からだの負担が少ないがん治療をみなさまへ

釧路孝仁会記念病院

札幌高機能放射線治療センター

北海道釧路市愛国

孝仁会グループでは、場所、医療機関、医療スタッフなどの境目を越えて、スムーズで切れ目のない医療を提供し、医療の質の向上をめざしています。

札幌高機能放射線治療センター(通称SAFRA(サフラ):SAPPORO High Functioning Radiotherapy Center)は札幌市西区宮の沢にて、脳卒中(のうそっちゅう)・心臓病・がんの三大疾病と運動器疾患の治療を行う、社会医療法人孝仁会の旗艦(きかん)病院である札幌孝仁会記念病院の放射線施設です。

札幌孝仁会記念病院では集学的がん治療(外科的手術、化学療法、放射線治療)の提供をめざしており、当施設ではその中の放射線治療を担っています。陽子線治療・サイバーナイフ・トモセラピーという3種類の最新の放射線治療装置を備えており、それぞれの特徴を生かした治療を提供しています。この中でも最近注目されている「陽子線治療」について紹介します。

写真
札幌孝仁会記念病院 最新型スキャニング照射専用陽子線治療装置

陽子線治療

放射線によるがんの治療は、X線や電子線を用いた治療が主流でしたが、近年、がん周辺の正常組織への影響を低減しながら、高い効果が見込まれる陽子線治療が注目されています。現在、陽子線治療を実施している医療機関は日本全国で15都道府県の19施設しかなく、その1つが札幌孝仁会記念病院になります。陽子線治療はがんの種類によって「公的保険」や「先進医療」が適用となります。

陽子線治療のメリット

  • がん病巣のみに、ピンポイントで高いエネルギーで照射できるため、優れた治療効果が期待できる。
  • 放射線の影響を受けやすい臓器の副作用を減らしがん病巣を的確に治療することができる。
  • 体への負担が少ないため、高齢者や体力のない人にも治療を施せる。
  • 小児や若年者では、放射線治療を受けた後の二次がんの発生を低く抑えることができる。
  • 合併症があるために手術ができない人も治療を受けられる。

陽子線の副作用

陽子線治療は、従来の放射線と比較すると正常な組織への影響が少ないため副作用を軽減することができます。ただ副作用がまったくないとは言えず、たとえば、照射した部位の皮膚に日焼けのような症状がみられることなどがあります。また、治療後の副作用は、病巣の部位や陽子線の照射角度によってそれぞれ異なります。治療時には、専門医より詳しく説明いたしますので、よく理解したうえで治療を受けるようにしましょう。

「筑波大学附属病院 陽子線治療センターホームページより https://www.pmrc.tsukuba.ac.jp/about_proton_therapy/pm.html

診察から治療の流れ

かかりつけの医療機関からの診療情報提供書や画像データをもとに、当センターにて診察を受けていただきます。

必要に応じて追加の検査を行い病状を把握し、陽子線治療の適応となるかを複数の診療科の医師が総合的に検討・判断し、適応となる場合は治療の準備を進めていきます。

主な適応疾患

頭部・頭頸部 転移性脳腫瘍、良性/悪性脳腫瘍、良性/悪性頭蓋骨腫瘍、脳動静脈奇形、聴神経腫瘍、頸部リンパ節転移、口腔・耳鼻咽喉科領域の腫瘍 等
脊椎・脊髄 転移性骨腫瘍、良性/悪性脊髄・脊椎腫瘍、脊髄動静脈奇形 等
胸部・腹部 転移性肺腫瘍、肺がん、良性/悪性縦隔腫瘍、食道がん、肝細胞がん、膵がん、縦隔リンパ節転移、腹部リンパ節転移、その他胸部/腹部腫瘍 等
骨盤部・その他 前立腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮体がん、骨軟部腫瘍 等

※上記以外にも適応となる疾患があります。病名のみでは各装置での適応判断はできかねます。病歴やさまざまな検査結果を確認・検討する必要があるため、詳しくはお問い合せください。

先進医療の適応疾患

適応症 組織型等
脳脊髄腫瘍 膠芽腫、神経膠腫(星細胞腫・乏突起膠腫)、その他のまれな脳腫瘍頭頸部非扁平上皮がん
頭頸部腫瘍 頭頸部扁平上皮がん
肺・縦隔腫瘍 限局性肺がん、局所進行非小細胞肺がん、縦隔腫瘍
消化管腫瘍 局所進行食道がん
肝胆膵腫瘍 肝細胞がん(保険適用外のもの)、胆道がん
泌尿器腫瘍 膀胱がん、腎がん
転移性腫瘍 転移性肺腫瘍、転移性肝腫瘍、転移性リンパ節

保険診療の適用疾患

適応症 組織型等
頭頸部腫瘍 鼻副鼻腔扁平上皮がん、頭頸部悪性黒色腫、嗅神経芽細胞腫、腺様嚢胞がん、唾液腺腫瘍、頭頸部非扁平上皮がん
泌尿器腫瘍 前立腺がん
骨軟部腫瘍 脊索腫、軟骨肉腫、骨肉腫、その他のまれな骨軟部肉腫
肝胆膵腫瘍 肝細胞がん(長径4cm以上)、肝内胆管がん、局所進行膵がん
消化管腫瘍 局所再発性直腸がん

自由診療

保険診療・先進医療の適応外であって、陽子線治療の実施に医学的意義がある症例については、当院のキャンサーボード(陽子線治療適応判定会議)にて承認のうえ、自由診療による陽子線治療を受けることができます。

※保険診療、先進医療についての適応は病名に加え、転移等の状況も定められているため、病名のみでは陽子線治療の適応判断はいたしかねます。病歴やさまざまな検査結果を確認・検討する必要があるため、ご不明な点はお気軽にSAFRAへお問い合わせください。また、受診は「完全予約制」となっています。必ず事前に電話等にて受診予約をお願いします。

期間が短縮されました

陽子線による前立腺がん※の治療期間は3週間に短縮できます。

図

短期間の治療は陽子線の照射を4日間行った後、3日間お休みするサイクルを3回行って完了となります。

※限局性および局所進行性前立腺がん(転移を有するものを除く)

陽子線治療は通院での治療ができるので仕事を続けつつ、家族との時間を大切にしながら、日常生活への支障が少ないがん治療ができます。入院での治療体制も整っており、通うのが困難な方でも同様に治療を提供しています。まずは主治医にご相談いただき、その後SAFRAで外来受診、もしくはセカンドピニオンをご検討ください。

更新:2025.02.06