患者サポートセンターの役割

いわき市医療センター

患者サポートセンター

福島県いわき市内郷御厩町久世原

当院は新病院の開院を機に、患者サポートセンターを開設しました。地域医療連携、入院前面談、医療福祉相談、がん相談支援、退院支援、訪問看護、病床管理を行います。
ワンストップサービスとして「一度で用が足りるサービス」を実践し、患者さんや家族の多くのニーズに対応できるように努めます。個室でプライバシーを保ちながら相談に応じていますので、気軽に声をかけてください。
患者サポートセンターが目指していることは、次の3点です。

  • 患者さん・家族が受ける治療を納得し、心身を良い状態に整えて入院できるよう支援する。
  • 地域との連携を密にし、患者さん・家族が不安なく入退院できるよう支援する。
  • 患者さん・家族の不安や困りごとの相談を受け、退院後も安心して療養生活が送れるよう支援する。

患者サポートセンターの業務

【地域医療連携】

目的
地域の中核となる急性期病院として、他医療機関との機能分担と連携を積極的に進め、患者さんへのサービスの向上と地域医療の充実を図ります。
役割
紹介元の医療機関との連携窓口として、患者さんに切れ目のない医療・看護・介護サービスが提供できるように支援・調整します。
業務内容
  • 前方支援/他医療機関との転入調整や紹介患者事前診療予約
  • 後方支援/当院から他医療機関への逆紹介や転院調整
  • セカンドオピニオン/他医療機関から当院へ、当院から他医療機関への調整

当院は、2009年9月8日に地域医療支援病院の承認を受けています。地域医療支援病院とは、法令で定められている施設や医療設備の保有、他医療機関の紹介患者に対する医療の提供、病院施設、設備などの共同利用、救急医療の提供、地域の医療従事者の資質向上を図るための研修などを行うことにより、地域医療の充実を担う病院として県知事が名称使用を承認するものです。

かかりつけ医からの紹介状を持参されない場合は、初診料のほかに保険外併用療養費が発生します。かかりつけ医は、日頃の診察を通して、患者さんの健康状態を深く理解しています。それらの情報が書かれた「紹介状」をもとに、当院では診療を行います。

イラスト(患者紹介・受診の流れ)
地域医療連携登録状況
地域医療連携登録施設: 414施設
内訳: 医科 251施設
歯科 163施設

令和1年 4月現在

イラスト(患者サポートセンターの機能)

【入院前面談】

目的
患者さんの抱える身体的、精神的、社会的問題を入院前から把握し、患者さんが安心して治療を受け、快適な入院生活を送ることができるように支援します。
役割
看護師が入院前面談を行い患者さんのリスクを評価し、医師、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、管理栄養士、理学療法士などの多職種と密に連携しながら、入院前からサポートを開始します。病院内の連携はもとより、地域とのつながりを強化し、切れ目のない医療を提供します。患者さんが安心して治療を受けられるよう、入院前から一人ひとりの状況を把握し、退院後も含めた一貫した支援を行います。同時に、入院前からの患者参加型の医療を目指しています。
業務内容
  • 入院オリエンテーション
  • 基本情報の収集
  • 退院困難要因の評価
  • 栄養状態評価
  • 多職種との連携

【医療福祉相談】

目的
入院や通院に伴って生じるさまざまな問題や心配ごとを、社会福祉の立場から患者さん・家族とともに考え、治療に専念できるよう支援します。
役割
入院・通院している患者さんが、安心して治療に専念できるよう多様な社会資源の活用を念頭に置いて、各関係機関と連携し問題解決の支援を行います。
業務内容
  • 医療費助成制度の案内
  • 健康保険各種制度の案内
  • 身体障害者手帳の制度内容・申請手続きの案内
  • 介護保険・障害福祉サービスの案内および連絡調整
  • 障害年金の案内
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患者サポートセンター(相談室)

【がん相談支援センター】

目的
患者さん・家族、地域の方々に対し、がんに関する信頼のおける情報を分かりやすく提供し、適切かつ効果的に活用できるための支援を行います。
役割
がん診療連携拠点病院として、がん専門相談員の研修を受けたスタッフが、がんの治療や療養生活全般の相談に応じます。
業務内容
  • がん相談対応
  • がん患者サロン「サポートサロンえん」の運営
  • がん相談支援センターの広報

【退院支援】

目的
患者さん・家族の主体的な参加のもと、退院後も自立した自分らしい生活が継続できるよう支援します。
役割
入院患者さんの退院に向けて早期に介入し、患者さん・家族が安心して在宅で生活が送れるよう、必要な在宅医療、介護サービスおよび障害サービス等の調整を行います。
業務内容
  • 在宅調整
  • 転院調整
  • 施設入所の調整
令和1年度 入院患者数等の状況
新入院患者数 15,030人(1,252/月)
退院患者数 15,023人(1,251/月)
平均在院日数 13.9日(労災、生活保護、自費等を除く保険診療費分)
在宅復帰率 97.4%
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患者サポートセンター(執務室)

当院における退院支援の取り組み

当院での退院支援は、介護が必要、独居高齢者など、退院が困難な要因を有している患者さんを、入院早期に病棟看護師が気づくことから始まります。

その後、医療ソーシャルワーカーや退院支援看護師が介入し、医師、看護師、理学療法士など多くの職種とともに、病状や治療状況、今後の見通し、家族状況などの情報を共有し、患者さん・家族と面談しながら最善の退院先を検討し、調整を図ります。

高齢化や核家族化が進み、独居高齢者や高齢者のみの世帯の増加など、家族の介護力が低下しています。その介護力を補うための社会福祉制度を上手に活用し、一人ひとりの患者さんが、退院後も自立した自分らしい生活が継続できるよう、またスムーズに在宅生活に戻れるよう支援しています。そのためには、院内の連携はもとより、地域とのつながりを強化し、多様な医療・介護サービスを適切に切れ目なく利用できるよう調整に努めています。

さらに現在の診療報酬制度の下では、急性期病院の入院期間は14日程度となっており、早期に退院調整を開始し、円滑な退院につなげる必要があります。当院からの退院先としては、基本的に自宅となりますが、患者さんの状況によっては、施設への入所やリハビリ機能を持つ病院、療養型病院などへの転院が必要となる場合もあり、それらの調整を医療ソーシャルワーカーおよび退院支援看護師が院内外の多職種と連携しながら行っています。

【訪問看護】(診療を含む)

目的
当院から退院、または外来通院している患者さんの在宅医療および療養生活の継続的支援を行います。
役割
変化する環境や状態により良く適応できるよう、身体的・精神的・社会的側面から発生する問題を予知し、医師をはじめとする多職種で訪問診療・看護を提供します。
業務内容
  • 地域医療支援病院としての機能を活かした専門的な看護サービスの提供
  • 医師の指示に基づく医療処置とその指導
  • 療養者と家族への指導と援助
  • 保健・福祉機関を含む多職種との連携による質の高いケアの提供

【病床管理】

目的
病床を一元化して管理することで、入院治療の必要な患者さんに適切な病床を提供します。
役割
全病床の利用状況を中央管理し、効果的なベッドコントロールを実施します。
業務内容
  • 予約入院の病床確保
  • 臨時入院の病床確保
  • 病床確保困難時の対応

いわき市の医療を守るために

国内では、医療の高度化と超高齢社会により、医療費が高騰しています。国は対策として、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、地域包括ケアを打ち出し、「時々入院、ほぼ在宅で過ごす」ことを目指しています。地域包括ケアとは、高齢者が重度な介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることができるように、住まい・医療・予防・生活支援を一体的に提供するシステムです。

イラスト(地域包括ケア)

私たち一人ひとりが疾病の予防と早期発見に努め、自分で身の回りのことができる健康寿命を延ばすために、体調が悪いときに相談できる地域の「かかりつけ医」を持つことが必要です。「かかりつけ医」は、日常的な診療や初期治療にあたる医師であり、より詳細な検査や高度な診療が必要と判断した場合には、地域医療支援病院などに紹介します。しかし、国内では安心感からか、ささいなけがや病気でも大病院にかかるケースが多くみられます。

このため、大病院に患者さんが集中し待合室にあふれています。こうした状況を改善するため、1997年に厚生労働省は「医療機関の機能分担と連携」および「地域医療の充実」を提案しました。また東日本は、西日本に比べて医師や看護師が不足しており、2016年の調査では、福島県の人口1000人当たりの医師数は、47都道府県の中で44位となっています。いわき市の医療を守るためには、地域の医療機関が役割分担を行うことが必要です。

今後も当院は、市民の皆さんの最後の砦(とりで)として、地域の医療機関と連携しながら高度急性期医療を実践します。その中で、患者サポートセンターにおいて、入院前から多職種で連携しながら支援を開始することで、①患者さんが安心して治療に臨め、退院に対する抵抗感と不安が軽減する、②合併症を予防し、早期回復を促すことができる、③当院に入院が必要な患者さんの病床を確保することができると考えます。

更新:2024.10.21