子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん:患者数が増えている婦人科がん
札幌孝仁会記念病院
婦人科
北海道札幌市西区宮の沢

子宮と卵巣のしくみ
女性の子宮は、女性の下腹部にあり洋梨を逆さまにしたような袋状の形の器官です。上部3分の2を子宮体部(しきゅうたいぶ)、下部3分の1を子宮頸部(しきゅうけいぶ)といいます。子宮体部の両側に卵管が伸び、その先に卵巣(らんそう)があります。また卵巣からは卵胞(らんほう)ホルモン(エストロゲン)や黄体(おうたい)ホルモン(プロゲステロン)という女性ホルモンを分泌します。これによって排卵が起こり月経周期は整います。
婦人科がんの最近の動向
最近、日本では「図1」に示すように子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんはいずれも増加傾向です。子宮頸がんは30〜50歳代に多く発生し、多くは性行為で感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)に関与しています。

(国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん罹患モニタリング集計〈MCIJ〉、全国がん登録)をもとに作図)

ウイルスの感染を予防するHPVワクチンは12〜16歳の女性を対象に国の定期接種となっていますが、現在ワクチン摂取率が低下しているため、がんの発生に歯止めがかかっていません。子宮頸がんは前がん病変(今後がんに変わる可能性がある部分など)の状態で治療することで、子宮を温存し将来子どもを産むことができます。そのためにはHPVワクチンの接種と、20歳を過ぎてからの定期的ながん検診で、早期発見、早期治療することが大事になります。
子宮体がんの発生は10年の間に2倍以上に増加しています。子宮体がんの好発(高い頻度(ひんど)で発生)年齢は、子宮頸がんに比べてやや高齢で、50〜60歳代とされています。
子宮体がんの発生には、卵胞ホルモン(エストロゲン)という女性ホルモンが深くかかわっています。出産したことがない、肥満、月経不順のある方に多く発生するといわれています。
卵巣がんは小さいうちは無症状で経過し、お腹(なか)が張って苦しくなり、下腹部痛が出てから見つかることが多い病気です。卵巣がんも最近では増加しており、超音波検査やMRI検査、腫瘍(しゅよう)マーカーなどを組み合わせて診断します。治療は手術療法が原則です。その多くは術後に抗がん剤による化学療法や新しい分子標的治療薬(ぶんしひょうてきちりょうやく)を使用し、治療成績の改善が期待されています。
更新:2025.02.06