CKD教育入院について教えてください

愛知医科大学病院

腎臓・リウマチ膠原病内科

愛知県長久手市岩作雁又

腎臓はどんな働きをしているの?

腎臓は背中側の腰から5cmほど上の左右に2つあって、そら豆のような形をした握りこぶしくらいの大きさです(図1)。体のバランスをとるために非常に大事な仕事をしており、尿をつくって体の中の水分調整・電解質の管理・老廃物の排泄(はいせつ)を行っています。また、血圧の調節・血液をつくる・骨を強くするなどの仕事もしています(表)。

イラスト
図1 腎臓は背中側に位置しています
1. 尿を作って老廃物の排泄・水分の調節
2. 電解質・酸アルカリの調節
3. 血圧の調節
4. 血液をつくる調節
5. ビタミンDを活性化して骨を強くする
表 腎臓の働き

CKDとはどんな病気なの?

CKDとは慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease)の略称で、腎臓の働き(GFR)が健康な人の60%以下に低下するか、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態をいいます。国内のCKD患者さんは1300万人以上で、成人の8人に1人がCKDということになります。

CKDが進行して末期腎不全に至ってしまうと、腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)が必要となってしまうので進行を防ぐことが大切です。

治療にあたってまず行うことは生活習慣の改善(禁煙・減塩・肥満の改善など)であり、さらに血圧管理・食事管理が重要です。また、CKDが心筋梗塞(しんきんこうそく)や狭心症(きょうしんしょう)などを発症するリスクを高めることも立証されており、早期治療介入が必要な病気です。

当院では、CKD教育入院により、早期治療介入を積極的に行っています。

CKD教育入院ではどんなことをするの?

腎臓内科専門病棟で5泊6日の教育入院をしていただき、担当スタッフが1週間指導にあたります(図2)。

表
図2 CKD教育入院の週間予定表

腎臓の知識の整理

「腎臓って何?」「どんな仕事をしているの?」「クレアチニンの意味は?」など、腎臓の仕組みについてスタッフと一緒に勉強し知識を深めます。

栄養指導・生活指導

毎日3食、腎臓病食を食べて、タンパク制限・塩分制限を体験します。栄養士からの栄養相談も入院当日と最終日の2回行い、退院後に自宅で継続できるよう指導します。毎日の血圧測定など、生活指導も進めていきます。

薬剤指導

CKDに対する治療の基本は、食事療法・生活習慣の改善が第1になりますが、薬の内服が必要となる方が多いのが現状です。内服する薬の効果・作用・副作用をしっかり理解し、効果を発揮するには内服するタイミングなども重要となるので、薬剤師が個別に指導にあたります。

腎代替療法の見学

血液透析、腹膜透析、腎移植の知識を整理します。また、透析の原理・方法を分かりやすくスタッフが説明し、血液透析・腹膜透析については、実際に現場見学をしていただき理解を深めます。

腎臓が悪くなったら、どんな症状が出るの?

腎機能が健康な人の10%以下となり、腎機能が破綻(はたん)してしまうと、いろいろな症状が出てきます。これを「尿毒症状」といいます(図3)。しかし、腎機能が10%以下になるまでは、ほとんど自覚症状がないため、検診などで定期的に尿・血液検査をする必要があります。尿毒症は、次に挙げるようなさまざまな症状を伴います。

  • 老廃物の蓄積による吐き気・倦怠感(けんたいかん)・掻痒感(そうようかん)・意識障害
  • 水分の体内貯留による呼吸苦・浮腫(ふしゅ)(むくみ)・高血圧
  • 電解質・酸の異常による不整脈・しびれ
  • 造血ホルモン低下による貧血
  • ビタミンD活性化低下による骨の脆弱化(ぜいじゃくか)(もろくなること)
イラスト
図3 さまざまな尿毒症状

CKD(慢性腎臓病)とCVD(心血管疾患)について

CKDで腎機能が低下すると合併症でCVDを発症し、亡くなる方が増加しています。そして、タンパク尿が多く出ることはCVD の発症を倍増させることが分かっています。

CVDには動脈硬化・高血圧・尿毒素・酸化ストレスなど、さまざまな要因があるといわれています。また、脂質異常・肥満・糖尿病などは動脈硬化を引き起こす原因となるので、生活習慣の改善を心がけることが大切です。

更新:2022.03.16