心不全:心不全患者さんをチーム医療でサポート

札幌孝仁会記念病院

循環器内科

北海道札幌市西区宮の沢

HSTとは?

2018年に発表された日本循環器学会からの最新のガイドラインで、心不全(しんふぜん)とは「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されています(図1)。心不全は、いったん発症すると、何度か急な悪化を繰り返しながら、徐々に病気が進んでいきます(図2)。心不全の治療では、なるべく病気の悪化を抑えて、病気をコントロールしながら上手に付き合っていくことが大切です。

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図1 心不全の症状
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図2 心不全「病みの軌跡」

当院では心不全の治療・生活を支援するために2019年から心不全診療サポートチーム(HST)を結成しました。また症状を軽くする緩和ケアや、人生の計画(事前指示)など、それぞれの人生の価値観に寄り添った人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)も重要視しています。

「チーム医療」の必要性

心不全の症状に対しては薬物療法や手術が行われます。これらの治療を行っても症状が改善しない場合には、両心室ペースメーカー、補助人工心臓、心臓移植などを検討します。

専門的な治療とともに、患者さん自身の日常生活の管理がとても大切です。そのために当院では「心不全診療サポートチーム(HST)」が委員会として活動し、個々の患者さんに合った診療を提供するよう努めています(図3)。心不全の治療で重要な薬物療法、食事療法、運動療法、日々の体調管理、また疾患だけでなく生活や社会的な支援も含め、各専門職がチーム一体となって、”心不全再入院を防ぐ”を合言葉に診療にあたっています(図4)。心不全の悪化を予防するためには、患者さんと家族が協力しながら生活することが大切です。

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図3 心不全診療サポートチーム
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図4 地域連携

一歩進んだ心不全治療

日常生活と関係の深い心不全。自己管理が必要です。でも難しい……。そこで、上手に付き合うためのコツがあります。例えば、①薬を飲み忘れない、②塩分を控える(漬物は甘口!)、③適度な運動(適度ってどのくらい?)、④禁煙・節酒(お酒は飲んでいいの?)、⑤感染予防、⑥悪化の症状を認めたら相談する(症状って?)

それぞれのコツについて、資格を持つ心不全の専門職(療養指導士)が力になります。また病気や治療、日常で気をつけてほしい情報をまとめた『心不全手帳』(日本心不全学会、2022年10月第3版)を患者さん全員に提供し、利用してもらっています。

当院では心臓リハビリテーション学会認定の心臓リハビリ指導士、日本循環器学会認定の心不全療養指導士を毎年複数受験・合格・輩出しており、そのためのサポートをHST委員会が中心となってになっています。

こんな人生にしたいという希望

心不全を発症しても、適切な治療によっていったん症状は良くなりますが、心不全そのものが完全に治ることはなく、だんだんと進行することで悪化します。重症化してしまった患者さんでは、適切な治療を受けなければ、2年以内に50%が亡くなるといわれています。

QOL(生活の質)を向上するアプローチである緩和ケアの要素も取り入れながら、心不全チームで力を合わせて、より良い心不全診療に努めていきたいと考えています。

アドバンス・ケア・プランニングとは、意思決定能力が低下する前に、患者さんや家族が望む治療と生き方を医療者が共有し、事前に対話しながら計画するプロセス全体を指します(図5)。心不全は良くなったり悪くなったりを繰り返すため、あとどれくらい生きられるかの予測が困難です。それゆえ、あらかじめ今後のことを話し合うプロセスであるアドバンス・ケア・プランニングが重要といわれています。

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図5 人生会議
アドバンス・ケア・プランニング

当院では、心不全チームで包括的な評価を行い、適切な心不全治療を継続しながら、アドバンス・ケア・プランニングや症状の緩和に努めています。

更新:2025.02.06