プラダー・ウィリー症候群( PWS)

大阪母子医療センター

大阪府和泉市室堂町

プラダー・ウィリー症候群(PWS)とはどんな病気でしょうか?

ヒトの染色体は23対、46本で、父親と母親から23本ずつの染色体を受け継いでいます。

PWSでは、15番染色体のq11-q13領域欠失(欠けていること)が約75%であり、15番染色体が2本とも母性によるものが10%であるとされています。1万〜1万5000人に1人の割合で発生し、性差、人種差はありません。

PWSの症状にはどんなものがあるでしょうか?

PWSでは、脳の視床下部の働きが悪いために、さまざまな症状が年齢ごとに起こってきます。主な症状として特徴的顔貌(がんぼう)(アーモンド型の目、狭い前額部、下向きの口角など)、小さな手足、性腺機能不全、外性器低形成、皮膚色素低下、体温調節不良があります。乳児期に目立つものには筋緊張低下、哺乳障害、運動発達遅滞、精神遅滞があります。幼児期に始まるものとして食欲亢進、肥満、低身長、特徴的な異常行動(短気で爆発的性盗癖、虚偽など)、構音障害(鼻に抜けるような声)、皮膚の引っかき(skin picking)などがあります。

肥満予防に継続的な食事療法がとても大切です

乳児期の哺乳不良に引き続き2〜3歳頃から過食が現れ、何もしなければ、肥満になります。これはPWSの一番厄介な問題で、肥満の予防と治療は内科医療の中心になります。視床下部にある満腹中枢の障害から起こる過食により、見守りがないと際限なく食べてしまいます。一方でPWSでは活動性が低く必要カロリーは少ないため、太らないためにはカロリー制限が必須ですが、ダイエットは至難の業です。

栄養管理をできるだけ早い年齢から始めて継続すると、後で述べる成長ホルモン(GH)治療と同じように、肥満予防ができます。年齢に合わせた食事療法のポイントがあり、家族の努力と幼稚園や学校の先生たちの協力が得られるとダイエットがうまくいきます。

乳児期(筋緊張の低下)/筋緊張の低下のため、摂食量の確保にしばしば経管(けいかん)栄養が必要になる時期です。幼児期(過食が始まる)/目標エネルギー=身長(㎝)×10キロカロリーとして、蛋白(たんぱく)、ビタミン、ミネラルは十分補います。

成長ホルモン治療は体の筋肉を増やし脂肪を減らします

PWSにおける成長ホルモン(GH)の効果として、身長の伸びを改善する、体の筋肉を増やして脂肪を減らし体組成を改善する、運動能力を高める、呼吸機能を改善することが期待されます。GH治療は若い年齢で開始すると、肥満予防の可能性があります。しかし、GHは全員に使えるわけではなく、開始する基準は身長がマイナス2・0SD以下の低身長であることが必要です。また、すでに糖尿病を起していたり睡眠時無呼吸などの呼吸障害があったりする場合や、年齢が20歳以上は使えません。GHは栄養指導と組み合わせて投与することが必要です。

乳児期から青年期に及ぶ、他職種チームによる自立支援とファミリーケア・心理的ケア

PWSにおいて、青年期以降は大人としての自覚が進む時期である一方、社会的発達の遅れが目立ちます。変化への対応やストレスへの耐性が弱く、嘘をついたり感情を爆発させたり行動問題が起こってきますが、PWSの特性とは理解されず、それがさらに問題を大きくします。複数の診療科で行う医療に加えて、遺伝カウンセラー、ケースワーカー、就労支援相談支援事業所の相談員など障害福祉分野からのファミリーケア・心理的ケアも必要です。

当センターでは、感情豊かでやさしいPWSの長所が出るように、中学生頃から高校卒業後の進路を見据えてPWSの自立支援を多職種チームで行っています。近畿地方・西日本からも多くの患者さんが当センターを受診されています。

更新:2024.01.26