地域で育てる臨床研修医

いわき市医療センター

研修管理委員会

福島県いわき市内郷御厩町久世原

臨床研修医とは

現在、国内の医師法では「診療に従事しようとする医師は、2年以上、医学を履修する課程を置く大学に属する病院又は厚生労働大臣の指定する病院において、臨床研修を受けなければならない」と規定されています。つまり、医学部を卒業して医師国家試験に合格すれば「医師」にはなれるのですが、患者さんを診療するためには2年以上の臨床研修が必要で、その研修中の医師のことを「臨床研修医」といいます。

そして、臨床研修の基本理念は「医師が、医師としての人格をかん養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身に付けることのできるものでなければならない」とされています。

当院の果たすべき役割と実績

現在の臨床研修制度が開始されたのは2004年ですが、それ以前は多くの研修医が大学病院の専門的な診療科で臨床研修を行っていたため、経験できる病気に偏りがあり、「一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身に付ける」のが難しい状況でした。

また、多くの大学病院は都市部に存在するため、地域医療との接点が少なく「医学及び医療の果たすべき社会的役割」の認識においてやや偏りが生じやすい環境でした。そのため臨床研修制度の見直しが行われ、当院のような地方中核病院には医療機関としての役割と同時に、未来の医療を担う優秀で信頼のおける医師を育てる教育機関としての役割が求められるようになりました。

当院は現在の臨床研修制度が始まる以前から研修医の受け入れを行っており、200人以上の研修医が当院で臨床研修を終え、さまざまな分野で活躍しています。その中には、多くの経験を重ねたのちに再び当院に戻り、いわき市の医療を支えると同時に、研修医の指導に奮迅している医師もいます。

優れた医師育成のために

当院での研修は、医療チームの一員として患者さんの診療に従事しながら学ぶ「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」を基本としています。もちろん患者さんに不利益を与えないためにも、シミュレーターを用いた研修などオフ・ザ・ジョブ・トレーニングにも力を入れています(写真1)。

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写真1 シミュレーターを用いた末梢挿入型中心静脈カテーテルの挿入トレーニング

毎週月曜の夜には、各科の指導医から救急疾患への対応などを中心とした講義があり、研修医は座学にも励んでいます。また、実際に経験した救急患者さんについて指導医とともに振り返り、明日の診療に生かすためのカンファレンスや、病歴と身体所見、検査値などから鑑別疾患を考え、論理的に診断を絞り込むための臨床推論に主眼を置いた総合診療カンファレンスなども行っています。そのほか、医療の国際化に向けた取り組みとして、週1回の英会話研修(写真2)や、患者さんや病院スタッフとの良好な関係を築く基礎としての接遇研修なども実施しています。

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写真2 英会話研修

研修医を教育するためには、私たち指導医も常に新しい知識や治療法を勉強することが求められ、教えることによって自分の頭の中をもう一度整理することができます。「教えることによって学ぶ」精神のもと、指導医、メディカルスタッフ、事務職員など全員でより良い後進の育成を目指して日々努力しています。ぜひ、地域の皆さんにも私たちと一緒に研修医を育てていただき、お子さんやお孫さんが将来安心して医療を受けられる社会づくりの一助となっていただけると幸いです。

更新:2022.03.08