病院での診断・放射線診断編 最適な治療のためにーがんの性質や広がりを画像で診断する

四国がんセンター

放射線診断科

愛媛県松山市南梅本町甲

治療前の画像診断/がんの病期診断

最適な治療のためには、まず、がんの性質をきちんと調べる必要があります。がんの大きさや形、周囲への広がりの有無、リンパ節や離れた臓器への転移の有無をきちんと調べた上で、初めて最適な治療方針を決定することが可能になります。体の外からは見えない体内の病気の状態を画像化して診断するのが画像診断装置で、これらの装置を使って病気の性質や広がりを診断することを画像診断(または放射線診断)といいます。病理診断(「病院での診断・病理診断編」参照)とならんで、がん診療における重要なファーストステップとして位置づけられています(図1)。

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図1 がん診療における画像診断の位置づけ

病院には数多くの画像診断装置があり、検査目的によって使い分けられています。ここでは、「がん」の画像診断でよく行われるCT、MRI、PET‐CTを中心に簡単に説明します(図2)。

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図2 PET-CT検査装置(上段)と画像(下段/左からPET、CT、PETとCTの融合画像)

CT(コンピューター断層撮影)

放射線の一種であるX線を利用して、体の断層画像を得る検査です。がんの形や大きさ、広がりを調べる検査として最もよく行われている検査の1つです。腫瘍(しゅよう)の血流の状態や周囲の血管との関係をより詳しく調べるために、静脈から造影剤を注射しながら、検査をすることもあります。装置の進歩により高精細の画像が短時間で得られるようになり、最近では1回の息止めで全身の広い範囲を撮影することが可能になりました。また、CTの画像をもとに、がんが疑われる部位から病理診断のために必要な組織をピンポイントで採取すること(「CTガイド下生検」と呼ばれます)も行われています。

MRI(磁気共鳴画像)

磁気と電波を利用して、体の断層画像を得る検査で、X線を使わないので被曝がありません。がんの種類や部位によっては、CTでは分かりにくい病変の性質や広がりをより精密に画像化できます。ただ、検査時間はCTに比べて長く、通常20〜30分位かかります。MRI専用の造影剤を注射しながら検査を行うこともあります。

PET‐CT(陽電子放出断層/コンピューター断層撮影)

この検査は主にFDGというブドウ糖に類似した薬を注射して行います。体内の糖代謝を反映した機能画像が得られ、糖代謝が活発ながん細胞ほどFDGがたくさん集まって描出されます。同じがんでも活動性が高く転移しやすい性格かどうかなどが分かります。

通常、注射をして約1時間後から、20〜30分位かけて全身の画像を撮って検査します。従来の画像検査では分からなかった転移や併存病変がPET‐CT検査で初めて見つかることもあり、現在では、多くのがんの大きさ、広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無など、がんの進行状況を調べる(これを「病期診断」といいます)上で中心的役割を担う検査となっています。

そのほかの画像検査には、単純X線検査、超音波検査、乳房のマンモグラフィ検査、胃や大腸の透視検査、放射性医薬品を使用する骨シンチ等の核医学検査などがあります。実際の診療の場では、がんの種類や部位によってこれらの中から最適な検査を組み合わせて、病期診断を行います。正確な病期診断ができた後に、初めて最適な治療方針を決定することができます。

治療後の画像診断/治療効果を評価、再発の有無を調べる

治療効果の評価

がんの治療が始まると、その治療が有効かどうかをきちんと評価する必要があります。この際にも画像診断は重要な役割を担います。主にCTやMRIを使って、治療前の画像と比較して、がんが消失、縮小、不変、増大したかどうかを評価します。がんの種類によっては、治療が効いていても大きさの変化がみられにくいことがあり、このような場合には、PET‐CTがとても有用です。画像診断の結果をもとに、治療方針の再検討が行われることもあります(図3)。

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図3 治療前後のPET-CT画像/治療が奏効し、腫瘍の集積(白黒画像の濃い黒色部分やカラー画像の赤色部分)が消失しています

再発の有無の診断

無事治療が終了した後の経過観察にも、画像診断は重要な役割を担います。手術でがんがなくなった場合でも、目に見えないがん細胞が体内に潜んでいて、一定の期間をおいて再発することがあります。ただ、再発しても早く見つけることができれば、また次の有効な治療ができることがあります。定期的に再発の有無をチェックすることが重要で、画像診断もその際の有用な手段の1つです。再発の疑いがあるときには、治療前の画像診断と同様に再びがんの広がりを調べて、患者さんの状態に合わせた次の治療方針の検討を行います。

放射線診断医の役割/患者さんに最善の医療を届けるために

放射線診断医はCTやMRI、PET‐CTなどの画像診断の専門家です。画像診断装置の進歩によって、発生する画像情報は近年飛躍的に増加しています。膨大な画像情報から正確な診断を行うためには、画像診断の専門のトレーニングを受けた放射線診断医が必要です。画像には特定の臓器だけでなく、全身のさまざまな体の状況が映し出されています。主治医が気づかなかった異常に放射線診断医が気づき、主治医に知らせることによって治療方針が変更になることもあります。

各々の臓器の専門医や病理医とのカンファレンスを通して、患者さんに最善のがん診療を届けるために日々研鑽を積んでいます。

更新:2024.10.24