睡眠時無呼吸症候群 Q&A
滋賀県立総合病院
呼吸器内科
滋賀県守山市守山

睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠中に呼吸が一時的に何度も止まったり弱ったりする病気です。睡眠中にのどの筋肉が緩み、気道が狭くなることが主な原因で、「閉塞性」睡眠時無呼吸症候群と呼びます【図1】。睡眠中に何度も窒息のような状態になり、低酸素血症を繰り返し、睡眠の質が悪くなります。長い病名なので、サス(SAS: sleep apnea syndrome)とよく呼ばれます。(ほかに、脳が呼吸をうまくコントロールできない「中枢性」睡眠時無呼吸症候群があり、脳や神経の病気、心不全で起こることがありますが、ここでは扱いません。)

どれぐらい呼吸が止まると異常と考えますか?
10秒以上呼吸が止まることを「無呼吸」、10秒以上呼吸が弱ることを「低呼吸」と呼び、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数(無呼吸低呼吸指数)が5回以上で症状(※)がある場合に睡眠時無呼吸症候群と診断し、5回以上15回未満を軽症、15回以上30回未満を中等症、30回以上を重症と判定します。※Q7に記載
どんな人がなりやすいのですか?
気道が狭い構造(肥満、首が太くて短い、あごが小さい、アデノイドや扁桃肥大)、鼻づまりによる口呼吸、生活習慣(喫煙、飲酒)、加齢(のどの筋肉の衰え)、ホルモンの病気(甲状腺機能低下症、先端巨大症)が影響し、40歳以上の男性に多いです。
女性はなりにくいのですか?
女性ホルモンであるプロゲステロンに呼吸を強くする働きがあるため女性には少ないのですが、閉経後に増えます。
遺伝しますか?
遺伝性の病気ではありませんが、体型が似ているとなりやすいです。
子供もなることがありますか?
アデノイドや扁桃肥大、肥満が原因で発症することがあります。子供の場合、学習能力や成長に影響を与える可能性があります。
どんな症状がありますか?
睡眠中の大きないびき、頻繁に目が覚める・トイレに行く、起きた時の頭痛や口の渇き、昼間の眠気やだるさなどです。ただし、自覚症状がなく、家族に指摘されて気付く方も多いです。

治療しないと、どんなリスクがありますか?
呼吸が止まって死んでしまうことはありませんが、特に重症の場合は、高血圧症、心疾患、脳卒中、糖尿病、逆流性食道炎などのリスクが高まります。また、昼間の眠気から、交通事故や仕事上のミスを起こす可能性が高くなります。
診断の方法は?
まずは自宅での睡眠中に酸素などのセンサーを装着する簡易検査【図2】を行うことが多いです。精密検査は一泊入院で行う終夜睡眠ポリグラフ (PSG) 検査【図3】で、睡眠中に全身にセンサーを装着し、酸素や呼吸状態に加えて睡眠の深さを調べるための脳波などを記録します。


治療の方法は?
生活習慣の改善、CPAP(シーパップ、持続陽圧呼吸)療法、マウスピース(歯科装具)、耳鼻いんこう科での治療があります。
生活習慣を改善する方法は?
仰向けではなく横向きに寝るように工夫する、肥満の場合は体重を減らすために食事のカロリーを減らして適度な運動をする、禁煙、飲酒を控える、などが望ましいです。

CPAPはどんな治療ですか?
睡眠中に鼻にマスクを装着し、空気を持続的に送り込んで気道を開いた状態に保ち、無呼吸を防ぐことができる医療機器を使います【図4、5】


CPAPはどれぐらい効果がありますか?
適切に使用すれば、症状がほぼ完全に改善することが多いです。

CPAPは毎日使わなければいけませんか?
症状の改善には毎晩少なくとも4時間以上の使用が勧められます。
CPAPは一生使わなければいけませんか?
生活習慣の改善などで卒業できる場合もありますが、そうでない場合は、目が悪い方のメガネと同様に、使い続ける必要があります。
CPAPを使うのは面倒ではないですか?
最初は慣れが必要ですが、数週間で慣れることが多いです。
CPAPは旅行中も使えますか?
ポータブルなので持ち運べます。
CPAPは健康保険が使えますか?
無呼吸低呼吸指数が、簡易検査で40回以上、終夜睡眠ポリグラフ検査なら20回以上で保険適用されます。保険適用のためには、定期的な受診が必要です。
マウスピースはどんな治療ですか?
睡眠中にマウスピースを噛むことにより下あごを前に引き出して、のどの気道を広げる治療です【図6】。検査結果を付けて歯科に紹介されれば保険適用されますが、あらかじめ作成できる歯科であるかの確認が必要です。歯に問題がある場合は難しいです。

耳鼻いんこう科での治療は?
アデノイドや扁桃肥大が原因である場合の手術や、鼻中隔湾曲症などで鼻づまりがある場合の治療が有効な場合があります。
その他の治療はありますか?
現時点では、有効な薬はありません。CPAP療法の適応であるけれども使用することが難しい方で、いくつかの条件を満たす場合に、心臓ペースメーカーのような機械を胸に埋め込み、睡眠中に作動させて、舌を収縮させて前に出す舌下神経電気刺激療法が2021年6月から保険適用になりました。ただし、対応できる病院は現時点ではごく少数であり、当院でも行っておりません。
更新:2025.03.04