転移で発見される「がん」:「がん」が転移で発見されたら

札幌孝仁会記念病院

腫瘍内科

北海道札幌市西区宮の沢

「がん」の診断

健診や人間ドック、患者さんの自覚症状、皮膚のしこりやリンパ節など、さまざまなきっかけで「がん」が見つかります。「がん」が原発巣(最初にがんが発生した病変)ではなく、転移巣で見つかることもあります。

転移巣で見つかった場合、いろいろな検査を組み合わせて、原発巣を探します。原発巣が特定できれば、原発臓器がんに応じた治療を行います。しかし、原発巣がわからない場合は「原発不明がん」という診断になり治療します。

原発巣を探す検査法

さまざまな検査を組み合わせて、原発巣を探します(図1)。具体的には以下の検査を行います。

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図1 症例のPET-CT画像(前額断)
全身のリンパ節(頸部、腋窩(えきか)〈わきの下〉、縦隔、腹部、鼠径部(そけいぶ)など)にPETの異常集積を認めます。リンパ節生検の病理検査の結果、リンパ腫と診断されました
  • 身体所見(耳鼻科・乳腺外科・婦人科・泌尿器科の診察を含む)
  • 全血球計算(血算)・生化学検査・腫瘍(しゅよう)マーカーの血液検査や尿検査、胸部写真
  • 頭頸部(とうけいぶ)・胸腹部・骨盤を含む造影CT検査など
  • FDG-PET(ペット)検査
  • 上部消化管内視鏡検査や下部消化管内視鏡検査など
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図2 転移で発見された「がん」の診断・治療の流れ

診断の決め手は生検組織を用いた病理検査

①から⑤までの検査を踏まえて、病理検査(顕微鏡で細胞を詳細に見る検査)を行います。病理検査のために、患者さんの体への負担が小さい、アプローチしやすい転移巣から腫瘍組織を採取します(「生検」といいます)。

得られた腫瘍組織を用いた病理検査によって、がんかどうかの診断、原発臓器の推定などを行います。そのため、病理検査では通常の顕微鏡検査に加えて、免疫組織化学染色という、がんに特別に発現しているタンパク質を調べる検査も実施します。がんの遺伝子検査を併用することもあります。

原発不明がんの治療

種々の検査の結果、原発巣が特定できれば、原発臓器がんに応じた治療を行います。しかし、原発巣がわからない場合は「原発不明がん」という診断になります。原発巣がわからなくとも、臨床的に特定のがん種の転移が疑われれば、そのがん種に応じた治療を行います。

また、「原発不明がん」の中で「予後(今後の病状についての医学的な見通し)良好なグループ」に入れば、それぞれのグループに応じた治療を行います。一方、「予後良好なグループ」に入らない場合は、プラチナ製剤と呼ばれる抗がん薬を含む化学療法が実施されることが多いです。

更新:2024.07.29