気管支喘息の正しい理解と治療の進め方

大阪母子医療センター

呼吸器・アレルギー科

大阪府和泉市室堂町

喘息とは

気管支喘息(ぜんそく)は咳(せき)、喘鳴(ぜんめい)(ヒューヒュー、ゼーゼーという呼吸音)、呼吸困難を繰り返す、子どもで最も多い慢性の呼吸器疾患です。子どもの喘息の約8割が3歳までに発症するといわれていますが、喘鳴はよくある症状で3歳になるまでに3人に1人が1度は起こすといわれています。

子どもがゼーゼーして呼吸がつらそうになると、喘息かもしれないと不安に思うかもしれませんが、そのような症状すべてが典型的な喘息ではなく、6〜7割の子どもは小学生になるまでには治ります。しかし、典型的な喘息として症状が続く場合もあります。治るのか、治らないのかを正確に予測する方法は今のところありません。

喘息とは慢性に気道に炎症があり気管支が敏感になった状態で、かぜなどが引き金となって敏感な気管支が収縮して気道が狭くなり、ヒューヒューという喘鳴、呼吸困難を引き起こします。発作時は気管支拡張薬を使用すれば症状は一旦改善しますが、慢性炎症が改善されていなければ発作を繰り返すことになります(図1)。

イラスト
図1 喘息の慢性炎症

最近は、喘息で入院する子どもはずいぶん減りました。30年ほど前までは、喘息で数か月〜数年の入院を必要とすることや喘息発作で死亡することも少なくありませんでした。治療の大きな進歩は喘息の治療の考え方が変わったことと、それに伴い良い治療薬が出てきた結果です。昔は発作が起きたときだけ治療をする考え方でしたが、喘息の病態が気道の慢性炎症であることが分かり、今は発作が起こらないように炎症を抑えていく治療に変わりました。正しい理解のもとで適切な治療を受けるようにしてください。

喘息の診断について

3歳未満の子どもは気管支がもともと狭い上に頻繁(ひんぱん)に風邪(かぜ)をひくため、喘息でなくとも喘鳴を繰り返すことがあり診断が非常に難しいです。病院では喘鳴をきたしたときの様子を詳細に聞き取りし、過去に使用した薬の効果や家族に喘息の人がいるかどうか、本人にアトピー性皮膚炎や食物アレルギーがあるかなどの情報から総合的に判断します。特にかぜをひいたときの喘鳴や呼吸困難に対して、気管支拡張薬の吸入が明らかに有効という特徴は、喘息と診断する上で重要です。

小学生以上になると呼吸機能検査ができるようになります。思いっきり息を吸ってはくだけの簡単な検査です(図2)。慢性の気道炎症が強ければ、症状がないときでも気道の閉塞(へいそく)がみられるので検査で評価が可能となります。正確な診断や重症度、治療効果を評価する際にも参考になる大変役に立つ検査です。また最近では、気道の慢性炎症の評価に呼気中(口から吐く息)の一酸化窒素を測定する方法があります。前述の呼吸機能検査と組み合わせて、より詳細な評価が可能です。

写真
図2 呼吸機能検査

当センターのような小児病院には、さまざまな基礎疾患を持つ子どもがいます。心疾患や重症心身障害児では喘鳴を繰り返すことが多いです。これらの子どもでは、喘息と異なる喘鳴を反復する気管支軟化症という病気もあります。また重症心身障害児では、胃食道逆流症が喘鳴の原因となっていることも多いです。喘息といわれているが、何かおかしいと感じるときは専門医に相談してください。

喘息の治療について

治療の基本は、吸入ステロイド(フルタイド®、アドエア®、パルミコート®、キュバール®、オルベスコ®)や抗ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン®、プランルカスト®、シングレア®、キプレス®)を中心とした、症状がないときでも定期的に使用して気道の炎症を抑える薬と、発作のときにだけ使用する気管支拡張薬の二段構えです。炎症を抑える薬は、基本的には発作のときに使用しても即効性はありません。

喘息の治療については、小児アレルギー学会から非常に良いガイドラインが作成されています。重症度に応じて、それに適した治療薬、治療量を選択し、その後はコントロール(薬が適切に効いて、症状が安定しているかどうか)の状態を評価しながら治療をステップアップもしくはダウンしていきます。この重症度の評価、コントロール状態の評価が意外に簡単ではなく、保護者や本人は過小評価していることが多いです。運動するとゼーゼーする状態や、夜間だけ軽く咳が出るという状態は良いとはいえません。評価には前述した呼吸機能検査も役に立ちます。3か月良い状態であれば薬を一段階下げるという調整が一般的です。さらに薬を完全に中止するかどうかは、より長期間の経過観察を経て判断することが多いです。乳幼児では喘息の診断が難しく、短期間で改善する例も多いので、より積極的に薬を減量、中止していきます。基本的にはガイドラインに沿った標準的な治療を行えば、日常生活に制限なく運動も含めて思いきり行うことができます。水泳のオリンピック選手に喘息の人が多いことは有名な話です。喘息治療をしていても喘息のせいで学校をよく休む、運動が思いきりできない、夜間救急病院受診を繰り返すなど、日常生活に支障がある場合は専門医の受診を考慮してください。診断が異なっている、重症度が過小評価されている、本人が正しく薬の吸入ができていないなどの問題が判明することも多いです。

薬を長期に使用することには不安があるかと思いますが、治療が必要な時期には薬でしっかり抑えてあげることによって子どもの成長を促し、喘息の改善に伴って薬を段階的に減量し、可能であれば中止していくのが基本的な方針です。また、あくまで治療の副作用がないことを目標にしています。治療を続けることはとても大変ですが、毎日の習慣にしていきましょう。

最後に

喘息をしっかりコントロールして不安のない活動的な毎日を過ごし、喘息であることが子どもの健全な発育を阻害することがないように治療していきましょう。

更新:2024.10.29

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