加齢による目の変化、目の病気

いわき市医療センター

眼科

福島県いわき市内郷御厩町久世原

加齢とともに起こる目の病気とは

日常生活で、人は外界からの情報の8割を「見る」ことで得るといわれています。

しかし長年使ってくると、目にも老化現象が現れます。さまざまな目の病気も、老化の延長線上にあるともいえます。

加齢に伴う目の変化や病気では、老眼、白内障、加齢性黄斑変性(かれいせいおうはんへんせい)、網膜静脈閉塞症(もうまくじょうみゃくへいそくしょう)などが代表的なものです。ここではそれぞれについてお話ししていきます。

1.老眼(ろうがん)

40歳を過ぎたころから、なんとなく目の疲れを感じ始めるといったことがよくあります。特に長い間、読書や編み物などをし続けているときに起こり、根気がなくなってきたように感じたり、また、新聞を少し離したほうが見やすいと感じることもあります。これらは老視(老眼)の初期の症状であることが多いのです。

老視が進行すると、遠くは見えるけれども、近くのものや新聞の字などは見えないようになり、肩こりがひどくなり、時には頭痛・吐き気まで感じることもあります。

老視は、近視・遠視・乱視などと混同されがちですが、これらとは異なり、水晶体の調節の老化現象で起こるものです。若い人の目は、正視の場合には眼鏡なしで、また近視・遠視・乱視の場合も1つの眼鏡をかけたままで、遠くのものも、近くのものも見ることができます。それは、あたかもオートフォーカスのカメラのように、目が無意識のうちにピント合わせを行っているからです。これは毛様体(もうようたい)と呼ばれる部分にある筋肉が、神経の命令によって水晶体を厚くしたり薄くしたりしてピントを合わせているからです(図1)。

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図1 眼球の仕組み

ところが、年齢を重ねるにつれてこの機能は低下し、40歳を過ぎるころから不自由が生じてきます。近くを見ようとしてもうまく水晶体が厚みを増さず、ピントが合わなくなってしまうのです。それでも初めのころは、目をこらすなど力を入れてなんとかピントを合わせることができ、見えないことはないのですが、目に力を入れるので疲れたり、肩が凝ったりします。

この症状は、若いころから目が良かった人のほうが、近視の人よりも早めに出てきます。若いころから近視の人は、眼鏡をかけなくても、もともと近くは見えていたので、眼鏡をつくるときも少し弱めの度でつくることが多く、症状が出にくいのです。

しかし、年齢とともに症状は進行するため、いずれは近視の人も不自由になってきます。

2.白内障(はくないしょう)

お年寄りの目の病気として有名なものに白内障があります。この病気は、水晶体(目のレンズ)が濁るもので、濁ったレンズでは写真がよく撮れないように、見え方が悪くなります。初めは水晶体の一部が濁り始め、徐々に他の部分に広がり、最終的には水晶体全体が濁ってしまいます(図2、3)。

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図2 正常な水晶体
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図3 白内障(水晶体の濁り)

水晶体全体が濁った場合は視力が低下し、視界が全体的に白っぽく、まるで霧の中にいるような感じになります。著しい場合は、なんとなく人がいることが分かる程度や、目の前で手を振るとやっと分かる程度になります。

視界全体が暗い感じがするとか、一部分だけが暗かったり見えないというのは、白内障の典型症状ではなく、むしろ別の病気が疑われます。

また初期の白内障の場合、混濁した部位によって、次のように症状が異なります。

●核硬化白内障(かくこうかはくないしょう)

加齢性(老人性)白内障のなかでも多い病気です。水晶体の中心部が徐々にやや褐色に濁るもので、この部分のたんぱく濃度が増し、屈折率が上昇しています。そのため水晶体の光を曲げる効果が強くなり、近視の症状が現われます。

眼鏡の度が合わなくなったとか、老眼鏡なしでも近くのものが見えるようになったというのが最初の症状です。初期にはそれほど視力は低下しませんが、水晶体の濁りが進行すると、やはり見づらくなってきます。

●後嚢下白内障(こうのうかはくないしょう)

水晶体の後ろの部分の中央から濁ってくるもので、早くから視力低下の原因になる白内障です。初期は中央部だけが濁り、周辺部は透明なままですから、光が水晶体の中央部を通るときだけ症状がひどくなり、周辺部を含めた全体を通るときは症状が軽くなるという特徴があります。

光が中心部だけを通るのは瞳孔(どうこう)(ひとみ)が縮まっているとき、つまり、明るいところにいるときや近くを見ているときです。強い光の下では、光が乱反射するため、特にまぶしく感じます。強い日差しの日には、まぶしくてよく見えず、曇りの日や薄暗い屋内ではよく見えるのが典型的な症状です。

現在では、白内障手術も進歩し、比較的安全に手術をすることが可能となっています。以前は、かなり視力が低下しないと手術が行われませんでしたが、最近では、場合によっては視力低下がなくても、まぶしさなどの訴えが強いときには、手術を行うこともあります。

3.加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)

白内障では、見えるもの全体がかすんだり白っぽくなりますが、ある一部分だけが見づらくなる病気もあります。特に、見るものの中心が見づらくなって、活字ならば、見ようとしているその文字だけが抜けて見えなくなるのが加齢黄斑変性です。

この病気は、カメラのフィルムにあたる網膜(もうまく)が障害されるもので、特に網膜の中心部(黄斑部)に生じる特徴があります。初期の症状に、ものがゆがんで見える変視症(へんししょう)がありますが、これは黄斑部の網膜が浮き上がったりするために生じます。鏡の一部にへこみや出っ張りがあると、その部分の像がゆがむのに似ています。

柱の一部がゆがんで見えたり、方眼紙や原稿用紙の升目がゆがんで見えるときは、この病気が疑われます。進行すると、網膜下に出血を生じることもあります。出血した部分は像を視神経に伝えなくなりますから、急に視力が低下します。虫食い状に、見ようとするものの中心が見えなくなり、活字ならばその部分が黒く抜けてしまっている感じがします。この症状は、一瞬だけではなく持続し、明るい場所でも暗い場所でも続きます。

従来は治療が難しく、老人の失明原因の1つになっていましたが、現在は初期であれば、硝子体(しょうしたい)注射という治療が有効な場合もあります。

4.網膜静脈閉塞症(もうまくじょうみゃくへいそくしょう)

目の奥にある網膜には動脈と静脈と呼ばれる2種類の血管が分布しています。

体から目に流れてくる血液は、動脈を通って目の中に酸素や栄養を運び、静脈を通って再び体へと戻ります。この静脈が詰まると血液が体へ戻れなくなり、網膜に溢(あふ)れ出てしまいます。ちょうど、下水道の排水が詰まって、まわりに水が溢れ出ている状態と同じことが目の中で起こると考えてください。網膜の静脈は細かく枝分かれしていますが、徐々に集まり最終的には一本の血管(中心静脈)に集合します。中心静脈が詰まることを網膜中心静脈閉塞症といい、枝分かれした細い血管が閉塞することを網膜静脈分枝閉塞症といいます。

視力にとって大事な黄斑と呼ばれる部分に、出血やむくみが出ると視力が低下します。放置していると血液不足を補おうと異常な血管が生まれ、その異常血管が切れて眼底出血を起こしたり、場合によっては緑内障になって失明したりすることもあります。

原因は高血圧や動脈硬化によるものが多いことが知られています。

治療は以前からあるレーザー治療や手術療法もありますが、最近では硝子体注射という眼球内に種々の薬剤を注射することが主流になりつつあり、治療で視力が回復する方も多くなっています。

目の変化やここでお話しした加齢に伴う病気は早期の発見・治療が重要です。当院では白内障手術、加齢性黄斑変性や網膜静脈閉塞症に対する硝子体注射の治療に特に力を入れて診療を行っています。目がかすんで見えない、ものがゆがむ、右目と左目で見え方が違うなどの症状を見つけたら早めに眼科を受診することをお勧めします。

更新:2023.04.03