心臓大血管センター ー診療科を超えた集学的治療による最新医療の提供

平塚市民病院

心臓血管外科

神奈川県平塚市南原

心臓大血管センターの目標

当センターを開設以来、6000例以上の心臓血管手術を行っています。常に治療方法を刷新し、最新の医療機器と治療法を導入し続けることで、関東でもトップクラスの安定した成績を維持し評価されています。また、当院で開発した新しい心臓血管外科手術を国内・海外の一流学会で発表し続けることにより、この領域のリーダーシップを保ち続けています。

心臓大血管センターの目標は3つあります。

  • 地域に信頼される最高水準の心臓血管治療の維持
  • 病診・病々連携の維持・強化による地域への貢献
  • 診療科を超えた集学的治療による最新医療の提供

循環器科、心臓外科、血管外科、放射線科の専門医師が一体となり、チーム医療として力を合わせることで、個々に治療するよりもはるかにレベルの高い医療を提供するべく、患者さんの治療に励んでいます(写真)。

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写真 心臓大血管センターのスタッフ

心臓大血管センターの治療実績

当院は県央・湘南エリアで、年間100例以上の心臓・胸部大血管手術を連続15年以上行っている唯一の施設です。治療内容に関しても常に最新の治療を導入し続ける努力を常に怠らず、心臓治療のあらゆる領域で安定した成績を上げて評価されています。

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表1 手術症例数
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表2 検査・カテーテル治療

代表的な病気と治療――狭心症・弁膜症・大動脈瘤

狭心症

狭心症とは、心臓へ酸素を運ぶ血管が動脈硬化で細くなり、心臓へ血液が十分に流れなくなる病気です。症状は、運動の際の胸の痛みや息苦しさなどが挙げられます。また、血管が詰まると心筋梗塞(しんきんこうそく)になり、この場合は致命的です(車を例にするとエンジンにガソリンが来なくなり、ガス欠→エンストになるような状態です)。

狭心症かどうかは、最新の320列CTにより、入院せずに15分ほどの検査で評価することができます。ただし、検査結果によっては入院を伴う心臓カテーテル検査も行います。

狭心症と診断された場合は、心臓カテーテル手術、または冠動脈バイパス手術(図1)のいずれかで治療します。冠動脈バイパス手術は、人工心肺を使わず(オフポンプ)、心臓を止めずに心拍動下で行います。

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図1 冠動脈バイパス手術

弁膜症

心臓には部屋が4つあり、その間に血液が逆流しないように交通整理する膜(弁)があります。弁膜症とは、その弁が壊れる病気です。大きく2つに分けられ、①膜が閉じなくなり血液が逆流する、②膜が開かなくなり血液が流れにくくなる、があります。放置すると、心臓のポンプ機能が悪化し、心不全になり命にかかわる場合もあります。

なお、弁膜症は、心臓の4つの弁のうち「僧帽弁(そうぼうべん)(心臓の左心房(ひだりしんぼう)と左心室(さしんしつ)の間にあり、血液が逆流しないようにする弁」と「大動脈弁(心臓の左心室から大動脈への血液の流出路にあり、血液の逆流を防止する弁)」に多くみられます。

僧帽弁

僧帽弁の病気は、弁形成術(壊れた弁を縫って治す手術)を第1選択として治療します(図2)。8割の患者さんが弁形成術で治ります。

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図2 弁形成術

大動脈弁

大動脈弁の病気は、人工弁、または自己心膜による大動脈弁形成術(心臓を包む膜で弁を作り直す手術)や大動脈置換術で治療します。大動脈弁の病気に対して、多くの施設では人工弁による治療しか選択肢がありませんが、当院では、人工弁などの異物を使わない手術を積極的に行っています。詳細については「自己心膜を用いた大動脈弁形成術」をご覧ください。

大動脈瘤

大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)とは、血管が風船のように膨らんで破ける病気です(図3)。大動脈は、正常では直径1.5~2cmほどですが、瘤(こぶ)が直径6cm以上になると、一年以内に6人に1人、7cmでは3人に1人が死亡します。破裂するまで症状はありませんが、一度破裂すると半分以上の人が突然に亡くなるため、破裂する前に治療することが大切です。

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図3 胸部大動脈瘤(大動脈が膨らんでいる状態。左は嚢状型の瘤、右は方錐型の瘤が確認できます)

大動脈瘤の治療法

体力のある方や若い人は、通常の手術による人工血管置換術を行います(図4)。体の負担は大きくなりますが、人工血管置換術は動脈瘤を切除するため、完全に治り、長期成績が良好です。

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図4 人工血管置換術(開胸手術)

高齢者や他に多くの病気のある患者さんにはステントグラフト内挿術をおすすめしています(図5)。ステントグラフト内挿術とは、細く折り畳んだ人工血管を、瘤の内側に挿入する治療です。胸や腹を切る必要はなく、足の血管からステントグラフトを挿入し動脈瘤の中へ進めていくため、体への負担が少ないことが特徴です。手術の後も瘤は残りますが、ステントグラフトが内ばりになることで血圧が動脈瘤にかからなくなるため、破裂が予防できます。ただし、ステントグラフト内挿術は動脈瘤を切除するわけではないので、時間が経つと血管の形が変わり、ステントグラフトと血管に隙間ができ、動脈瘤内に血液がもれてしまい破裂することがあります。これをエンドリークと呼びますが、5年間で5~10人に1人は、エンドリークのため追加治療(カテーテル治療)が必要となります。したがって、生涯定期的な外来通院及び造影CT検査は必須となります。

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図5 ステントグラフト治療(a:ステントグラフト、b:治療イメージ)

それぞれ、一長一短あるため、患者さんと相談した上で、患者さんの望む治療方針を選んでいただいています。

更新:2024.10.18