がんの早期発見から内視鏡的切除まで 上部・下部消化管の内視鏡治療
大垣市民病院
消化器内科
岐阜県大垣市南頬町
上部消化管の内視鏡検査
上部消化管(食道、胃、十二指腸)の病気の診断には内視鏡(胃カメラ)が有用です。近年では細い内視鏡を鼻から挿入する“経鼻内視鏡”が広く行われるようになっており、当院でも患者さんの希望に応じて積極的に実施しています。
また、がんと診断された場合や、生検(組織を採取して顕微鏡検査を行うこと)を行っても診断がつかない場合などは、拡大内視鏡を用いて検査を行っています。これは口から飲む内視鏡になりますが、検査を行いながら虫眼鏡のように消化管粘膜を拡大して観察することが可能な内視鏡です。
拡大内視鏡とNarrow Band Imaging(NBI)といわれる特殊な光を組み合わせることで、粘膜の表面の小さな血管まで観察することが可能です。その結果、これまでと比較して、がんの診断や範囲がより正確に分かるようになってきました。実際の早期胃がんの通常の内視鏡写真、NBIでの写真を提示します(写真1~5)。
当院では上部消化管内視鏡検査は年々増加しており、2018年の検査件数は9,053件でした。
下部消化管の内視鏡検査
下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)はあらかじめ下剤で大腸の中をきれいにしておき、肛門から内視鏡を挿入して大腸を観察する検査です。下剤の内服量も多く、内視鏡の挿入時に痛みを伴うこともありますが、ポリープが発見された場合はそのまま切除することができます。
当院では外来での大腸ポリープ切除を行っていますので、入院せずに通院で処置を行うことも可能です。毎年1,000件以上の大腸ポリープ切除を行っており、2018年は1,254件でした。
消化管がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)について
消化管の早期がんは、適切な治療を行えば、かなりの確率で完治する可能性があります。その中でも、リンパ節転移の可能性がほとんどないと予測されるがんの特徴が明らかになってきており、そのようながんはお腹(なか)を切らずに内視鏡でがんを削り取ることで治療することが可能となってきました。
その適応は臓器により異なりますが、がんの深達度(根っこの深さ)、大きさ、組織型(細胞のタイプ)、がんの中の潰瘍(かいよう)の有無により総合的に判断されます。
これらの条件を満たし、さらにがんを一括切除(がんを分断せずにひとかたまりで切除すること)ができれば、内視鏡の治療だけで手術をせずに治療することが可能です。ただし治療後は、切除したがんを顕微鏡で検査し(病理検査)、きちんと条件が満たされているかどうかを確認します。この時点で条件が満たされなかった場合は、残念ですが後日あらためて手術する必要があります。
ESDの具体的な方法としては、次のような手順です。
- 内視鏡でがんをよく観察します(写真6)。
- がんを切除する範囲を決めて目印をつけます(写真7)。
- 粘膜下層という、がんよりも深い層に液体を注入し、粘膜を膨隆させます(写真8)。
- がんの周囲の粘膜を内視鏡用のナイフで切開します(写真9)。
- がんの下側の粘膜下層をナイフで少しずつ剥離してがんをそぎ落としていきます(写真10)。
- 切除したがん(写真11)を病理検査に提出します。
当院ではESDの開発段階から積極的に行ってきました。検査件数は年々増加しており、2018年には食道、胃、大腸あわせて192例のESDを実施しています。
更新:2024.10.10