肝炎の種類や診断法、治療法について教えてください

愛知医科大学病院

肝胆膵内科

愛知県長久手市岩作雁又

肝炎の種類にはどんなものがあるの?

肝炎には大きく分けて急性肝炎と慢性肝炎があります。血液を介して感染するB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルス、アルコールや自己免疫による慢性肝炎が持続すると、肝硬変(かんこうへん)や肝臓がんの原因となります。最近では、アルコールをあまり飲まない人でも、肥満などの原因による脂肪肝により肝硬変や肝臓がんになるケースが増えてきています。このような病気を、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)といいます。

C型肝炎の内服薬治療とは?

肝臓がんの原因として、以前は、C型肝炎が大部分を占めていました。また、その治療に関しては、1年間インターフェロンの注射を受けなければいけないという、負担の大きいものでした。しかし最近では、1日1~2回の飲み薬の治療を2~3か月続けるだけで、95%以上という大部分の患者さんでC型肝炎ウイルスを排除できるようになりました。こういった最新のC型肝炎に対する治療薬は非常に高価なものですが、ほとんどの患者さんが国からの補助を受けることができます。月に1~2万円の費用の負担で、このような成功率の高い治療を受けることができます。

B型肝炎やC型肝炎は、感染していたとしても症状が出ることは非常に少なく、気づかないうちに進行していることがほとんどです。

会社などの健康診断の血液検査では、肝炎検査が含まれていないことが多いので、注意が必要です。最寄りの保健所やクリニックで肝炎検査を無料で受けることもできます。検査を受けたことがない方は、ぜひ一度、肝炎検査を受けることをお勧めします。詳しくは、下記のHPを参考にしてください。

■あいち肝炎ネットワーク
http://www.pref.aichi.jp/kenkotaisaku/kanen/link/3_test_ordinary/test_ordinary.html

非アルコール性脂肪性肝炎の診断はどうするの?

NASHは飲酒をほとんどしないにもかかわらず、肝硬変、肝臓がんへ進行する可能性のある脂肪肝で、国内に約200万人もの患者さんが存在すると推定されています。単なる脂肪肝との鑑別診断には肝生検(かんせいけん)が必要で、当院では積極的に肝生検を行い診断しています(図)。

図
図 非アルコール性脂肪性肝疾患には単なる脂肪肝と進行性のNASHが含まれます

NASHの原因は、肥満や糖尿病などの生活習慣病だけでなく、ある種の薬剤や手術など、さまざまな原因によって起こります。最近では、血小板数が低い(18万未満)、血清フェリチン(肝内の鉄量を反映する)、インスリン(血糖値を下げる膵臓から分泌されるホルモン)、肝臓の線維化(硬さ)を反映する4型コラーゲン7Sの高い人がNASHの可能性が高いことが判明しています。また、両親から引き継いだ体質(中性脂肪の代謝に関わるとされるPNPLA3遺伝子型がGGタイプ〈日本人の20%〉の人は脂肪肝にかかりやすく、CCタイプ〈日本人の30%〉の人はかかりにくいこと)によってNASHのみでなく、肝臓がん発生のリスクが高いことも分かってきました。

日本消化器病学会では患者さん向けのパンフレットを作成していますので、ぜひ参考にしてください。
■患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド
http://www.jsge.or.jp/files/uploads/04_nafldr.pdf#zoom=65

非アルコール性脂肪性肝炎の治療はどうするの?

NASHと診断されたら、肝臓がんの早期発見のために定期的な画像検査(超音波検査、CT検査、MRI検査など)や腫瘍(しゅよう)マーカー(AFP、PIVKAⅡなど)の測定を行います。治療は、薬物や手術が原因で起きたNASHの場合は、ホルモンを補充するなど原因に対する治療を行います。肥満など生活習慣に問題がある場合は、食事や運動などの生活習慣の改善が基本で、体重の5~7%の減量を目標とします。生活習慣改善が困難な方や、肝臓が硬くなってしまった方では、積極的に薬物療法や減量手術を行います。薬物療法では、糖尿病を合併していなければビタミンEを使用します。糖尿病を合併していれば糖尿病薬(インスリン抵抗性改善薬、SGLT2阻害薬、週1回のGLP-1作動薬の注射剤)を用いることもあります。肝硬変への進展を抑制するには、ALT値、体重、血糖値のコントロールが重要です。

当院では、希望者に対してNASHに対する新たな治療薬による臨床治験も行う予定です。また、脂肪肝の専門外来を設置して、地域のかかりつけ医との連携を行っていますので、脂肪肝を指摘された方は、紹介状を持参の上、お気軽に相談してください。

血液検査(M2BPGi)で肝臓がんのリスクを測定

B型肝炎やC型肝炎、NASHなどの慢性肝炎の状態では、肝臓がどれくらい硬くなっているかを診断することは、肝臓がんのリスクの予測や治療の開始時期を判断するのに重要です。これまでは、肝臓に直接針を刺して肝臓の硬さを診断していましたが、最近では私たちの開発した血液検査でM2BPGiという肝臓で作られるタンパク質上の糖鎖(細胞やタンパク質の表面に存在して、細胞の保護や情報の伝達に関わる)の違いを測定することで、簡単に肝臓の硬さを診断することができるようになりました。

この検査は保険診療で行うことができ、ほとんどの病院で受けることができます。この検査をすることにより、入院することなく正確に肝臓がんのリスクを測定でき、必要なときに治療を開始することができるようになりました。

更新:2024.10.29