後遺症なく退院できたりすることがあります。

しかし、t-PA療法は血流が再開する率(再開通率)が低い(約30〜40%)ことや適応が限られていることが問題点として挙げられます。t-PA療法による症状の改善が認められない場合やt-PA療法の適応外で、脳の太い動脈が詰まっている場合には、血栓回収療法を行うことが推奨されています。

血栓回収療法による治療では、詰まった血管を再開通させる確率は約80〜90%、治療後に身の回りのことを自分でできるようになる確率は約50〜60%とされています。当院でも、該当する患者さんに対して積極的に血栓回収療法を行っています。

低酸素状態に陥った神経細胞は、その程度と時間に比例してどんどん死滅するため、いずれの治療も可能な限り早期に行うことが重要になります。しゃべりにくい、手足の動きがおかしいなどの症状があれば、様子をみずに速やかな受診をお勧めします。

(※)急性期:病気を発症後、14日以内(目安)。不安定な状態

チャンスのある手術療法血栓回収療法

血栓回収療法は、国内では2010年10月に認可された治療法であり、内頸動脈(ないけいどうみゃく)・中大脳動脈・脳底動脈などの頭の大きい血管に詰まった血栓をさまざまな機器を使い、ひとかたまりにして取り除くことを目的としています(図1、写真1、2)。使用する機器には吸引型とステント型があり、部位や血栓など状況に応じて機器を選択して行います。

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図1 血栓回収療法のイメージ
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写真1 血栓回収療法の血管撮影像
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写真2 回収された血栓

時間の制約は主に最終健常時刻(最後に元気な姿が確認された時間)から6時間以内となっていますが、臨床症状や画像評価の条件を満たしていれば、最終健常時刻から6時間を過ぎても、24時間以内であれば血栓回収療法が可能といわれています。

ある日、朝起きた際に症状に気づいた場合でも、条件を満たせばチャンスのある治療法、それが血栓回収療法になります。

当院における脳卒中の救急医療に対する取り組みと目標

脳梗塞急性期において、t-PA療法や血栓回収療法による治療で助かる患者さんは増えています。しかし、治療を受けられる患者さんは全体の一部に過ぎず、いまだ大きな課題となっています。しゃべりにくさや手足の動きがおかしいなどの症状を自覚した際には、一刻も早く医療機関を受診することが大切です。

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図2 脳梗塞の症状

当院では、1年365日24時間体制で脳卒中の救急医療に取り組んでいます。少しでも早く検査して治療を行うことで、1人でも多くの患者さんを助けることを目標としています。治療だけではなく、リハビリテーションを早期から行い、必要に応じて複数の診療科や医療従事者による治療を行うことで、安心して生活できる状態をめざして一緒に病気に立ち向かっていきます。

更新:2024.07.29