感染症と発がんについて ウイルス、細菌が発がんの要因となることがあります
四国がんセンター
感染症・腫瘍内科
愛媛県松山市南梅本町甲
研究が進む感染症とがんの関係
ある種のウイルス、細菌の感染は発がんに重要なかかわりがあり、新規に発症したがんの17%に感染症が関与しているとの報告があります。ただし、感染している人の中でがんを発症する人はごく一部です。
このような微生物とがんの発生するメカニズムについて、現在も詳細な研究が行われており、一部のがんでは感染に伴う細胞の遺伝子変化と発がん機構の関係が解明されつつあります。がんがなぜ起こるのかという、がん診療の究極の疑問を解明する手がかりとなりうるため、今後も感染症とがんの関係について研究が進むと予想されます。
除菌やワクチン接種でがんを予防できる可能性があります
子宮頸(けい)がんの発症にはヒトパピローマウイルスの感染が重要な役割を果たしており、ヒトパピローマウイルスに対するワクチン(子宮頸がんワクチン)接種により、発症リスクを減らせることが分かっています。
またC型肝炎ウイルス感染は、肝細胞がんの原因の大きな割合を占めるものです。近年、C型肝炎ウイルスを除去できる治療法が開発され、今後は肝細胞がんを発症する患者さんが減ると予想されています。
ヘリコバクター・ピロリ菌は胃潰瘍(いかいよう)だけでなく、胃がんの発症にも関与することが分かってきました。胃がん内視鏡手術後の治療として、ヘリコバクター・ピロリ除菌治療が国内で認められています。
ウイルス、細菌の感染が発がんに関与するものの中には、感染を起こさないよう除菌治療やワクチン接種を行うことで発がんを予防できるものがあります。例外もあり、すでにがん化したものに対する抑制効果は期待できませんが、がんの発症リスクを減らせるという意味で非常に有効な方法です。
当院をはじめとする専門病院では、除菌治療やワクチン接種を発がん予防法の1つとして捉えており、今後もその有用性についてデータを集め、皆さんに発信していきます。
更新:2022.03.10